相次ぎ失った2匹の愛猫 救いは、たくましく成長した子猫だった

   2匹の子猫を、老猫が住む家に新たに迎えた。3匹の猫と幸せな暮らしが続くはずが、先住猫が病に倒れ、子猫にも感染症が発覚……。相次ぎ2匹を失った。飼い主の女性が大きな悲しみを乗り越えるのを助けたのは、たくましく成長した若い猫だった。

(末尾に写真特集があります)

   川崎市のマンションで、岡本さん(45)はオス猫のジャイブ(15カ月)と睦まじく暮らしている。

「出会って1年くらい経つけど、今もときめいちゃうの」

   そう話す岡本さんの側に、グレーのビロードのような美しい被毛のジャイブが寄り添っている。

逞しく成長したジャイブは”彼氏みたい”
逞しく成長したジャイブは”彼氏みたい”

子猫2匹を新たに迎える

 出会いは昨年8月。たまたま立ち寄ったイベント会場で、保護猫の譲渡会が開かれていた。何気なくのぞいた岡本さんの足が入り口近くのケージ前でとまった。

「生後3カ月のきれいな子猫がいて、目があったとたん胸がきゅーんとしました。うちにはココという17歳の老猫がいたので、最初は子猫を飼うつもりはなかったのだけど……。惹かれるものがあって、ぐるぐると会場を歩いて、その子猫のところに戻りました」

 姉妹猫が2年前に逝き、1匹になっていたココのことを岡本さんは不憫に思っていた。「仲間がいたほうがいいかな、でも受け入れられるかな」と会場のボランティアに相談した。

   ボランティアによれば、子猫はとてもおとなしい性質。元々6匹きょうだいで、衰弱して命を落とす子もいるなかで、小さいながらも「たくましく乗り越えてきた」と聞いた。

「人気があるだろうから、縁があれば、という気持ちで、仮の申し込みをしました」

 譲渡会から2週間後、ボランティアから連絡をもらい、改めて子猫に会いに行った。再会した子猫は、抱っこをせがむようなしぐさをした。

「待っていてくれたのかなと思いました。その時、『相性のいい子と2匹飼いをしたら?』と、ボランティアさんに子猫のパートナーを迎えることを提案されました。子猫同士で遊べば老猫への負担も少ないだろうと考えていると、ちょうど保護中の長毛のオスの子猫がいて、一目ぼれして……譲り受けることにしたんです」

 こうして、グレーの「ジャイブ」と、長毛の「テト」という2匹の子猫を迎えた。

迎えいれた当時、テトとジャイブを抱く岡本さん(提供写真)
迎えいれた当時、テトとジャイブを抱く岡本さん(提供写真)

相次ぎ、まさかの発病

 久しぶりに飼う子猫、しかも初めてのオス。わくわくしながら4段ケージを用意し、しばらく“ちびっこ組”をケージに入れて育てた。先住の老猫ココは、“若い子が来たの? しょうがないわねえ”とでもいうように、遠巻きに2匹をながめていたという。

   岡本さんは、先住のココを気遣って、何でもココを優先し、子猫たちと仲良くなるように見守っていた。そんなある日、ココは食欲が減り、水を飲まなくなった。

「検査をしたら膵臓が悪いと。しかも急性症状で……。『はっきりした原因はわからないが重症だ』と獣医さんにいわれました。なかなか食欲が戻らず、点滴をするようになりました」

 ココの闘病が始まってから1週間後、今度は子猫テトのお腹が膨れていることに気づいた。慌てて病院に連れて行くと、腹水がたまっていた。検査をしないとわからないが、FIP(猫伝染性腹膜炎)だろうと告げられた。

 FIPは若い猫に多い病気。多くの外猫が持っているコロナウイルスが何らかの原因でFIPウイルスに突然変異すると発症し、まず助からない。

「『ココより先に、テトが逝く可能性が高い』と先生に告げられて、言葉を失いました。祈るような思いで、2匹を交互に病院に連れて行きました」

   しかし看病の甲斐なく、テトは発病から11日で旅立った。その2週間後、岡本さんはココも見送った。それぞれ違う病気だが、2匹とも腕の中で眠るように息をひきとったという。

「ボランティアさんにはテトの変化と経緯を報告して、親身に心配していただきました。でもココのことは闘病中とまでしか言えなかった。仮に子猫が来たストレスで体調を崩したとしても、私自身が家族にしようと判断したので……ひとりで抱え込むしかなくて」

「ちょっとご飯まだ~?」キッチンの所定の位置でごろりん
「ちょっとご飯まだ~?」キッチンの所定の位置でごろりん

悲しみを乗り越えさせた“彼氏”

 ごく短い間に2匹の猫を相次いで失う、思いもよらぬ事態。それまで何匹もの猫と暮らしてきた岡本さんにとっても、初めての経験だったという。その悲しみを乗り越えるのを助けたのは、ジャイブだった。

「悲しいことが続く一方で、ジャイブが無邪気に跳びはねて、私のお気にいりのマグカップをガチャガチャ割ったりして。落ちこむすきを与えないほどヤンチャで、それが大きな救いになりました」

   おとなしかったジャイブは2匹を見送った後、活発になり、それまでは何を食べても大きくならなかったのに、体重がどんどん増えて“男らしく頼もしくなった”という。

「ジャイブには、テトの分まで元気に生きて、ココのようにシニアになるまで一緒にいてほしい。『ずーっとよろしくね。私の彼氏でいてね』ってお願いしてるのよ」

   そう岡本さんが微笑むと、成長したジャイブは膝にあごを乗せて、ゴロゴロと喉を鳴らした。

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藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は19歳の黒猫イヌオと、5歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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この連載について
ペットと人のものがたり
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