ペットロスを考える 猫と暮らす高齢者、重症化に注意

 犬猫の寿命は人よりも短い。闘病・介護の知識やペットロスを癒やす方法を知って、元気なうちからペットの「終活」を考えておきたいものです。

ペットの死を共有できる人がいないと、悲しみを抱え込みやすい
ペットの死を共有できる人がいないと、悲しみを抱え込みやすい

死別の悲しみ 飼い主が互いに支え合う会も

 漫画家の卵山玉子(たまごやま・たまこ)さんは今春、「ネコちゃんのイヌネコ終活塾」(WAVE出版)を出版しました。自身も2匹の猫を飼う卵山さんは、ペットロスの重症化、長期化を避けるためにも、ペットの「終活」が必要だと指摘します。「犬猫の寿命は人間よりも短い。つらいことですがペットの終活は飼い主の責任です」

 闘病・介護にあたっては、かかりつけの獣医師とよくコミュニケーションを取って知識を蓄え、資金面も含め、幅広い選択肢を持っておくといいそうです。供養については、「葬儀会社の担当者とは事前に打ち合わせし、火葬施設や墓地は必ず見学しておくこと」。

 死別の悲しみを癒やす方法は様々で、人間の場合と同様、自助グループもあります。ペットの治療で同じ病院に通っていた飼い主らが1999年に立ち上げた「ペットラヴァーズ・ミーティング」もその一つ。悲しみのなかにいる飼い主が互いに支え合えるよう3カ月に1回、東京都内で「ミーティング」を開いています。

 愛猫をがんで亡くした梶原葉月代表は、「私も、動物の病気や死のことをとことん話せる仲間に助けられた。幸せな思い出、亡くした悲しみを気兼ねなく話してほしい」。

 神戸市の「もみの木動物病院」では毎年1回、同院で診療していたペットたちの「偲(しの)ぶ会」を行っています。ペットへの思いをつづった手紙を読み上げたり、献灯したりするなかで、悲しみを共有します。

 副院長の村田香織獣医師は、「犬については、飼い主と親子関係に似た関係を築くことが、科学的にも証明されている。子どものような存在のペットが亡くなるつらさを軽減することは、獣医療者の役割でもあると考えています」。

 葬儀・供養の内容やかかる費用は飼い主次第でかなり異なります。

 宗教法人「慈恵院」の付属施設として作られた「多摩犬猫霊園」は、1921年に開園しました。同園でも複数の葬儀方法を用意しており、人間の葬儀に似た「立会葬」では、臨済宗の法式にのっとって供養を行っています。僧侶が読経するなかで告別式を行い、火葬後に家族が骨を拾って骨つぼに納めます。

「多摩犬猫霊園」=東京都府中市
「多摩犬猫霊園」=東京都府中市

 葬祭料は犬種や動物種ごとに異なりますが、合同で火葬、埋葬する「合同火葬」では小鳥など小動物で7千円(税別)、猫で1万4千円(同)、小型犬で1万8千円(同)です。立会葬だと、三回忌までの供養料なども含めて4万~7万円程度(同)になります。

 住職代務の田中章恵さんは「きちんと式をしてあの世に旅立たせてあげることで、飼い主さんたちの心が落ち着く。どんなに悲嘆に暮れていても、火葬が済むと、皆さんすっきりとした顔になります」と話します。

 なお、多くの自治体でも清掃事務所などがペットの死体を引き取り焼いてくれますが、通常は骨は戻ってきません。手数料は3千円前後です。

猫と暮らす高齢者、重症化に注意

 ペットロスが深刻になりがちな飼い主には特徴があります。一般に、独り暮らしで、飼っているペットは1匹、一緒に過ごす時間が長く、その死を共有できる人がいない――。

 条件にあてはまりやすいのが、猫を飼う高齢者です。犬のように朝晩の散歩が必要ない猫は、独り暮らしの高齢者でも比較的無理なく飼育できます。高齢者は仕事などで出かける機会も少なく、猫と過ごす時間が長くなります。犬の飼い主にはたいてい「散歩仲間」がいて、悲しみを共有するコミュニティーを持ちますが、猫の場合はそうした交流があまりありません。

 キャットシッターの草分け的存在で「猫の學校2 老猫専科」(ポプラ新書)などの著書がある南里秀子さんは、「猫と暮らす方は悲しみを抱え込んで、うちにこもる傾向が強い。猫のことを話せる仲間を作って」とすすめます。

 南里さんは昨年、「森のデスカフェ」を始めました。スイスの社会学者バーナード・クレッタズが妻の死を契機に始めた、死を語り合うための場「デスカフェ」の猫版で、毎回定員いっぱいの申し込みがあります。「ほかの人の話を聞くことで安心感や共感が生まれ、死のショックがやわらぐようです」

悲しくて当然 仕事は堂々と休む ~取材後記~

 いま飼っている猫2匹はいずれも保護猫なので、誕生日がわかりません。それでも、こじつけて誕生日を設定。普段よりぜいたくなフードをあげて祝っています。

 ただ、猫の誕生日会は、平均寿命15.33歳(2017年、ペットフード協会調べ)を見据えた「カウントダウン」につながります。ともに過ごせる幸せをかみしめつつ、あと何年生きてくれるのだろうと、ある種の恐怖感を抱く機会になります。

 別れの日を迎えたとき、自分が冷静でいられる自信はあまりありません。たぶん会社は体調不良を理由に休みます。火葬後も、服についた柔らかな毛を見つけてはぼうぜんとするでしょう。このままでは、ペットロスまっしぐらです。

 取材を通じて特に印象に残ったのは、ペットを失った悲しみを共有できる仲間を持つ大切さ。そして悲しいのは当たり前、ということ。

 うちの子たちは妖怪・猫又(ねこまた)になるくらい長生きする予定なので、別れの日はあと15年以上やってこないはず。今から「猫友(ねことも)」づくりを心がけ、いざその日が来てしまったら堂々と悲しみ、葬儀のために有給休暇を取ろうと思います。

(太田匡彦)

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