歯がボロボロだった繁殖犬 優しい家で、見違えるほど可愛らしく

 トイプードルやチワワなど人気犬種は売れやすい。そのため悪質なブリーダーは「産めよ増やせよ」と繁殖させる。そんな繁殖犬は十分な健康管理もされず、使い捨て状態に近い。そのトイプードルは、ひどい歯周病を患って保護された。

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ひどい歯周病で放棄された犬

 そのトイプードルは推定7歳。人気犬種を手広く手がけるブリーダーが種牡(たねおす)として使っていた犬で、飼育放棄されたのだという。ブリーダーを回って規模縮小や廃業を勧める活動をしている保護団体が救出した。

 いったん保護された後、NPO法人「はぴねすDOG」(大阪府)に委ねられ、預かりボランティア宅で世話をしながら、ワクチン接種やトリミングをして、譲渡先を探すことになった。

 だが、ひどい歯周病で、下顎の骨は溶けてしまい、残っていた歯を全部抜かねばならなかった。ドッグフードをかみ砕くことができないため、ふやかしてあげないと食べられなかった。ただ、預かりボランティア宅では、すぐに人になついたという。

保護当時、下顎の骨が溶けてしまっていた
保護当時、下顎の骨が溶けてしまっていた

トレーナーから知らされた保護犬の存在

 大阪府に住む牧野さんは、3匹の犬と暮らしている。1匹目のトイプードル「もっぷちゃん」はブリーダーから買った。もっぷちゃんは呼び戻しができるように、トレーナーに来てもらい訓練したのだという。

「そのトレーナーさんは『はぴねすDOG』で保護活動もしていて、その縁で初めて保護犬のことを知ったんです。いろいろな話を聞いて、次に迎える子は保護犬にしようと思いました」

 それで迎えた2匹目のトイプードルが元保護犬の「ぶらしくん」。その後、3匹目に迎えたのが、ブリーダーから保護された元繁殖犬の「ほこりくん」だった。

「トレーニングの時に、ほこりも一緒に来ていたんです。でも、夫に相談すると『私に何かあった時、面倒をみられないから、3匹目は無理、限界だろう』と。でも、1カ月近く悩んで、ほこりを迎えました。私ができない時は、子どもがごはんの用意やお散歩をしています」

ぶらしくん(左)とお散歩待ち
ぶらしくん(左)とお散歩待ち

今では説明する側に

 牧野さんは「ほこりは天然で、頭の中がお花畑のような感じ。あまりにも天真爛漫で、先住犬のもっぷとぶらしは腰が引けていました」と笑う。

 もともとは保護犬について知らなかった牧野さんだが、2匹の保護犬を飼い始め、人から保護犬について質問される側になったという。

「一番驚くのは、ただでもらえると思っている人が多いことです。ペットショップやブリーダーで買うよりお金はかかりませんが、譲渡されるまでにかかった医療費、不妊手術代、トリミング代など、保護犬にもお金がかかっています。みなさん、自分の身を削るようにして活動されていますし」

 トイレなどしつけは大丈夫かという質門も多いが、ぶらしくんは3カ月ほどで室内でトイレができるようになり、ほこりくんは室内ではマナーパンツをつけ、定期的に庭に出て用を足すという。

 牧野さんは自身の経験をもとに、保護犬について知ってもらうように周囲に説明しているという。

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渡辺陽
大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく」伝える医療ライター。医学ジャーナリスト協会会員。朝日新聞社sippo、telling、文春オンライン、サライ.jp、神戸新聞デイリースポーツなどで執筆。FB:https://www.facebook.com/writer.youwatanabe

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この連載について
幸せになった保護犬、保護猫
愛護団体などに保護された飼い主のいない犬や猫たち。出会いに恵まれ、今では幸せに暮らす元保護犬や元保護猫を取材しました。
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