ペット販売など犬猫の流通の監視 自治体の担当「人手不足」
劣悪な環境での飼育や病弱なペットの販売など、犬や猫を取り扱う繁殖業者やペット店にまつわるトラブルが相次いでいる。動物取扱業者への自治体の監視指導は十分なのか。朝日新聞の調査では、犬猫は2015年度に前年度より約10万匹多い約85万匹が流通していた一方で、一部では業者規制が形骸化している実態も見えてきた。
調査は16年12月、動物愛護行政を担う全国115の自治体を対象に行い、すべての自治体から回答を得た。その結果、そもそも59%に当たる68自治体が、動物愛護の担当職員の数が「足りない」と考えていることがわかった。
人手が「足りない」と答えた自治体に、どの業務について足りないのかを尋ねると(複数回答可)、最も多かったのは「外部からの苦情や問い合わせ対応」(56自治体)で、次に多い40自治体が「動物取扱業者の監視指導」をあげた。繁殖業者やペット店など第1種動物取扱業にかかわる事務を所管するのは都道府県や政令指定都市など99自治体。その4割が監視指導について人手不足を感じていることになる。
実際、13年9月に施行された改正動物愛護法(動愛法)で新たに設けられた業者規制についての対応状況を聞くと、一部の自治体で、法律の適切な運用が行われていない実態が浮かび上がってきた。
まず、犬猫を販売する繁殖業者やペット店が各自治体に提出するよう義務付けられた「犬猫等販売業者定期報告届出書」。業者は各年度の終了後、60日以内に所管する自治体に提出するよう定められているが、99自治体の平均回収率は87%にとどまった(16年12月時点)。すべての業者から回収したという自治体が23ある一方、大阪市や福岡市では回収率が50%台だった。
動愛法を適切に運用すれば、提出を怠ったり虚偽の報告をしたりした業者に対しては、20万円以下の罰金が科される。
また、犬猫等販売業者に対して備えつけを義務付けた「帳簿」について確認していない自治体が三つ(北九州市、埼玉県川越市、高知市)あった。帳簿を備えていなかったり、虚偽の記載をしていたりした場合は、やはり20万円以下の罰金が科される規定になっている。
改正動愛法で新たに禁止された幼齢個体の販売に関しても、監視指導を行っていない自治体が五つ(神戸市、北九州市、川越市、高知市、三重県四日市市)あった。子犬や子猫を生後56日(付則第7条によって「別に法律で定める日」までは49日と読み替えられている)までは販売してはならないという規制は、法改正の目玉だった。
業者への定期的な立ち入り調査の頻度については、「1~3年に1回以上」という自治体が43%だった。だが、定期的に行うのは「5年に1回以上」か、そもそも定期的な立ち入り調査をしていないという自治体も47%にのぼった。
こうした中で、札幌市や埼玉県三郷市は、国の規制を先取りする形で「8週(56日)齢規制」を条例で努力義務化した。
また、東京都の小池百合子知事は昨年12月の都議会一般質問で「動物取扱業者に法令順守を徹底させて、適正に監視指導を行うためには、犬や猫を飼育するケージの大きさなど飼養の施設や飼養環境に関して、省令などによってより具体的な基準を盛り込むことが必要と考えます」などと答弁し、業者規制に数値基準を入れるよう国に要望していくことを表明している。
ペットに関する法制度に詳しい細川敦史弁護士は「自治体職員が適切な指導監督機能を果たさなければ、取扱業規制はまさに絵に描いた餅になる。人員不足や予算の問題があるのなら、自治体職員の負担を軽減するという側面からも、取扱業規制について、例えば飼養施設の大きさや繁殖回数などに関する具体的な数値基準を盛り込むべきだろう」と話している。
(太田匡彦)
sippoのおすすめ企画
「sippoストーリー」は、みなさまの投稿でつくるコーナーです。飼い主さんだけが知っている、ペットとのとっておきのストーリーを、かわいい写真とともにご紹介します!
LINE公式アカウントとメルマガでお届けします。