「世界に1匹だけの犬」 雑種の子犬にこみ上げてきた愛おしさ

 四国にある寺で外飼いしていた秋田犬が知らぬ間に妊娠し、3匹の子犬が産まれた。寺では子犬までは飼えないと、生後まもない子犬たちはボランティアに託され、大阪の保護団体にやって来た。雑種の保護犬を望んだ家族に引き取られた。

(末尾に写真特集があります)

「犬らしい犬が好き」

 大阪に住む鮫島さん宅では、子どもが10歳の時に「犬を飼いたい」と言い出したという。犬を飼うのは楽しいけれど、大きな責任も伴う。家族で何度も話し合い、当時上映されていた「犬と私の10の約束」という映画も見に行った。犬を飼うにあたり、子どもとの間に、いくつか約束事をつくり、それを守れるなら飼ってもいいということにしたという。

 鮫島さんはインターネットで譲渡先を募集している犬を探し、「あいこのおうち」のブログで、3姉妹の子犬を見つけた。1匹は茶色い子で、2匹は白い犬だった。

「私は犬らしい犬が好きなんです。大きさも中型から大型の子がいいと思いました」

 3匹の子犬はどの子も可愛かったが、鮫島さんは、耳だけが茶色い、白い子犬ミルちゃんが気に入った。2009年2月、ミルちゃんに会うために譲渡会に足を運んだ。かつて子どもが小さな頃、泣き声を聞いただけで母乳が出ることもあったそうだが、初めてミルちゃんを抱っこすると、その時と似た愛おしい感覚がこみ上げてきたという。

「迷うことなく、『この子がいい』と希望しました。でも他にも希望者が何人かいて、無理かもしれないと思っていましたが……」

変わらぬ愛しさ

 ミルちゃんは希望通り、約10日後、鮫島さんの家にやって来た。

「ミルは3カ月半でした。最初は夜鳴きがひどくて、そのたびに主人が散歩に連れ出していました。子犬なので歯茎がかゆいらしく、柱をガジガジにかじりましたが、それも別に気になりませんでした」

 ただ、ミルちゃんを連れてドッグランに行くと、純血種の犬を連れている人から「雑種?」と言われるようなこともあったそうだ。だが、鮫島さんは「世界で1匹しかいない雑種」が好きだという。

「もっとたくさんの人に保護犬のことを知ってもらいたいですね」

 子犬だったミルちゃんも今では10歳。子犬の時と同じように愛おしく思う鮫島さんのもと、幸せに暮らしている。

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渡辺陽
大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく」伝える医療ライター。医学ジャーナリスト協会会員。朝日新聞社sippo、telling、文春オンライン、サライ.jp、神戸新聞デイリースポーツなどで執筆。FB:https://www.facebook.com/writer.youwatanabe

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この連載について
幸せになった保護犬、保護猫
愛護団体などに保護された飼い主のいない犬や猫たち。出会いに恵まれ、今では幸せに暮らす元保護犬や元保護猫を取材しました。
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