捨てられた子猫を飼ったことがきっかけ 猫の心の研究者に

 保護猫を飼い始めたことをきっかけに、猫の心理を研究対象にした研究者がいる。そもそも猫を飼い始めたのも、家にネズミが住み着いたのが理由だった。

(末尾に写真特集があります)

 京都大学の研究者、高木佐保さん(日本学術振興会特別研究員)は、京都府内の実家で暮らしている。小さい頃から動物が好きで、家族も動物好きだが、きっかけがなくて家で動物を飼ったことがなかった。ところが、ある日、その家にネズミが住み着いてしまった。

「これは退治しなければ。ネズミ退治といえば猫、猫を飼おう。ということになったのです」

 高木さんは、猫の譲渡サイトを検索して子猫を探した。個人で猫の保護活動をしている人から、公園に捨てられていた子猫を譲ってもらうことにした。

「生後1週間くらいだったそうですが、兄妹3匹の子猫がダンボールに入れられていたそうです。虐待なのか、二度と帰ってこられなくするためなのか、分かりませんが、みんなひげを切られていたそうです」

高いところに登る時は、経路を考える
高いところに登る時は、経路を考える

猫も“研究チームの一員”

 こうして子猫のミルは2012年2月、生後3カ月で、高木家の一員になった。

 最初こそ、棚の上やコートハンガーにかけた服の間に隠れていたが、すぐに新しい環境に慣れて、3日目には膝の上にも乗ってきたそうだ。当時、高木さんは大学の3年生で、家にいる時間も長かった。

「家族の中で私が一番よく世話をしていました。そのせいか、ミルは私に一番親しみを感じていたようです。常に私がいる場所にいて、気がついたらじっと見ていたり、甘えてくるようになりました」

 高木さんはもともとネズミの実験やサルの研究をしていた。それが家でミルを飼ったことで、猫の研究に傾倒していった。大学では猫の心の働きを研究する「CAMP-NYAN」のメンバー。ミルも実験に協力する研究チームの一員だという。

「ミルの行動からいつも研究のヒントを得ています。高いところに登るのが好きですが、たどり着きたい所にどのような経路で行けばいいのか、ちゃんと頭の中でシミュレーションしているようにみえます。もしかしたら、ネコは未来の計画をたてる能力を持っているのかもしれません。これは非常に複雑な心の働きの一つといわれています」

ほっこり日向ぼっこ
ほっこり日向ぼっこ

兄弟猫の飼い主ともつながる

 子猫だったミルも、今では7歳。高木さんは、一緒に保護された兄弟猫の飼い主さんともインスタグラムでつながっていて、猫の調査にも参加してくれたという。

「保護猫は雑種のことが多いのですが、いろんな血が混じっているので病気に強いんです。柄が個性的で、私だけの猫と思えるのもいい。個体差はありますが、子猫は環境の変化になれるのが早いので、はじめて保護猫を飼う人には、子猫を飼うことをおすすめします」

 高木家ではミルのことで会話が増え、家族の絆も深まったという。

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渡辺陽
大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく」伝える医療ライター。医学ジャーナリスト協会会員。朝日新聞社sippo、telling、文春オンライン、サライ.jp、神戸新聞デイリースポーツなどで執筆。FB:https://www.facebook.com/writer.youwatanabe
この特集について
幸せになった保護犬、保護猫
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