“最高の猫本屋”が選ぶおすすめ猫本 猫を通じて本を楽しむ

新刊、古書合わせて約2000冊の猫本が並ぶ、東京・三軒茶屋にある猫本の専門書店「Cat’s Meow Books(キャッツミャウブックス)」。保護猫たちが店の“顔”を務め、売り上げの10%を猫の保護活動のために寄付している。会社勤めをしながら同店を開いた安村正也さん(49)に、おすすめの猫本について聞いた。
(末尾に写真特集があります)
「Cat’s Meow Books」では、猫が少しでも出てくれば“猫本”として置いているという。“Cat’s Meow”は、英語のスラングで“最高の人”“最高のもの”を意味する。つまり“最高の本屋”という店名だ。来店客は「猫の本ってこんなにあるんですね」と驚く人が多いという。猫の古本の買い取りも行っているが、「猫たちのために」と寄付してくれる方ばかりだとか。
「猫きっかけで紙の本を手にしてくれる方が増えればいいなと思っています。通販は行っていないので、ここに来ていただいた方だけが目にする本棚みたいな感じにしています」

◆猫本を集めるきっかけになった本
大の本好きで、猫好きでもあった安村さんには、「猫本をたくさん読もう」と思うきっかけになった思い出深い一冊がある。
1998年に出版された『猫に満ちる日』(講談社)だ。
2014年に逝去した小説家で詩人の稲葉真弓さんによる文芸書。男とは暮らせなかった女が、猫だけを見つめ、やすらぎの時を共有した7千日の物語だ。稲葉さんは、20歳で死んだ愛猫ミーとの深い絆を描いたエッセイ本『ミーのいない朝』 (河出文庫)も出版しているが、安村さんは2冊の違いについてこう話す。
「飼っていた猫を亡くした稲葉さんの悲しい気持ちが昇華されて『猫に満ちる日』という作品になっています。猫を亡くした悲しみや、飼い猫への想いは変わらないけれど、小説として読むと、柔らかい印象になります」
安村さんがこの本に出会ったのは20年近く前。現在は奥様と、15歳の先住猫「三郎」と、若い4匹の保護猫「鈴」(すず)、「読太」(よんた)、「チョボ六」、「さつき」とともに暮らしているが、実家でも猫を飼っていて猫が大好きだった。
「この頃は、今の飼い猫たちに出会う前で、実家の猫のことしか知りませんでしたが、人に勧められて読んだら本当に良くて。猫を通じて、本をこんな風に読めるんだなと思いました」

◆sippo読者におすすめは?
そしてもう一冊、お店の蔵書の中でsippo読者におすすめの猫本を選んでもらった。
2016年に出版された「+1cm(プラスイッセンチ)」(文響社)。“たった1cmの差があなたの世界をがらりと変える”というサブタイトル付きの同書は、韓国・米国で75万部超えのベストセラーとなった自己啓発の事例本だ。
「生活の中に色々な不満があるけれど、“ちょっと見方を変えただけで、人生が変わるよ”という本です。自己啓発本が苦手な人でも、ポップな絵と読みやすい短文で、パラパラと見るだけで、気づきが生まれるんじゃないかなという本です」
猫っぽさが感じられないような気がするが……猫はどんな登場の仕方をしているのだろうか。
「猫は所々に挿絵で出てくるだけですが、これも猫本です(笑)。猫好きの人って、読んでいる本にちょっと猫がでてきたり、映画やCMに猫が映っていたら、楽しかったりするじゃないですか。そういう気持ちで“猫がまた出てきた”と読んでいただけると、楽しいんじゃないかな」

安村さんは店を始めた頃、同書から人生への気づきを与えてもらったという。
「最初は商売を始めたら会社を辞められるかな……という思いがありましたが、今となっては会社があるおかげで、採算度外視で保護猫のために寄付をするという本屋の経営ができています。そうして見方を変えただけで、自分の人生が変わるし、楽しく暮らしていけると実感しています」
同店では、新書や古書、グッズの購入はもちろん、ビールなどのドリンクを注文することでも猫の保護活動の役に立つ。お気に入りの猫本を探しに、足を運んでみては?
(安田有希子)

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