犬・猫は赤と緑が区別できない 霊長類だけ発達した訳

 リオ五輪では各国の国旗がはためいた。目につく色は赤と緑。でも実は、正反対に見えるこの2色は極めて近い色なのだ。緑のもとになっている葉緑素と、赤のもとになっている血の色素のヘムは、化学構造でみるとそっくり。いずれも四つ葉のクローバーのような形をしており、中心にはまっている金属イオンがマグネシウムか鉄かという点が違う。だから物理学的にいうと、葉っぱから反射される光と血から反射される光は互いに極めて似た光になる。

 霊長類以外の哺乳類、たとえばネコやイヌはこの光がどちらも同じように見える。つまり葉っぱの緑色と血の赤色を区別できない。そのかわり、彼らは暗がりでもエサを見つけたり、敵や味方を区別できたり、明暗の感度が高い眼(め)を持っている。

 どうして霊長類は、わずかな光の差を見分け、そこに緑と赤という大きな色の違いを知覚できるようになったのか。それは彼らがすみかとした森の環境と関係している。折り重なる枝葉の中から木の実や熟した果実をすばやく見つけることが生存の上で有利に働いた。あるいは個体間のコミュニケーションが発達するにつれ、顔色の微妙な変化を読めることが役立ったのかもしれない。かくして我々人間は、今日、カラフルな世界を享受し、芸術やファッションを楽しむことができるのである。

(生物学者・福岡伸一)

朝日新聞
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