突然手放された保護犬、10歳で新しい家に 幸せな晩年

家でくつろぐラブちゃん
家でくつろぐラブちゃん

 一度引き取った飼い主から突然手放された保護犬。すでに高齢、10歳ほどになっていたが、さいわい新しい家が見つかった。晩年をやさしい家族と過ごしている。

(末尾に写真特集があります)

引き取った女性が手放す

 かつて大阪城公園(大阪市)でホームレスが1匹の犬を飼っていた。その犬が産んだ子犬の中の1匹がラブちゃんだった。

 保護されたラブちゃんは、保護団体「あいこのおうち」から、東大阪市に住んでいた高齢女性に譲渡された。ところが、その10年後、この女性は「入院するから犬を預かって」と、あいこのおうちのボランティアに犬を預け、それきり連絡が取れなくなったという。何度も連絡して、やっと話ができたのだが、「もう飼えない」と言ったきり、再び消息が分からなくなったという。

 2010年頃、大阪市に住む山下さん夫妻は、子どもが小学3年生になったのを機に、「命の大切さを知ってほしい」と犬を飼うことにした。

「1匹でも保護犬を幸せにできたらという思いもあり、いろんな団体の譲渡会に足を運んでいました。もともと子犬がほしくて、プードルを希望していました」

りりしい立ち姿のラブちゃん
りりしい立ち姿のラブちゃん

子犬希望が、老犬を迎えることに

 そんな時、あいこのおうちの代表の高村さんから「10歳の犬の里親を探している」と連絡を受けた。じつは山下さんの妻は病気で夫の介護が必要な状態だったため、夫は「犬と妻、ダブル介護しなければならない」と最初は躊躇したという。だが、実際にラブちゃんと会うと、迷いはなくなったという。

「すぐに飼うことにして、2010年の夏、はじめて会ってから1週間後には、うちに迎えました。最初は人間不信で目も合わさないので大丈夫かなと思いましたが、夫が毎晩添い寝していたら半年くらいで懐いてくれました」

 10歳という高齢の域に達してから、新しい家に迎えられて、幸せになったラブちゃん。もっとも15歳頃から介護が必要になり、だんだん耳も聞こえなくなっていった。現在18歳なのだが、心臓が悪く、生死の境目をさまよったこともあるという。手術などあまり負担になるような治療することなく自然にまかせて、夫妻は老犬ラブちゃんのペースに合わせて生活を送っている。

 その後、山下家には、散歩中のラブちゃんが見つけた元野良猫のチビ太くんや、カラスに狙われていたところを保護したドラミちゃんという2匹の猫も加わり、にぎやかに暮らしている。

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渡辺陽
大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく」伝える医療ライター。医学ジャーナリスト協会会員。朝日新聞社sippo、telling、文春オンライン、サライ.jp、神戸新聞デイリースポーツなどで執筆。FB:https://www.facebook.com/writer.youwatanabe

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この連載について
幸せになった保護犬、保護猫
愛護団体などに保護された飼い主のいない犬や猫たち。出会いに恵まれ、今では幸せに暮らす元保護犬や元保護猫を取材しました。
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