『夜廻り猫』の深谷さん、猫への思い語る 「猫に教えられた」

猫たちの世界を描くマンガ『夜廻り猫』作者の深谷かほるさん=水野梓撮影
猫たちの世界を描くマンガ『夜廻り猫』作者の深谷かほるさん=水野梓撮影

 心の涙の匂いをかぎつけ、その悩みにそっと寄り添う猫を描いたマンガ『夜廻り猫』。作者の深谷かほるさんは、自分で飼ったり、街中で見かけたりした「猫の世界」を描いてきたといいます。今月、東京・新宿で作品展とトークイベントが開かれます。長年一緒に暮らした黒猫「マリ」や、猫たちへの思いを聞きました。

(末尾に『夜廻り猫』のマンガがあります)

深谷さんとマリちゃん=山本和生撮影
深谷さんとマリちゃん=山本和生撮影

片目をけがした黒猫

――16年間、黒猫のマリちゃんと暮らしていたとうかがいました。

 まだ手のひらに乗るぐらいの子猫の時、広島の呉から知人が連れてきたんです。つつかれたのか、片目がつぶれていて……。当時、幼稚園児だった息子が一目見て「かわいい」と言うので、引き取ることにしました。

 動物病院に連れて行った時には「脳に異常が出るかもしれないし、生きる保証はありません」と言われたんです。それが、元気にすくすく育ってくれました。強気で楽しい、本当にいい猫でした。

――マンガ『夜廻り猫』にも、片目の子猫の重郎が登場しますね。

 「片目でも生きていける」という意味では、重郎のモデルはマリです。性格はかなり違いますが(笑)。

――マリちゃんは、お客さんを出迎えたり、話を聞いていたりと、好奇心旺盛な猫だったんですよね。

 喜んでもらえたかどうかは別ですが、家に初めて来たお客さんのところに必ず行くんです。しっかりおもてなししないと、と考えていたみたいです。普段は、話題の中心にいたい!という我が家の「女王」だったので、息子と立ち話していてもサッと間に入ってきました。

 年に2回の動物病院では、獣医さんから「毛づやもいいし元気だね」と言われていました。病気になってしまって最後は病院通いが続きましたが、キャリーバッグを開ければ自分でそこに入って、診察台の上で開けると自分から出てくる。すごく賢い猫でした。だから、「片目でも絶対に良い猫だ!」と自信を持って重郎を描いています。

展覧会作業に追われるスタッフの作業を見守るマリちゃん=水野梓撮影
展覧会作業に追われるスタッフの作業を見守るマリちゃん=水野梓撮影

17年ぶりに猫のいない暮らし

――昨年、マリちゃんを見送ったんですね。

 マリが体調を崩してからは、リビングにサークルをつくって友人やスタッフで看病したんですが、もう私は何もできなくって。『夜廻り猫』にも登場する友人のしづさんが、マリの背中に毛布を丸めて入れてくれて「こうすると少し楽だよ」とかいろいろ教えてくれました。最後はみんなに見送られながら逝きました。

――17年ぶりに猫のいない暮らしに。生活の変化はありましたか。

 まだ慣れませんね。ふとした時に、「あ、いないんだなぁ」と気づきます。家に帰ったとき、外に出ないようドアをそーっと開けるとか、「足元に気をつけないと」と思うとか……。そんな瞬間が、0.1秒ぐらいの感じなんですが、1日に何度もあります。

――猫を飼ったのは2匹目だったそうですね。

 前の猫も黒猫で、毛がぼろぼろで名前は「ハゲ」といいました。当時住んでいた家の近くに、フワフワした毛並みで「立派猫」と呼んでいた野良猫がいたんです。ある日、私に託そうとするかのように、ぼろぼろの黒猫を連れてきたんです。それがハゲでした。

 猫を飼う自信なんてなくて初めは悩みましたが、ハゲも居ついてくれたので飼うことになりました。いつも隅っこにいて、呼ぶと来る、かわいい子でした。自分のドライフードをよその猫に食べられちゃっても、困ったように見つめていました(笑)。

――最近も、深谷さんのご自宅には野良猫がよく来ていたんですよね。

 ベランダにやってきて、ミャーミャーと鳴く野良猫で、さび色だったので「サビ」と呼んでいました。ハクビシンに負けてしまったのか、最近来てくれないので心配しています。次、家に居ついてくれたら、そのまま迎えようかと考えています。

深谷さん宅のベランダによくやってきたサビ=水野梓撮影
深谷さん宅のベランダによくやってきたサビ=水野梓撮影

ペットショップは苦手

――次に猫を迎えるとしたら、やっぱり保護猫ですか。

 ペットショップが昔から苦手なので、ペットショップで選ぶことは考えたこともなかったです(笑)。ガラスの向こうから大声や音を出されて「自分が入る側だったらつらすぎる」って友達に話していて、「考え過ぎだよ」って言われるぐらいでした(笑)。

――福島のご実家でも猫「スバル」を飼っているそうですね。

 6年前に、父と一緒に保健所へもらいに行きました。マンガにも描いたんですが、その時、扉の向こうから「キャンキャン」と鳴く犬の声が聞こえて。職員の方が「元気な猫はもらわれていくからまだいいんですけど、犬は難しいんです」と言っていました。

 一人暮らしや高齢者だと譲渡できないという厳しいルールがある保護団体も多いですよね。もちろん守らなきゃいけないルールはあると思うんですが、殺処分されてしまうぐらいなら、一人暮らしの人でも飼えればいいのに……とは感じます。

 保健所で働いていて、処分を担当しなきゃいけない人もすごく傷ついて疲れているんじゃないかと思うんです。誰も処分したくてしているわけではないですよね。

 海外では、テレビCMで「きょうの里親募集」を流すと聞きました。日本でも、テレビ番組やCMでそんなコーナーを作って流したら、ペットを迎える選択肢として保護犬・保護猫が知られるんじゃないでしょうか。

保健所から迎えたスバル。いつもダイエット中=深谷さん提供
保健所から迎えたスバル。いつもダイエット中=深谷さん提供

猫に教えてもらったことを描く

――スバルが実家に来て、変わったことはありましたか。

 家の中がとても明るくなりました。「動物を人間扱いしない」「テーブルの上に乗るなんてもってのほか」といっていた父も、母も、何をするにもスバル中心になって。マンガに出てくるキャラクター「モネ」が、だんだん似てきています。

――深谷さんが見た猫や犬の世界が『夜廻り猫』には色濃く反映されているんですね。

 マリやハゲ、スバル、立派猫……。猫に教えてもらったことを描いている感じです。夜廻り猫は、誰かに届くといいなと思って描き始めた葉っぱのお手紙ですが、多くの人に読んでもらえてとてもありがたいです。読者のみなさんのおかげです。

(水野 梓)

マンガ『夜廻り猫』
猫の「遠藤平蔵」が夜回りをしながら、心の涙の匂いをかぎつけ、そっと寄り添う。2015年10月から、漫画家・深谷かほるさんがツイッター(@fukaya91)で発表し始め、多くの共感を集めたマンガ。2017年に第21回手塚治虫文化賞・短編賞を受賞。コミックサイト「モアイ」とwithnewsで連載中。講談社から単行本1~5巻(続刊)が発売中。

夜廻り猫展mini・深谷かほるさんトーク&ライブドローイング
マンガの原画や、深谷さんやスタッフの作品が展示される「夜廻り猫展mini」が2019年8月15日~19日、東京・新宿の京王百貨店で開かれます。チャリティーイベント「みんなイヌ、みんなネコ」の一環。18日午前11時からは、深谷さんがマンガの裏話を語ったり、作画を披露したりするトーク&ライブドローイングも開催(入場無料、先着)。その後、サイン会もあります。サイン会は会場で当日コミックお買い上げの方先着200人限定で、整理券をお渡しします。
 ※トークショーは来場者多数の場合は、立ち見での観覧とさせていただきます。
 ※サイン会は、トークショー当日、会場にて「夜廻り猫」の書籍をお買い上げの先着200名様がご参加いただけます。書籍の販売場所は7階シーズンスペースです。
 ※書籍をお買い上げの際に、サイン会の参加整理券をお渡しします。
 ※サインは、お一人様1冊に限らせていただきます。
 ※トークショーは、7階大催場奥のイベントコーナーで開催します。
 ※サイン会はトークショー終了後、同会場で開催します。

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