漫画『夜廻り猫』の深谷さんトークショー 作品の裏話あかす
猫好きに絶大な人気を誇る漫画『夜廻り猫』の作者、深谷かほるさんのトークショーと作画実演が18日、東京・新宿の京王百貨店で開催中のチャリティーイベント「みんなイヌ、みんなネコ」で行われた。会場は立ち見で通路が埋まるほどの盛況ぶりで、観客は深谷さんの愛猫との思い出話や作品の裏話などを熱心に聴き入っていた。
開場とともに走って席取りをする人もいるほど、開演前から白熱していた会場。直筆イラスト入り単行本の特売コーナーにも、トークショー後のサイン会の整理券を手に入れようと長蛇の列ができた。
トークショーは深谷さんと、親交の深い朝日新聞社の水野梓さんのふたりで進行。大拍手で迎えられたふたりは、多くの観客を前に「こんなにたくさん集まっていただいてすみません…」としきり頭を下げる不思議な光景からスタートした。
実は水野さんは『夜廻り猫』に出てくる「ミケ猫記者」のモデル。取材を通して知り合った頃の話に続き、水野さん本人の似顔絵と猫のキャラクターを順に描いて、どのようにキャラクター化したか再現するコーナーへ。サラサラとあっという間に絵を仕上げていく様子に、観客から歓声と拍手が起こった。
引き続き絵を描きながら、キャラクター紹介へ。主人公「遠藤」が育てる片目の子猫「重郎」のくだりで、モデルとなった深谷さんの愛猫「マリ」に話がおよんだ。
重郎と同じく、マリは子猫で拾ったときから片目が見えない猫で、「医者からは長く生きられないかもしれないと言われていたし、片目で大変じゃないかと思っていたけど、16年間元気に生きて、私を支えてくれました。そのおかげで自信を持って重郎を描くことができました」と語った。
トークのなかでは、作品についてのさまざまな裏話も明かされた。ちょっとわがままでマイペースな主要キャラクター「ワカル」は、「出てくるのが善人ばかりで、ちょっといやなやつがいた方がいい」と息子さんにアドバイスされたのが、誕生のきっかけだったとか。
また、作品の魅力のひとつである登場人物が作る手料理、通称「夜廻りグルメ」の話では、「次に出すのはネギ丼です!」とネタバレ的な発言を繰り出し、観客を驚かせた。
終盤は、ファンとの交流を図る特別企画も。ジャンケン大会で勝ち抜いた観客を描いてキャラ化するコーナーでは、見事勝ち抜いたのが何と深谷さんの高校時代の友人で、代表作『ハガネの女』のモデルにもなった女性だったというサプライズに、会場も大盛り上がり。
続く質問タイムでは、「遠藤が言う『にっこり』と重郎の『にっこい』の、正しいイントネーションは?」というコアな質問に、深谷さんがたじろぐシーンも。遠藤が夜廻りをするきっかけをたずねる質問には、「そのうち、ちゃんと作品として描くつもりです」という、うれしい予告も飛び出した。
最後に、11月に最新刊の発売が予定されていることが発表され、「正直ここまで続くとはまったく思っていなかった」と語った深谷さん。当初は、すべてのキャラクターの死に方を決めていたものの、「長生きさせてほしい」というファンからの声が続ける原動力になったという。「漫画は誰かのために描くもの。誰も読んでくれなかったら、ここまで続かなかったと思います。読んでくださるみなさんのおかげです」と語り、会場からは大きな拍手が送られた。
トーク終了後は、整理券を手に入れた200人を対象にサイン会も行われた。深谷さんは一人ひとりのファンと言葉を交わしながら、丁寧に本にサインをして手渡していった。
トークショーにやってきたファンのひとり、東京都の冨樫理恵さん(51)は、「つい2、3日前に妹からショーがあると聞き、見ないと後悔すると思って、急きょやってきました。実際に深谷さんを拝見するのは初めてでしたが、こういうあたたかい雰囲気の方だからこそ、『夜廻り猫』のような作品が描けるんだなとわかりました」と感極まった様子で語った。
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