看板犬が心もほぐすマッサージ店 店主の恋のキューピッドにも

 看板犬のトイプードルがいるマッサージ店が都内にある。女店主と一緒に週2回出勤。ブリーダーのもとから救出された元繁殖犬だが、そんな過去を感じさせないかわいらしさで、お客さんの心をほぐしている。さらに店主を結婚に導くキューピッドにもなった。

(末尾に写真特集があります)

 JR大崎駅から徒歩数分。東京都品川区大崎に足と体のマッサージ店「足つぼや」はある。笑顔で迎えてくれた店主の香苗さん(46)の腕には、愛らしいトイプードルが抱かれていた。

「プリン、10歳の女の子です。水曜と金曜だけ、私と一緒に店に来ています」

 受付の奥には3台のベッドが並び、そのうち1台に女性が座っていた。犬好きだという常連客のりえさんが、足のマッサージを受けるという。その様子を見せてもらった。

 りえさんがベッドに仰向けに寝ると、足元に座った香苗さんが足の裏を両手でぎゅうっと押し始める。「プリンちゃん、おいで」とりえさん。プリンは寝そべるりえさんの上、顔の近くに寄り寄った。まるで“楽にしてくださいね”とでもいっているかのようだ。

「足も気持ちいいけど、プリンちゃんにも癒やされるわ~」

 ふだんのプリンは自分用のマットの上でくつろぎ、犬好きなお客さんがやって来ると、こうして触れ合っている。お客さんが店に飼い犬を連れてくることも可能だ。

「皆様を癒やしま~す」(自分専用のマットに座るプリン)
「皆様を癒やしま~す」(自分専用のマットに座るプリン)

預かった保護犬に情が移る

 プリンがお店でお客さんを癒やすようになったのは、5年前。店を構えて2年後のことだった。香苗さんが出会いを振り返る。

「当時、私は独身でしたが、店の近くにペット可マンションを購入したので、相棒の犬が欲しいなと思っていました。りえさんに話したら、単身者でも可愛がる人に犬を譲るような保護団体もある、と教えてもらいました」

 譲渡会に行くと、破綻したブリーダーのもとから救出されたトイプードルが何匹かいた。香苗さんはオスの子犬に惹かれたが、小型犬に接するのが初めてで、抱き方がぎこちなくなってしまった。するとボランティアに「犬に慣れることが必要ですね、おとなの犬を預かりませんか?」と、元繁殖犬の「プリン」をしばらく飼ってみることをすすめられた。

「預かりもボランティア活動になるのなら、とお引き受けしました。ところが、いざ家で世話してみると、プリンが可愛くなって(笑)。せっかちな私が、すごく癒やされていることに気づいたんです」

 香苗さんはプリンと2週間過ごした後、正式に家に迎えることを決めた。プリンは人にも犬にもフレンドリーで、場の空気を察知できる賢い犬で、看板犬にもぴったりだった。

犬好きなお客様の胸でサービス中
犬好きなお客様の胸でサービス中

犬と接する姿に胸キュン

 セラピストとしてバリバリ働き、最良の犬とも出会った香苗さんだが、男性との縁にはなかなか恵まれなかったという。

「開業まで忙しかったし、これからも一人だろうなと思っていましたが、お客様に『誰かいい人いませんか?』と言ってみたら、『自分の仲間で、君に合いそう人がいる』と紹介してくれました(笑)」

 紹介されたのは、8歳年上の理容師。最初は、食事や遊びにいったり、マッサージを受けに来てもらったりたりと、フランクな友だち付き合いをしていた。あるとき、「理容師なら犬の毛も切れるの?」と香苗さんが尋ねると、「やってみよう」といってバリカンとはさみを持って家にやって来た。

「プリンを大切そうに抱えて、一生懸命にトリミングしようとしてくれた。必死な姿を見ていたら、『この人は本当にやさしいな』とキューンとなってしまって」

 友だちとしてではなく、プリンのパパ、家族として意識した瞬間だった。その後、つきあいを深めて2年前に入籍した。

「犬を介したオトナ婚ですね。プリンの面倒をよくみてくれて、お店が混んで夜遅くなると、プリンを迎えにも来てくれて。プリンもパパが大好きで、くうんくうんと女子っぽい甘えた声を出します(笑)」

店内で香苗さんに抱かれるプリンちゃん
店内で香苗さんに抱かれるプリンちゃん

 今年の初夏には、家にもう1匹、プリンと同じ保護団体からトイプードル(メス、4歳)を迎えた。「シュークリーム」(愛称シュー)と名付けた。

「プリンは妹分をすぐに受け入れ、我が家はより賑やかになりました。お店でもこれからは“スイート”な2匹がおもてなしします。癒やしの空間になるとともに、犬の情報交換のような場になれば嬉しいです」

Body&Footサロン「足つぼや」
東京都品川区大崎5-8-4-1F
11時~21時(最終受付、予約制)/正月以外無休
TEL&FAX 03-5496-9315
*犬がいるのは、水、金曜

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藤村かおり
ペットライター。小説等の創作活動を経て90年代後半から、ペットの取材を手掛ける。2011年~2017年週刊朝日記者、2017年からsippoメインライター。丹念な取材と独自の目線から、動物と人の絆、動物と共に生きる人の心をすくい取る記事に定評がある。ペット関連の著書に『長寿猫』『明日にアクセス』など。現在は保護した黒猫、キジ猫と暮らす。

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