道に捨てられていた子猫の目には障害 迷った末、4匹目の家猫に
動物病院の近く、道路脇の草むらに子猫が捨てられていた。子猫は片目に障害があった。保護した女性の家には、すでに3匹の猫がいた。譲渡先を探すか迷った末、自分で飼う決意をした。
草むらから聞こえた鳴き声
兵庫県に住む緒方さんは、大の動物好き。3匹の猫と、2匹のフェレットと暮らしていた。
2018年6月の朝のこと。緒方さんの知人が歩道を歩いていた時、街路樹の脇の草むらからニャアニャアと猫の鳴き声が聞こえてきた。帰り道、昼近くになってもまだ鳴いていた。
そこには1匹の子猫がうずくまっていた。アメリカンショートヘアのような猫だった。周囲には人だかりができていたが、保護しようとする人はいなかった。母猫が周辺にいる気配もない。猫が迷い込むような場所ではなく、誰かが捨てたのだろう。周辺は交通量が多く危険な場所で、翌日は台風が来る予報だった。心配になった知人は、動物好きな緒方さんに連絡。緒方さんも現場に駆けつけた。
「家で3匹の猫を飼っているので、病気を持ち帰って感染したらと思うと心配でした。猫を保護した経験もなかったので、前に保護猫を譲渡してもらった保護主さんに電話してアドバイスしてもらいました。抱き上げると嫌がりましたが、うなぎをつかむように必死で抑え、ダンボール箱に入れて、なんとか連れ帰ったんです」
この子を飼うか、里親を探すか
緒方さんが自宅に連れ帰った子猫をよく見ると、左目の瞬膜が下りていた。動物病院に連れて行くと、「ここでは手術できないが、できることはしたい」と言われ、目薬を処方してもらった。以前保護猫を譲渡してもらった保護ボランティアと「この子を飼うのか、譲渡先を探すのか」について話し合った。
「推定生後2カ月でしたが、瞬膜が下りていたこともあり、引き取り手を見つける自信はありませんでした。治療に高額な費用がかかり、通院にも時間が取られるため、不安も感じたんです。でも無責任に人に渡すのも嫌でした。猫の保護主さんの気持ちが分かりました」
目が開かないのも個性
病院の検査結果が出る頃、緒方さんは子猫を飼ってもいいと思い始めたという。幸い、猫エイズや白血病にはかかっていなかった。高度な医療が受けられる眼科専門の動物病院にも行って、水が貯まらないように処置してもらったり、手術してもらったりしたそうだ。
「3つの動物病院で診てもらいました。きちんと治療しようと思うと、ペットショップで猫を買うよりもお金がかかりました。眼は普通にはならなかったのですが、ブログの読者さんが『ももちゃんの眼は個性だよ』とコメントしてくれて、それまでは治療のことばかり考えていたのですが、個性だと思えるようになったんです。保護した時に胸がキュンとしたことを思い出し、うちの子にすることにしたんです」
子猫には「桃子」と名前をつけた。
手を尽くしても、左目が完全に開くことはなかった。それでも今は、膜が張った下で眼球がかすかに動くのを感じたり、目ヤニを拭いてやったりしていると、その眼が愛おしく感じられるという。
たくさんの動物と暮らす大家族に、また1匹、子猫の桃子が加わり、家はさらににぎやかになった。
「みんな家族と思って暮らしています。桃子を迎えて、こうした個性がある子のことを考える機会を持てましたした。誰かに譲渡するのではなく、自分で飼って責任を持つと安心できました。桃子に出会えてよかったと思っています」
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