犬・猫が熱中症? 初期症状を見逃さず応急処置、急ぎ病院へ

 犬や猫は熱中症で死に至ることもある。どんな症状が出たら熱中症の可能性があるのか、そんな時どんな応急処置が必要か。「イヌ・ネコの熱中症予防対策マニュアル」(日本気象協会・日本動物愛護協会)を監修した弓削田直子獣医師(Pet Clinicアニホス院長)に解説してもらった。

(末尾に写真特集があります)

「熱中症で来院する動物の致死率は約50%とされています。ヒトのように全身の汗腺が発達していない犬や猫は、体温調節に時間がかかるため重篤化しやすい。そして重篤化すると救命が難しいのです」

十分な水分の補給が大事
十分な水分の補給が大事

熱中症はどんな症状が出るのか

 ペットの命を守るため、いち早く飼い主が熱中症の症状に気付けばいいのだが、ふだんから呼吸で体温調整する犬などの場合、変調に気付きにくいという。熱中症の初期には、こんな症状が表れる。

■初期~中期の熱中症の症状

・パンティング(ハアハアと激しく呼吸する)
・体温が上がる(40度以上)
・よだれが大量に出る 
・歯肉が赤くなったり目が充血したりする
・頻脈(心拍数の増加)

「熱中症の初期の症状では、ハアハアと舌を出して呼吸をするパンティング(体温調節)をしますが、これは走ったり少し興奮したりしても見られることなので、一般の方には判断が非常に難しい。そのため、散歩から帰ってゆっくり様子をみようとして、処置が遅れてしまうこともあるのだと思います」

 屋外で普段と違うサインに気付いたら、まず休ませることが大切だ。ハアハアした時に水を飲ませたり、木陰で涼ませたりしても、呼吸の状態がなかなか治まらないようであれば「黄色信号」の可能性があるという。

 体温の上昇や心拍数の増加も、熱中症の疑いが濃厚だという。

「犬・猫の体温は通常38~39度なので、日頃から、動物体温計で肛門から直腸温を測定したり、耳温計で耳の中の温度を測ったりして、平常時の体温を知っておくと、いざという時の手がかりになると思います」

 熱中症は戸外だけでなく、室内でも起きる。暑い地域ではなくても、都市部の気密性の高いマンションなどはリスクが高い。留守中にエアコンがついていない部屋で体温が上昇し、飼い主が帰宅後にぐったりした犬や猫を見つけるというケースも少なくないという。

外出時に水は必携
外出時に水は必携

熱中症が重篤になった時の症状

 症状が進むと、下痢(タール状)になり、もうろうとする。やがて意識がなくなり、けいれん発作が起きる場合もある。こうなると「赤信号」だ。

 さらに進むと、急性な呼吸障害であるARDS(急性呼吸促迫症候群)や、血栓や血液の凝固系に異常をきたすDIC(播種性血管内凝固症候群)を起こし、病院で点滴などの治療をしたとしても救命しにくくなるという。

■重篤化した熱中症の症状

・虚脱状態になる
・下痢・嘔吐・ふるえを起こす
・意識が消失する
・けいれん発作を起こす
・ARDSやDICになる

浴槽やプールに入れるのも有効
浴槽やプールに入れるのも有効

初期症状が出た時の応急処置

 では、どの段階で病院に連れていくべきなのだろうか。

「初期症状が出た時に飼い主ができる応急手当は、とにかく体を冷やすこと。よだれが出たら要注意。そこまで進まずハアハアしている状態でも、全身を冷やす応急処置を手早く行い、保冷剤などで首や内股を冷やしつつ来院してください。症状が出てから90分以内の治療が望ましいと言われています」

■すぐにすべき応急処置

・全身に常温の水をかける
・常温の水で濡らしたタオルで体を包む
・涼しい場所で風を送る

 冷やすと良い部分は、太い動脈が通っている首や、後ろ足の付け根の内側(そけい部)、前足の付け根の内側(脇の下)。それらに保冷剤をあてて冷やすのも有効だという。

 ただ、冷却には注意も必要で、慌てるあまり、いきなり冷水や氷水を全身にかけたのでは、逆効果になることもあるという。

「急に全身に氷水や冷水を浴びせると、末梢血管が収縮して、温度の高い血液が各臓器に循環する。そうすると熱が発散しにくくなって深部体温が下がらず、各臓器への障害が進んでしまうことがあります。シャワーなど常温の水を浴びせたり、濡れたバスタオルで体をくるんだり、浴槽に水がはってあれば体を浸けてもいいでしょう」

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藤村かおり
ペットライター。小説等の創作活動を経て90年代後半から、ペットの取材を手掛ける。2011年~2017年週刊朝日記者、2017年からsippoメインライター。丹念な取材と独自の目線から、動物と人の絆、動物と共に生きる人の心をすくい取る記事に定評がある。ペット関連の著書に『長寿猫』『明日にアクセス』など。現在は保護した黒猫、キジ猫と暮らす。
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