猫との暮らし、楽しさと理想 漫画「俺、つしま」が伝えたいこと
キジトラの猫・つしまが主人公の漫画「俺、つしま」(小学館)は、自由気ままでふてぶてしい猫たちと、一緒に暮らす優しい「おじいちゃん」の日常を猫目線で描き、話題を呼んでいます。猫たちは実在する保護猫。作者の兄妹ユニット「おぷうのきょうだい」でストーリーを担当する「おぷうの妹」さんに、猫を飼うまでの経緯や、猫との生活について聞きました。
――「俺、つしま」は、初め人間を警戒していた猫がブラッシングされると心を許してしまうなど、猫好きにはたまらない「あるある」が詰まっています。漫画になった経緯は?
元々は私がやっていた猫のブログで、兄に絵を描いてもらっていました。つーさん(つしま)がすみ着くようになったので、ブログではなく心機一転、専用のツイッターを2年前に始めました。思いのほか反響があって、出版社の目に留まりました。今は漫画に登場する3匹と暮らしていますが、みんな元は野良猫や地域猫です。
――猫の絵は丁寧なのに、人間は簡素すぎませんか。
兄いわく、猫はかわいいから一生懸命描くけど、人間はどうでもいいみたいです。私は、普段の行動などが「おじいちゃんぽい」として老人の姿で登場しますが、かなり適当に描かれています(笑)
――猫を飼い始めたきっかけは?
今の家に引っ越してきた翌日に、窓から子猫が入ってきたんですよ。20年くらい前のことです。当時は近所にたくさんの野良猫がいました。そこで、近所の人たちと協力して、見かけた猫を病院に連れて行き、不妊・去勢手術をさせていました。近くの動物病院の先生が保護に熱心で、病気がある子の入院費もまけてくれたし、手術費用もいつでもいいと言ってくれて助かりました。
私たちは、積極的に保護活動をしていたわけではありません。でも、野良猫だらけになると、猫が嫌われてしまうと思ったので、できるだけTNR(いったん捕まえ、手術のうえ元の場所に戻すこと)や保護をしていました。
――今までどのくらいの猫をお世話したんですか。
新たな飼い主さんに譲渡した子を入れると数十匹ですかね。窓の外にやせた猫がいると気になるので、最初は庭にごはんを置き、仲良くなってケージに入れられるようになったら病院で手術して。若い猫は新しい飼い主さんを見つけてあげて、病気のある子や年寄りの猫はうちにいてもらうことにしました。
――完全に室内で飼っているのではないんですね。
今いる猫たちは、家猫修業中です。地域猫として複数の家の世話になっている猫もいます。いつかは完全室内飼いにしたいのですが、人と接したことがない凶暴で怖がりな野良猫をつかまえて、無理やり室内で飼うのは難しい。もちろんすんでいる地域や環境、猫の性格にもよるのでケース・バイ・ケースだと思います。
――猫との生活で気をつけていることはありますか。
つま先立ちでゆっくり静かに歩くようにしています。特に野良は、怖がりなんですよ。テレビの音にもおびえるくらい。怖がらせると来てくれなくなって助けられなくなるので、「ここは怖くないよ、安全だよ」と思ってもらえるように気をつけています。あとは来たらすぐにごはんをあげられるように、なるべく留守にしないことですかね。
――猫中心の生活ですね。
慣れていない頃は、次にいつ家にくるかわからない。3日来ないと、おなかがすいているんじゃないかと心配で、気持ちを全部持っていかれちゃって。久々に姿を見せてくれるとサービスして、そのうち毎日きてくれるようになりました。つーさんも、最初は痩せていて、毛があちこち抜けて、耳もボロボロでした。当時は猫缶を五つくらい食べて驚きましたが、今は量に気をつけて、腎臓に配慮したごはんをあげています。
猫たちが今10歳くらいだとすると、10年は人に甘えたり、おもちゃで遊んでもらったり、好きなものをたくさん食べたりってことを知らない。10年分を取り返すつもりで甘やかしています。
――漫画を通して伝えたいことは?
とにかく、猫との生活は楽しいっていうことです。それと、猫が平和に暮らせる町は健全だということも。町から野良猫の姿が一切消えてしまうのは、不自然に感じます。しかし、増えすぎてしまえば猫も人もつらい。「地域猫」がもっと根付いて、猫も人もなんとか折り合いをつけて共生していければ、それが理想だと思います。
(聞き手・矢田萌)
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