犬は外耳炎になりやすい 治療しないまま老犬になるとリスク大

 犬の耳、そして鼻や気道はどうなってるの? かかりやすい病気は? 高齢になればより気になるところ。犬の耳鼻科に詳しい獣医師の青木忍先生にお話を伺いました。

犬の耳のトラブル、早めに適切な処置をしよう(写真提供:青木忍先生)
犬の耳のトラブル、早めに適切な処置をしよう(写真提供:青木忍先生)

 「外耳炎は、犬が最もかかりやすい病気のひとつです」と青木先生。犬の耳は、耳の穴から鼓膜までの「外耳」、鼓膜の奥の「中耳」、さらに奥の脳に近い場所が「内耳」という、基本的には人と同じ構造になっている。外耳炎は、耳の穴の入り口から鼓膜までの「外耳道」に起きる炎症のこと。具体的には以下のような症状が現れる。

【外耳炎のチェックリスト】

・耳をかゆがる(耳を後ろ足でかく、耳をすりつけるなど)
・頻繁に頭を振る
・悪い方の耳を下にして頭を傾けるようなしぐさをする
・耳から悪臭がする
・耳だれがある
・耳をさわろうとすると、怒ったり攻撃的になったりする
・耳が赤くなったり、フケが多くなったりする

犬の外耳道は独特の形で通気が悪い

 なぜ犬は外耳炎にかかりやすいのか。まず、その形状。犬の外耳道には以下のような特徴がある。

・外耳道は鼓膜に向かって少しずつ細くなり、鼓膜の付近は直径1センチ程度と、とても細い。
・外耳道の真ん中あたりでほぼ直角近くまで曲がっている。
・鼓膜の直前まで毛が生えている(犬種により生えている毛の量には違いがある)

「こうした形状のため通気が悪く、そこに耳ダニのような寄生虫がついたり、プールなどで水が入ったりすると外耳炎が起こりやすくなります」

 垂れ耳の犬種は、さらに通気が悪くなる。

 また、アトピー性皮膚炎などのアレルギーを持っていると発症率はグンと上がる。ほかにも、内分泌や免疫に異常があったり、コッカー・スパニエルやシーズーなどに多い脂漏体質だったりすると、外耳炎になりやすいという。

 さらに、外耳炎になったところに「マラセチア」というカビ(酵母菌)の一種が増殖してしまうと症状は悪化。ひどくなると鼓膜に炎症が起こり、穴があいてしまうと中耳炎に進んでしまう。

「外耳炎がきっかけで中耳炎を起こすこともありますが、いちど中耳炎になってしまうと外耳炎も治りにくくなる。それぞれが悪化要因、さらに慢性化要因になるのです」(青木先生)

 外耳炎は年齢に関係なく発症するが、適切な治療をしないまま年を経ると、慢性化する可能性が。

「慢性化すると外耳道の皮膚が厚ぼったくなり、外耳道がますます細くなる。すると耳垢が排出されにくくなって中にたまり、さらに風通しが悪くなると細菌やマラセチアなどが増殖し……と、どんどん悪化していきます」

犬の耳そうじに綿棒はNG 正しいお手入れは?

 外耳炎と思われる症状がある場合、病院で適切な治療を受け慢性化させないことが大切。さらに青木先生が指摘するのが、「間違ったお手入れをしないこと」。

 間違ったお手入れで最も多いのは、綿棒を使った耳そうじだ。犬の耳垢=分泌物はベタベタした状態で、そこに綿棒を入れてグリグリとこすると、綿棒についた分は取れたとしても、それ以外は耳の奥に押し込むことになってしまう。それが鼓膜のあたりにべったりとたまってしまったり、さらに進んで石のように固まった状態になって詰まったりすると、犬が頭を振っても出てこない。いわゆる「耳垢塞栓」の状態になる。

「外耳炎が悪化するだけでなく、耳の聞こえが悪くなる場合もあります」

 また、耳の中の皮膚はとてもデリケート。「内視鏡が少し当たっただけで赤くなってしまうほど。そんなデリケートな部分を綿棒でこすれば炎症が起きる可能性が高い。お手入れしているつもりが、実は刺激を与えて外耳炎を引き起こすきっかけになってしまいます」と青木先生。同様に、刺激の強い薬液で拭くことも、炎症のもとになるのでNGだ。

 正しいお手入れ方法を聞いた。

「犬の耳専用の洗浄液を入れて、耳の根元を指でクチュクチュ。すると、犬がブルブルッと頭を振る。これで中から汚れや耳垢が出てきます。それをコットンなど柔らかいもので拭き取る。刺激を与えないよう優しく、がコツ。もしきれいにならないようなら、無理をせずに獣医に任せることが大切です」

■青木忍(あおき・しのぶ) 獣医師・獣医学博士。日本獣医畜産大学(現・日本獣医生命科学大学)獣医学部卒業。同大外科講師・助教授、岩手大学農学部獣医学科外科教授などを経て、現在、動物病院ヘルスペット(神奈川県横須賀市、http://www.healthpet.net/clinic/で外科手術、耳科、皮膚科を担当。専門学校で教鞭をとる。

中津海麻子
フリーライター。「酒とワンコと男と女」をテーマに、ワインや日本酒や食、ペット事情、人物インタビューなど幅広く取材、執筆。JALカード会員誌「AGORA」、同機内誌「SKYWARD」、「ワイン王国」「朝日新聞デジタル &w」「好書好日」などに寄稿。

sippoのおすすめ企画

sippoの投稿企画リニューアル! あなたとペットのストーリー教えてください

「sippoストーリー」は、みなさまの投稿でつくるコーナーです。飼い主さんだけが知っている、ペットとのとっておきのストーリーを、かわいい写真とともにご紹介します!

この連載について
老犬と暮らす
老化にともなう体調変化や悩みが増える老犬。よくある病気への対処法や飼い主の心構え、ふだんからできるケアなどを紹介します。
Follow Us!
編集部のイチオシ記事を、毎週金曜日に
LINE公式アカウントとメルマガでお届けします。


動物病院検索

全国に約9300ある動物病院の基礎データに加え、sippoの独自調査で回答があった約1400病院の診療実績、料金など詳細なデータを無料で検索・閲覧できます。