猫がつないだ仲間たち 大変な時は助け合う吉祥寺の「猫友」
『グーグーだって猫である』の舞台になり、猫イベントも開かれる。若者に人気の街・吉祥寺は、猫にやさしい街でもあるようだ。その吉祥寺界隈で評判のお弁当屋さんの家にも、2匹の猫がいる。猫を通じて仲間も増え、助け合う関係だ。
武蔵野市中町でお弁当店「長男堂」を経営している吉田瑠実さん(41)は、隣接する西東京市のメゾネットアパートで、2匹の猫と暮らしている。「カツオ」(オス)と「ワカメ」(メス)。14歳のきょうだいだ。
一人暮らしの吉田さんが昼間、猫とゆっくり過ごすのは、休みの時だけ。平日は朝9時半、日曜祝日は8時に自転車で店に行き、帰りは深夜になることもあるという。
「もとは定食屋だったんです。店名は仲良しのイラストレーターの猫の名『長男』から取って付け、チラシにも猫の絵を描いてもらいました。絵を見て、猫好きなんですか? 自分の猫ですか? なんて話しかけてくれるお客さんもいましたね」
きょうだい猫を迎える
吉田さんはもともと大の動物好きだ。故郷の新潟では犬と猫を飼っていた。家政科の大学に進むため上京した時、すぐにでも猫が欲しかったが、ちゃんと自立してから猫を迎えようと心に決めた。飲食店に勤めて経験を積みながら、よいタイミングを待っていた。
カツオやワカメとは、14年前、吉祥寺あったジェラート店で出会った。
「井の頭公園の近くで、猫好きなお店のスタッフが猫を保護しては、家族を探していたんです。ある日遊びにいったら、『子猫がいます』と貼り紙があって、4匹兄妹のうち2匹をもらうことにしました。留守が多いので、きょうだいで迎えるのがいいなと思って」
吉田さんはアニメ『サザエさん』が好きで、当時の勤務先の同僚に、きょうだいの猫を飼うことを告げると、「名前はカツオとワカメでいいんじゃない?」と提案されたという。
こうして念願の猫との暮らしが始まった。
だが、しばらくすると困ったことが起きた。カツオが粗相するようになったのだ。
「急にオシッコだけ布団でするようになったんです。カツオまたかーって。でも動物病院で検査をしても体に異常はなくて……。どうも砂の感触が嫌だったみたい。布団を洗うのは大変だし、布が好きならタオルはどうかと思って、風呂桶の上にバスタオルを切って置いてみた。そうしたら、ばっちりそこでするようになりました」
猫友の輪が広がった
カツオの問題行動が治まると、仕事にも集中できるようになった。2匹を引き取った翌年、「長男堂」を開店。小さい店ながら評判が口コミで広がり、吉祥寺界隈に住むアーティストも集まるようになった。
猫好きで知られるシンガーソングライターの山田稔明さんも常連客になった一人だ。
「山田さんのことを知っていたし、山田さんの愛猫ポチのこともブログで見ていたので、店に初めていらした時はドキッ(笑)。でも猫の話ですごく気が合い、地方のライブの時に、山田さん宅の猫シッターをするようになったんです。仕事の合間や仕事終わりに、ポチのフードやトイレのお世話に通いました」
ポチが亡くなった日の夜、「愛猫が死んで食事どころじゃないはず」と、店を閉めてからおにぎりを作って差し入れた。四十九日の法要イベントは吉田さんの店で開いたという。
「ポチのファンが大勢集まって、皆で涙しました。猫のつながりって強いなーとその時に思いました。気が付けば、私自身も店を通してたくさんの猫友ができていたんですよね」
吉田さんが長く家を開ける時は、カツオとワカメのために、かぎを渡す人が何人かいるという。
「猫を通して家族ぐるみの深いつきあいができるなんて、上京したての頃は思ってもみませんでした。うちの猫、ありがたいことにみんなに可愛がってもらってるんです」
吉田さんは店でイベントを催すなど、地域に馴染んでいった。猫友に支えられ、カツオとワカメに癒やされ、仕事に励んでいる。
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