猫の最期の迎え方、マンガで解説 「その子らしさを尊重して」

『まんがで読む はじめての猫のターミナルケア・看取り』から
『まんがで読む はじめての猫のターミナルケア・看取り』から

 愛猫との暮らしの中、あまり考えたくない死。でも、いつか必ずその時は来てしまう――。避けられがちなテーマ、“ターミナルケア(終末期医療)”から“看取り”までを取り上げ、マンガで解説した『まんがで読む はじめての猫のターミナルケア・看取り』(猫びより編集部編)が発売された。愛猫が最期を迎える時、大事なのは、飼い主の責任と自信、そして何より「その子らしさの尊重」のようだ。

(末尾に写真特集があります)

猫の最期をマンガで解説

 本書は医療ガイドやハウツー本とは異なり、余命わずかと診断された猫の「もすけ」と、飼い主・鈴木の、ターミナル期から看取りまでを描いたマンガ。

 鈴木は、もすけの突然の余命宣告に落ち込むが、保護猫ボランティアさんのアドバイスによって、飼い主の自分にしかできないことを考え、残りの時間を精一杯世話しようと決める。猫の飼い主なら誰でも知っておきたい、投薬、環境づくり、緩和ケア、治療の選択などの辛い状況を、優しいタッチのマンガで分かりやすく説明している。

『まんがで読む はじめての猫のターミナルケア・看取り』から
『まんがで読む はじめての猫のターミナルケア・看取り』から

愛猫が余命わずかと知らされたら…

 本書の全体監修を務め、自身も愛猫の看取りをしたばかりの古山範子獣医師に、猫のターミナルケアについて聞いた。

――愛猫が余命わずかと知らされたら、何をすれば良いのでしょうか。

 不安や心配に襲われるのは当然ですが、家族や親しい方と気持ちを共有しながら、獣医師としっかりと相談をして、今後のことを決めていきましょう。

 担当獣医師からの説明や治療に関して、解消されない疑問や不安点があるときには、セカンドオピニオンを聞くのも良いと思います。ただし、本書にもあるように、動物病院のはしごとなると、猫さんの負担が大きくなるばかりなので、注意してほしいと思います。

 言うまでもなく、最期を見たくないからと、途中で手放すようなことはしないでください。

 私が飼い主として、心がけたことは、その子らしくいられるように尊重することです。まだまだ生きたいとがんばっているときには、励まします。「すごいね、がんばってるね、強いね、たくましい、頼もしい、ステキ」などなど。猫さんを励ましていると、ご自身も励まされてくることがあります。

 でも、がんばり過ぎないようにもしてほしいものです。飼い主さんの気持ちに敏感な猫さんは、無理をしてがんばり続けてしまうかもしれません。

 愛猫が辛そうになってきたときには「あなたががんばりたいだけ、がんばれば良いよ、よくがんばってるね、私たちの自慢の子だよ」と声をかけていました。

 猫さんは本来、強い動物です。猫さんを信じること、飼い主としての自信を持つことが、大切だと思います。

『まんがで読む はじめての猫のターミナルケア・看取り』から
『まんがで読む はじめての猫のターミナルケア・看取り』から

命を紡いでいる、その子を尊重して

――ターミナルケアでは、どんなことが大切ですか?

 まずは、できるだけいつも通りの日常生活を営むことだと思います。それにはトイレや寝床など、環境を整える工夫も必要になることでしょう。そのうえで、一緒に過ごす時間を大切にすることかと。

 深刻な診断を受けたとしても、その猫さんの命はまだ続きます。病気を通してその子を見るのではなく、淡々と命を紡いでいるその子自身を尊重していただきたく思います。“病気を抱えたかわいそうな子”ではなく、“しっかりと生きているたくましい命”ですからね。

 そんな猫さんを尊重していると、飼い主さんも自ずと重要な選択もしっかりとできるのではないかと思います。

 猫さんに不安や過剰なストレスを与えないこと、とても大切だと思います。ストレスの許容範囲は、猫さんそれぞれ。その判断も、猫さんのことをいちばん理解している飼い主さんだからこそになりますね。

『まんがで読む はじめての猫のターミナルケア・看取り』から
『まんがで読む はじめての猫のターミナルケア・看取り』から

一緒に生きてきた「自信」を

――この本を監修するにあたり、どんな想いがありましたか?

 この本の監修のお話をいただいたのは、愛猫「あめり」に死期が近づいていたときでした。あとがきでも書きましたが、看取りというのは何度経験しても慣れるものではなく、迷いや不安を抱えることがあります。

 実際に看取りは先のこととして、想像したくないかもしれませんが、マンガを通して疑似体験しておくことで、いざというときの覚悟や準備に入りやすいことでしょう。

 出版の前にあめりは旅立ちましたが、立派な最期でした。あまりに感心してしまい、涙もないままの見送りとなり、十分にいろいろなことができたからだと納得していましたが、それでも後になって寂しさは押し寄せてきます。

 ペットロスになることは、当然だという考えもあります。ただ、看取りに正解はないはずなので、間違い探しはせずにともに過ごした時間、思い出を大切にしていただきたいと思います。

 本書の原作者、粟田佳織さんがおっしゃった「大切なのは正解ではなく、自信だと気づいたのは、見送った後のことでした。自信を育むのは、生きて一緒に過ごした時間なのだと」という言葉に私も共感しています。多くの飼い主さん、動物関係者の手元に本書が届き、助けになればと願っています。

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「まんがで読む はじめての猫のターミナルケア・看取り」
まんが:ななおん/イラスト:小野崎理香/構成:粟田佳織/全体監修:古山範子/医療指導:西村知美/ケア指導:武原淑子
出版元:日東書院本社(辰巳出版グループ)
体裁:A5判(160×160mm)、128ページ
定価:1,300円+税
安田有希子
2015年からsippoにて「猫アレルギーですけど」の連載開始。2匹の元保護猫と暮らして4年目に猫アレルギーが発覚するも、平和に暮らす。猫の好きなパーツは、小さく並んだ門歯。幼少の頃「うちのタマ知りませんか?」のすごろくに大ハマりした年代。栃木県出身。

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