札幌の殺処分ゼロ、3年 大学や民間団体とも協力
札幌市による犬の殺処分がゼロになってから、今月で丸3年を迎えた。政令指定市の中でも先例的な取り組みの継続は、民間との連携や市民の動物に対する意識が支えとなりそうだ。
札幌市動物管理センターによると、殺処分された犬の数は1972年度の1万545匹をピークに減り続け、2006年度は275匹、10年度は75匹、13年度は8匹になり、14年1月からゼロが続いている。
同センターは、収容された犬ができるだけ市民に譲渡されるよう、昨年度から北大や酪農学園大と連携し、去勢・避妊手術やトリミングなどの健康管理を実施。気性の荒い犬を人に慣れさせる訓練も始めた。
昨年度には啓発イベントを民間団体などと初めて共催。それまでの市単独の行事と同様、収容された犬の譲渡会を続けている。14日には札幌市と道などが共催した札幌市西区でのイベントでも譲渡会があった。同区の主婦矢部由里子さん(45)は犬を目当てに家族で来場。「殺処分はかわいそう。助けられるなら飼いたいと思う」と話した。
犬を保護している同センター福移支所(北区)では、12年度から平日のほかに4~11月の第2・4土曜日の午前中も開放し、譲渡の機会を作ってきた。同じ頃からはホームページで犬の情報を伝えている。
13年に改正動物愛護法が施行された影響も大きい。自治体は市民やペット業者から犬や猫の引き取りを求められると断れなかったのを、拒否できるようにした。各地で犬の収容数が減り、札幌市では06年度の779匹から13年度は344匹に半減した。
■市民意識の変化も
同センターの高田泰幸・指導係長は、市の取り組みや法改正のほか「動物に対する市民意識の変化も背景にある」と語る。飼い犬の主流は中型犬から小型犬・室内犬に移行。野良犬が減った。また、重い病気の犬をみとってくれる市民も現れるようになった。ほおが陥没したミニチュアシュナウザーや下半身不随のミニチュアダックスを引き取ってくれた人がいたという。
犬の殺処分は、保護施設の収容能力を超えた場合や、治る見込みがないほど重症で引き取り手もない犬を中心に実施されてきた。高田さんは「これからも殺処分ゼロが続くよう取り組んでいきたい」と話す。
■道内他市町村でも減、旭川市は4年超「ゼロ」
札幌市を除く道内178市町村でも、犬の殺処分は減っている。06年度は1487匹だったが、13年度は180匹と年々減少し、15年度は87匹になった。旭川市では12年9月から殺処分ゼロが続いている。
だが、道内全体でゼロにするのは容易ではなさそうだ。収容した犬は、06年度の2805匹から減り続けているが、15年度も1196匹に達した。道生物多様性保全課の本郷健雄主幹は「地方は人口が少なく、引き取り手がなかなか見つからない」と説明する。
殺処分ゼロに向けた取り組みは、全国で加速している。政令指定市では川崎市や仙台市、熊本市がすでに実現。環境省は13年度から犬猫殺処分ゼロのプロジェクトを始め、東京都の小池百合子知事は昨年9月の都議会での所信表明演説で、ペットの殺処分ゼロを都政の目標の一つに掲げた。
(若松聡)
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