シェパードのエイム号に金メダル 警察犬、窃盗未遂の容疑者発見

表彰されたエイム号と巡査部長の森川昌志さん=岡山県庁
表彰されたエイム号と巡査部長の森川昌志さん=岡山県庁

 岡山県警の警察犬「エイム号」が金メダルを受賞した。容疑者逮捕に貢献したとして、指導役の巡査部長森川昌志さん(38)とともに、7月に西郷正実本部長から表彰された。森川さんの案内で、エイム号が訓練する様子を取材した。

 

(末尾にフォトギャラリーがあります)


 エイム号の正式名は「エイム of アースミュージック号」。ジャーマン・シェパードで9歳のオスだ。


 今回、窃盗未遂事件の容疑者発見で表彰された。5月23日午前、男2人が備前市内の工場に侵入し、電線を奪おうとした窃盗未遂事件が発生。森川さんとエイム号は現場に向かった。


 容疑者1人は警察官が取り押さえたが、もう1人は逃げていた。工場の敷地は同県倉敷市のマスカットスタジアム約1・7個分の広さもある。エイム号は現場に残っていた軍手のにおいを頼りに捜索。約20分後、高さ約2メートルの植え込みに隠れていた男を見つけ出した。


 普段、どんな訓練をしているのか。岡山市北区いずみ町の警察犬訓練所を訪ねた。大きなグラウンドにある犬舎の一角に、エイム号がいた。森川さんが近づくと、しっぽを振って跳びはねた。


 訓練時間は一日4時間ほど。においを嗅ぎ分けたり、人が歩いた道のりをたどったりする。「行け!」。森川さんの掛け声で、エイム号は走り出し、障害物を軽やかに飛び越えてみせた。


 森川さんは2012年3月に警察犬係になり、エイム号を担当した。エイム号にとっては、3人目の担当者だった。当時、エイム号は前任者がいなくなったストレスから体調を崩していた。その姿に、森川さんは「まずは仲良くなろう」と、ボールを取って来させるなど遊ぶことを心がけた。エイム号は次第に回復し、森川さんが乗るバイクの音を聞き分けるようになった。森川さんは「パートナーと認められたかな」と感じた。


 担当者になって約4カ月後、現場に出動するようになったが、活躍できなかった。「ウマが合わないのでは」「自分の指導力不足ではないか」。悩んだ森川さんは全国の指導者に相談し、訓練方法を勉強した。


 エイム号は、あきっぽくて受け身な性格。そこで、森川さんは根気強さと自発性を身につけさせようと、隠された物品を見つけ出す「捜索訓練」に取りかかった。15年4、7月には事件を解決に導いたと認められ、倉敷、水島両署の署長表彰を受けた。森川さんの自信になった。


 今回の表彰について、森川さんは「エイムと一緒に活動してきた4年間の成果を出せて大変うれしい」と喜び、「さらに県民のみなさんの役に立ちたい」と抱負を語った。表彰式で、エイム号は首に金メダルをかけられ、森川さんにじゃれていた。


 県警には現在、エイム号を含む4匹の警察犬がいる。昨年1年間の出動件数は127件で、うち5件で行方不明者の発見などにつながった。


(本間ほのみ)

 

 

■31匹が警察嘱託犬に

 民間で飼われ、県警の要請があった時に出動するのが警察嘱託犬だ。県警は今年度、指導者27人と犬31匹に委嘱している。


 31匹は4月の「2016年度県警察嘱託犬審査会」で合格。足跡など地面のにおいを追う「一般捜索犬」が27匹、空中に漂うにおいを追う「地域捜索犬」が4匹で、ジャーマン・シェパードやウェルシュ・コーギー、シバイヌなどがいる。任務は1年間だ。


 鑑識課によると、15年7月から16年5月までの嘱託犬の出動は233件あった。他県より多く、08年から15年までの8年間で全国2位の実績という。担当者は「警察と指導者の協力体制がしっかりしているから」と話す。


 県内で嘱託犬制度は1955年10月に始まった。62年に県警察嘱託犬協会が設立され、育成などに取り組んできた。協会の日下猛之会長は「社会貢献できるようにがんばる」と話した。

朝日新聞
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