犬を飼うことは「子育てと同じ」 それぞれの個性を受け入れて

  人に性格や個性があるように、犬にも性格や個性がある。楽しいはずの犬2匹との暮らしだったが、2匹の距離がなかなか縮まらない。そんな時、母はかつての子育てを思い出し、2匹への接し方を変えた。

(末尾に写真特集があります)

 神奈川県の佐藤さん宅は、トイプードルの風歩(ふうぽ、8歳メス)と、雑種の木空(もくく、6歳オス)の2匹の犬と暮らしている。母のきょう子さん(46)と、娘の晴菜さん(25)が迎えてくれた。

  風歩は部屋の奥で女の子らしく静かに座り、木空はやんちゃ坊主そのものというように部屋の真ん中で両足を上に向けて寝そべっていた。

「風歩は繊細で、木空は天真爛漫。性格がぜんぜん違うんです」ときょう子さんが紹介すると、「2匹に家族みんなが癒やされているよね」と晴菜さんが微笑んだ。

きょう子さんと木空「大きくなったね」
きょう子さんと木空「大きくなったね」

何でも話せる相手

 佐藤家が犬を迎えたのは、夫妻が結婚して15年以上たち、娘と息子が中高生になってからだった。

 きょう子さんが近くのペットショップで家族募集の貼り紙を見つけ、子どもと一緒に通うようになり、そこで出会ったのが風歩だった。

「繁殖を終えた犬たちの中に生後半年の風歩がいて。普段は隅に隠れているのに、なぜか私の膝に乗って寝ちゃったんです。縁を感じて我が家に来てもらいました」

 風歩は床を歩く音や、携帯のピッという音に敏感で、ケージから出て普通に過ごせるまでに半年かかった。そんなデリケートな風歩に、思春期だった晴菜さんは自身を重ね合わせた。

「学校から帰ると、まっさきに風歩のもとに行きました。『今日いやなことがあったんだ』と号泣して風歩にしゃべっていたら、部屋の隅にいた弟に聞かれてしまったことも(笑)。父が落ち込んでるような時にも、風歩は寄り添っていました」

芝生の上で、とても楽しそう (きょう子さん提供)
芝生の上で、とても楽しそう (きょう子さん提供)

人懐っこい犬

 やっぱり犬って素敵……そう思った母きょう子さんは2匹目が欲しいと思い、保護犬のブログなどをのぞいていた。そんな時、1匹の犬を見つけた。

「保護団体アグリドッグレスキューが千葉の動物愛護センターから引きだした『もくちゃん』と呼ばれていた雑種で、受け口で目がくりくりで愛嬌たっぷり。気になってブログを見ていたんですが、何でこんなに可愛い子が決まらないの。私なら、もくちゃんが一番いいのに…。うちでどうかと、また夫を説得しました」

   風歩が家に来て2年後、家族みんなで、木空に会いに行った。

2匹はどうかと渋っていた夫も、会ったらメロメロで、うちで迎えることにしたんです。木空は初日から物怖じせず、シッポを振って風歩に近づきました。『風歩にも良い仲間ができるね』なんて家族で話していました。でも、それは勘違いでした」

きょうこさんに抱かれる木空と、晴菜さんに抱かれる風歩
きょうこさんに抱かれる木空と、晴菜さんに抱かれる風歩

予想外だった2匹の関係

 風歩は当時生後6カ月の木空のテンションをなかなか受け入れられない様子で、甘嚙みも強くなり、心を閉ざした。「つらい時期だった」と母のきょう子さんが振り返る。

「どこまでが遊びか、ケンカか。どこまで介入したらいいのか分からず戸惑いました。木空の伸びやかさを止めたくないし、犬の間に人が入ってはいけないような気がして見守っていたんです。でも風歩の毛色が悪くなり、体にぎゅっと力が入るようになってしまって……。保護団体に相談したら、犬のしつけ教室を紹介してくれました」

 教室に2匹を連れていくと、トレーナーから意外なことを言われたという。

「風歩には今までと同じような生活をさせてあげて、もし木空のふるまいを風歩が嫌がるそぶりを見せたら、風歩を抱いてあげてください」

   きょう子さんは「アドバイスを聞いたとたんに思い込みから解放され、力を抜いて関われるようになりました。子育てと同じで、悩みを抱えこまず、違う意見を聞くのが大事ですね。20数年前の子育てを思い出しました。晴菜も小さい時に弟に対してそうだったなあって……」と振り返る。

「かっこよく頼むぜ」(きょう子さんが時々カットする)
「かっこよく頼むぜ」(きょう子さんが時々カットする)

小さな娘が言った言葉

 晴菜さんが3歳の時に、弟が生まれ、きょう子さんは下の子にかかりきりになった。2人を連れて公園に行くと、晴菜さんは「公園に赤ちゃんを置いてきたほうがいいよ、赤ちゃんのお母さんが待ってるよ」といつも言っていたそうだ。

   きょう子さんが懐かしそうにいう。

「今になって思えば、弟が生まれたばかりで、ヤキモチや、母親を取られるという焦りがあっての言葉だったのかもしれません。木空が初めて家に来た時、人見知りな風歩が帰ろうとするボランティアさんを追いかけました。まるで『ちょっと、この子犬を置いていかないで、忘れているわよ』と言っているようでした。その姿が、幼い頃の娘の思い出と重なりました」

 その後、木空と風歩それぞれと過ごす時間を意識して、散歩も1匹ずつさせているうちに、2匹は仲良くなっていったのだという。

 晴菜さんは女優で、仕事の都合で、昨年から東京都内で一人暮らしを始めた。それでも時間を見つけては「犬に会うため」よく実家に帰る。

「犬にもそれぞれ個性があり、時間をかけて関係を育んでいく。それは人間と一緒。風歩や木空とのつきあいから、役者の仕事によい影響をもらっています。無性に会いたくなって、誰もいない時に実家で木空と風歩を抱いて帰ると、母にばれるんです。犬に私の匂いがついていたって(笑)」

(庄辛琪・撮影)

藤村かおり
ペットライター。小説等の創作活動を経て90年代後半から、ペットの取材を手掛ける。2011年~2017年週刊朝日記者、2017年からsippoメインライター。丹念な取材と独自の目線から、動物と人の絆、動物と共に生きる人の心をすくい取る記事に定評がある。ペット関連の著書に『長寿猫』『明日にアクセス』など。現在は保護した黒猫、キジ猫と暮らす。

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