ペットにもツボ! 少しずつなでて健康維持 犬・猫の中医学

数値などには表れないペットの不調に対応する犬・猫の中医学には、それぞれの症状に応じた生薬(漢方サプリ)のほか、ツボ押しや、食養生などの対処法もある。家でもできる基本を紹介します。
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「ミーコちゃんの過食はその後、どうですか?」
「だいぶ落ち着きました。前はやたら食べて吐いてもいたのですが、嘔吐も最近はしていません」
猫のミーコの飼い主は、セカンドオピニオンを求めた中医学に詳しい動物病院を再訪した。
ミーコは14歳のシニア期であることに加え、家に子猫が来たストレスもあって、体調を崩してしまったのだった。
10日前の初診時には、「四診(ししん)」という方法でチャートが作られ、ミーコ専用の漢方サプリ(生薬)が処方された。

ミーコの飼い主が、先生の質問に答えながら、嬉しそうに報告する。
「私が口を開けてあげると、ミーコは上手にサプリを飲んでくれました。先生、今日はマッサージを教えてくださるんですよね」
ミーコの飼い主はこの日、中医学の鍼灸に基づく“ツボ押し”を教わることになっていた。
先生が説明する。
「猫や犬の身体にも、人と同じようにツボがあります。全身を流れる網目のような気の流れ道(生命のエネルギーが通る道)を、中医学では『経絡(けいらく)』といいます。内臓や器官とつながっているこの経絡の上のツボを刺激することで、内臓まで伝わり、健康維持や健康促進につながります」
診察台の上のミーコは、先生に頭や顎、背中や尾のあたりまでやさしくなでられ、うっとり気持ちよさそうに目をとじた。いきなりマッサージをするのではなく、準備運動のように、体に少しづつ触れていくのが大切なようだ。
「ではまず、『腎』(五臓六腑の1つで生命活動の源。成長・発育・生殖・老化に関与すると考えられている)と気を補うツボを押してみましょう。背中側の、おへそのちょうど真裏にあるのが『命門(めいもん)』で、その両側に位置するのが『腎兪(じんゆ)』です」

腎兪は、老化防止や、骨を丈夫にするなど、元気のもとといわれるツボで、健康状態を維持するのに役立つのだという。ミーコのように年をとった猫には、衰えがちな“腎”を守る大切な働きもあるそうだ。
「もうひとつ、お腹の調子を整えたり、免疫力をあげたり、身体のいろいろな箇所にひろく効果のある『足三里(あしさんり)』のツボ押しも覚えましょう。足三里は、両後ろ足の、膝の外側にある骨のでっぱりから、少し下りたところにあるくぼみです。ピンポイントでなくても大丈夫です」

ミーコの飼い主は、先生に教わって背中や足を触りながら、はっとした。前はもっと遊んであげていたのに、最近つい子猫の面倒ばかり見ていた……。毎日ツボ押しをすることで、ミーコとのスキンシップにもなりそうだ。
別の日、夏の暑さと引っ越しで「体重が落ちて、体をかいていた」犬のケンタも、中医学の動物病院を再訪した。ケンタも漢方サプリを飲むことで食欲が戻っていたが、養生のためにツボ押しを習い、「食養生」を続けることになった。食養生とは文字通り食を通じて命を養い、健康を維持すること。ケンタの飼い主は、症状に合った食事のアドバイスを受けた。
「暦の上では秋でも今年は暑さが長引いていたし、ケンタ君は体質的に身体に熱や湿気がこもりやすいので、熱をとるキュウリや、気を補う根菜類(イモ等)や肉を茹でてあげてみてください。ふだんのフードにトッピングするといいですね」
中医学では肉も野菜も生のままではなく、火を通して「胃腸に優しい」状態であげるのが好ましいという。
中医師の楊暁波(ようきょうは)先生はいう。
「ツボ押しも食養生も、生薬(漢方サプリ)とともに、身体全体のバランスの崩れを是正するお手伝いをします。今回はミーコもケンタも未病(健康と病気の間)の状態で飼い主さんが気づき、中医学を通して新たな発見がありましたね。日頃から小さな変化に気づくように、ペットの状態をメモするようにしましょう」
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