食用の動物にも快適な生活 動物福祉の意識高いヨーロッパ

今年7月に開かれたIAHAIOの国際会議
今年7月に開かれたIAHAIOの国際会議

 今年7月、IAHAIO(人と動物の関係に関する国際組織)の大会がパリで行われ、私も出席してきました。

 この、人と動物の関係に関する国際会議は、欧米の関係団体が協力し合ってHAB(人と動物の絆)に関する研究発表と国際的なディスカッションの場として、1977年より行われていました。IAHAIOは人と動物の相互作用の理解やその活用を目的としてアメリカ、フランス、イギリスなどの団体が中心となって1990年に設立されたものです。日本もJAHA(日本動物病院協会)やヒトと動物の関係学会がナショナル・メンバーとして加盟しています。IAHAIOについてはこちらのホームページを参照してみてください。

 会場ではアニマルセラピーに関する発表が多く行われ、動物関係者だけでなく、人間についての医療従事者や教育関係者も多数参加していました。各国で犬や猫などの伴侶動物が人の心身の健康に役立ち、医療や教育の場で活躍していることが紹介されました。JAHAは、1986年から実施しているCAPP(人と動物のふれあい活動)について発表しました。

 また、アニマルウェルフェア(動物福祉)に関する発表が多かったことも印象的でした。ヨーロッパでは伴侶動物だけでなく野生動物、産業動物(家畜)、展示動物(動物園動物)などのウェルフェアにも関心が高く、日本も見習わなければならないと思いました。

 アニマルウェルフェアの考え方では、人間が関わるすべての動物のQOL(quality of life=生活の質)に配慮すべきであり、以下の5つの自由が守られるべきであるとしています。

①飢えと渇き(不適切な栄養管理)からの自由
②不快な環境からの自由
③痛み、怪我、病気(身体的苦痛)からの自由
④恐怖と苦悩(精神的苦痛)からの自由
⑤正常な行動をする自由
飼育方法を明示して販売されている卵
飼育方法を明示して販売されている卵

 人間が食べることを目的に生産される動物たちも、生きている間は快適な生活を保障し、できるだけ苦痛の少ない方法で利用すべきであるという考え方です。ヨーロッパでは一般の市民が食肉や卵がどのような方法で生産されているのかに配慮し、自分が食べる卵や肉を選んでいるということでした。

 これらのことは、日本では獣医師をはじめ動物関係者ですら、まだ十分意識していないように思います。インドの英雄、ガンジーは「ある国家の偉大さ、モラルの成熟度は動物の扱われ方を見ればわかる」と述べていますが、ヨーロッパのアニマルウェルフェアに対する意識の高さを見ると、残念ながら日本はまだ本当の意味で先進国であるとは言えないと思いました。

 一方、家畜のウェルフェアに関する仕事を精力的に行っている米国のテンプル・グランディン博士は「お金には大きな影響力があり、動物を救うのも傷つけるのも、経済的利益の有無にかかっている」と述べています。確かに、たとえ動物にとって良いことであっても、人間にとって利益がなければなかなか成功しないものだと思います。

 たとえアニマルウェルフェアに配慮した方法で卵や食肉を作る人がいても、割高であることを理由に買う人がいなければ失敗に終わってしまいます。また野生動物や不適切な方法で飼育された動物からとれる毛皮も、買う人がいれば生産され続けます。ヨーロッパでは毛皮を着ることはかっこいいどころかむしろ恥ずかしいことと考えられているとのことでした。

 少しずつ、でも確実に、消費者、すなわち一般の人たちの意識を変えていくことが大切だと思いました。

村田香織
獣医師、もみの木動物病院(神戸市)副院長。イン・クローバー代表取締役。日本動物病院協会(JAHA)の「こいぬこねこの教育アドバイザー養成講座」メイン講師でもある。「パピークラス」や「こねこ塾」などを主催、獣医学と動物行動学に基づいて人とペットが幸せに暮らすための知識を広めている。
この特集について
ペットのこころクリニック
犬や猫の問題行動に詳しい獣医師の村田香織先生が、ペットと幸せに暮すためのしつけや飼い方のコツをていねいに解説します。
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