老猫ソマとの別れ 家族全員で看取り「天国から見守っていて」

老衰のため、だんだんと起き上がるのが難しくなってきた
老衰のため、だんだんと起き上がるのが難しくなってきた

 転落事故で三本脚になった猫ソマ。以来、大きな病気もなく、よく食べよく遊び、元気に過ごしてきた。だが16歳になると、徐々に足腰が弱くなり、横になっている時間が増えた。「もう先は長くないかも」。僕たち家族は、少しずつ覚悟を決めていった。

 

 (末尾に写真特集があります)



 ソマは2016年7月ごろから、トイレの段差が越えられなくなり、段ボールや新聞のあるところでそそうをするようになった。立つこともままならず、いろいろなところで寝そべるようになった。


 かかりつけの獣医師に相談すると、「ソマリの平均寿命は13歳ぐらいだから、老衰でしょう。今は延命治療もできますが、それが良いとは一概に言えません。どうするか、ご家族で考えておいてください」と言われた。家族4人で話し合った結果、「延命治療は望まず、自然な流れに任せる」という方針に決めた。


 それから1か月、これと言って大きな変化はなかった。しかし8月に入ると少しずつ何かが変わり始めた。まるで死ぬ準備をしているかのように……。


 これまではソファーの上に寝ていることが多かったが、食卓の下に寝るようになってきた。体が冷えないように、食卓の下に段ボールを置いた。安心できるのか、1日の大半はそこで過ごした。そして僕たち家族との接触も減ってきた。ソマの「そっとしておいて」と言う声が聞こえるようだった。


 昔から「猫は死に目を見せない」と言われる。なるべく構わないようにした。


 8月もお盆を過ぎると、歩いているといろいろな所にぶつかるようになった。どうやら視力がかなり衰えてきたようだ。顔つきもいつもと違う。よく見ると、昼間の明るい時でも瞳孔が開きっぱなしになり、細く閉じなくなっていた。

 

長女に抱っこされるソマ
長女に抱っこされるソマ

「あぁ、もうあまり長くないのかな」。家族4人は、徐々に覚悟を固めていった。


 それでも歩いては転んで、起き上がっては歩き、また転んで、餌を食べに来る。この食べっぷりを見ると、「もう少し頑張ってくれそう」と希望をもつこともあった。ただ、食後はさすがに段ボールに戻る気力はなく、餌の皿の横でひっくり返り寝そべっていた。


 それから数日後、ソマは全く立てなくなった。それでも餌を顔に近づけると完食。そして自分は歩いているつもりなのか、「エア歩行」のように、ずっと寝たまま足を動かしていた。

 

 

◆生きること、死にゆくことを教えてくれた猫

 そして8月25日の朝。


 この日も、餌を完食した。少しだけ呼吸が荒いが、まだ数日は頑張ってくれそうに見えた。妻はその日の夜、大事な用事があり、次女が家にいてくれる、ということで外出した。出先から頻繁にLINEを入れる。次女からは「ソマ頑張っているよ」「大丈夫だよ」と返信が来た。


 妻が帰ってきた。すると帰りを待っていたかのように、事態が急に動き始めた。


 突然呼吸が荒くなったり、浅くなったり、を繰り返す。そしてビクビクとけいれんが始まる。もうダメかもしれない。「ソマ!、ソマ!」。妻が抱きしめる。目は開いてはいるが、もう何かを見ようという感じではない。


 僕、長女、次女と、家族ひとりずつソマを抱きしめた。「ソマ、今までありがとう」「ソマ、大好きだよ」「ソマ、死んじゃいやだー」。赤茶色の毛をいとおしくなで、頬ずりする。


 家族でソマを囲み、その一瞬を大切に過ごした。30分ぐらいすると、身体が突っ張り始め、尿がツーと漏れた。


 いよいよか。浅い呼吸を数回した後、深いため息の様な呼吸をして、息が止まった。


「今、旅立ったね」。4人とも、涙を流していた。8月26日午前零時25分ごろだった。


 大切なソマを失うことは、言いようもないほど悲しい。でも最後に家族全員で見送ることができた。みな死を穏やかに受け止めることができた。そしてソマは私たちに、老いることや死にゆく様を学ばせてくれた。

 

 

◆見送った日の青空に、猫の瞳のような光

送り出す際に、ソマのまわりを花で彩ってあげた。両手には、深紅のバラ
送り出す際に、ソマのまわりを花で彩ってあげた。両手には、深紅のバラ

 亡くなってから6日間、火葬場が空かず、ソマは自宅でドライアイスに囲まれて過ごした。8月31日、ようやく「虹の橋」を渡ることができた。


 無事に天国に届けてもらえるようにと、黒いネコさんの宅急便の箱に入れた。「僕たちがそちらに行ったら、これを持って迎えに来てね」と、深紅のバラを両手で持たせて送った。


 この日は快晴。骨壺に納め火葬場を出ると、あまりにもきれいな空。ソマが昇っていった記念に、空の写真を撮った。同行してくれた妹が撮った写真に、不思議なものが映り込んでいた。拡大してみると太陽を射るように虹色の光が通り、その上にはソマリの特徴である「アーモンド型の瞳」の形をした水色の光が映っている。


「パパ、ママ、心配しないで! 僕は無事に虹の橋を渡ったよ!」。


 その光は、ソマからのメッセージだと信じている。

 

火葬の直後、太陽を射抜いた虹色の光と、アーモンド型の水色の光。ソマが、天国から「今まで、ありがとう」とメッセージを送ってくれた
火葬の直後、太陽を射抜いた虹色の光と、アーモンド型の水色の光。ソマが、天国から「今まで、ありがとう」とメッセージを送ってくれた
  • お迎えが近づいてくると、ソマはひっそりとした場所を選ぶようになった
  • ソマの遺影と骨壺。左手前は、友人の紹介で、障害者施設の利用者が、ソマを模して作ってくれた木工。これをなでると、不思議と気持ちが癒やされた
  • ソマを送り出すとき、「天国へ無事旅立てるように」と、猫ちゃんの宅急便の箱に入れた
  • 亡くなる数週間前のソマ。瞳孔が開いてきたのがわかる
  • 老衰のため、だんだんと起き上がるのが難しくなってきた
  • 長女に抱っこされるソマ
  • 送り出す際に、ソマのまわりを花で彩ってあげた。両手には、深紅のバラ
  • 火葬の直後、太陽を射抜いた虹色の光と、アーモンド型の水色の光。ソマが、天国から「今まで、ありがとう」とメッセージを送ってくれた
  • お迎えが近づいてくると、ソマはひっそりとした場所を選ぶようになった
  • ソマの遺影と骨壺。左手前は、友人の紹介で、障害者施設の利用者が、ソマを模して作ってくれた木工。これをなでると、不思議と気持ちが癒やされた
  • ソマを送り出すとき、「天国へ無事旅立てるように」と、猫ちゃんの宅急便の箱に入れた
  • 亡くなる数週間前のソマ。瞳孔が開いてきたのがわかる
  • 老衰のため、だんだんと起き上がるのが難しくなってきた
  • 長女に抱っこされるソマ
  • 送り出す際に、ソマのまわりを花で彩ってあげた。両手には、深紅のバラ
  • 火葬の直後、太陽を射抜いた虹色の光と、アーモンド型の水色の光。ソマが、天国から「今まで、ありがとう」とメッセージを送ってくれた
  • お迎えが近づいてくると、ソマはひっそりとした場所を選ぶようになった

    お迎えが近づいてくると、ソマはひっそりとした場所を選ぶようになった

  • ソマの遺影と骨壺。左手前は、友人の紹介で、障害者施設の利用者が、ソマを模して作ってくれた木工。これをなでると、不思議と気持ちが癒やされた

    ソマの遺影と骨壺。左手前は、友人の紹介で、障害者施設の利用者が、ソマを模して作ってくれた木工。これをなでると、不思議と気持ちが癒やされた

  • ソマを送り出すとき、「天国へ無事旅立てるように」と、猫ちゃんの宅急便の箱に入れた

    ソマを送り出すとき、「天国へ無事旅立てるように」と、猫ちゃんの宅急便の箱に入れた

  • 亡くなる数週間前のソマ。瞳孔が開いてきたのがわかる

    亡くなる数週間前のソマ。瞳孔が開いてきたのがわかる

  • 老衰のため、だんだんと起き上がるのが難しくなってきた

    老衰のため、だんだんと起き上がるのが難しくなってきた

  • 長女に抱っこされるソマ

    長女に抱っこされるソマ

  • 送り出す際に、ソマのまわりを花で彩ってあげた。両手には、深紅のバラ

    送り出す際に、ソマのまわりを花で彩ってあげた。両手には、深紅のバラ

  • 火葬の直後、太陽を射抜いた虹色の光と、アーモンド型の水色の光。ソマが、天国から「今まで、ありがとう」とメッセージを送ってくれた

    火葬の直後、太陽を射抜いた虹色の光と、アーモンド型の水色の光。ソマが、天国から「今まで、ありがとう」とメッセージを送ってくれた

  • お迎えが近づいてくると、ソマはひっそりとした場所を選ぶようになった
  • ソマの遺影と骨壺。左手前は、友人の紹介で、障害者施設の利用者が、ソマを模して作ってくれた木工。これをなでると、不思議と気持ちが癒やされた
  • ソマを送り出すとき、「天国へ無事旅立てるように」と、猫ちゃんの宅急便の箱に入れた
  • 亡くなる数週間前のソマ。瞳孔が開いてきたのがわかる
  • 老衰のため、だんだんと起き上がるのが難しくなってきた
  • 長女に抱っこされるソマ
  • 送り出す際に、ソマのまわりを花で彩ってあげた。両手には、深紅のバラ
  • 火葬の直後、太陽を射抜いた虹色の光と、アーモンド型の水色の光。ソマが、天国から「今まで、ありがとう」とメッセージを送ってくれた
佐藤陽
1967年生まれ。91年朝日新聞社入社。大分支局、生活部、横浜総局などを経て、文化くらし報道部(be編集部)記者。医療・介護問題に関心があり、超高齢化の現場を歩き続けてまとめた著書『日本で老いて死ぬということ』(朝日新聞出版)がある。妻と娘2人、オス猫2匹と暮らす。妻はK-POPにハマり、大学生と中学生の娘たちも反抗期。慕ってくれるのは猫の「ジャッキー」と「きなこ」だけ。そんな日々を綴ります。
この特集について
日だまり猫通信
イケメンのオス猫2匹と妻子と暮らす朝日新聞の佐藤陽記者が、猫好き一家の歴史をふりかえりながら、日々のできごとをつづります。
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