飛行帽を思わせる大きな耳が特徴的な「あの」(あのママさん提供)
飛行帽を思わせる大きな耳が特徴的な「あの」(あのママさん提供)

保健所で野良の母犬から生まれた雑種犬「あの」 育てやすさバツグンのよき家庭犬に!

目次
  1. 【基礎データ】ビーグルなど洋犬っぽさもある中型雑種犬
  2. 母犬が保健所で4匹を出産
  3. 「ハグ」や「チュー」などの一芸も
  4. SNSの1日1投稿が成長日記に

 個性豊かな雑種犬の魅力を紹介する連載企画。第15回は、半分立ち気味の大きな垂れ耳がかわいい「あの」。保健所で保護された野良犬のお母さんから生まれた後、生後2カ月のころに譲渡されて、今では15〜16種類の一芸ができる賢い家庭犬に。もともと雑種犬が大好きだったという家族に、たっぷり愛されて暮らしています。

(末尾に写真特集があります)

DATA
《名前》あの
《年齢/性別》3歳/オス
《役割》愛されることが仕事の家庭犬です!
《サイズ》体高52cm・体⻑48cm・体重13.5kg
《チャームポイント》中途半端な垂れ耳、額のM字模様、ソックスのように白い足先
《特性》
人慣れ度★★☆
犬好き度★★☆
食いしん坊度★★★
運動量★★★
トレーニングしやすさ★★★
ケアのしやすさ★★★
(写真:あのママさん提供)

 一見、ビーグルなど洋犬っぽくも見える「あの」。「ビーグルですか?」「何犬のミックスですか?」と聞かれることも多いそうですが、熊本県の保健所で野良犬だった母犬から生まれた雑種犬です。

脚が長く、体つきは細マッチョ(あのママさん提供)

 小学校6年生のころから雑種犬と暮らしていたという、飼い主のあのママさん。4年弱前、実家にいた二代目の雑種犬が亡くなったこと、コロナ禍で趣味のバレーボールができなくなったこと、ペット可の物件に暮らしていたことなどから、“犬を迎えたい”欲が高まっていました。

「お恥ずかしながら、当時は保護犬のこともあまり知らなくて。雑種犬が好きというところから保護犬っていうのがいるんだと知って、迎えるなら子犬がいいなあと、毎日インターネットで動物保護団体や保健所などの保護犬情報を検索していたんです。あるとき、同じ県内の保護団体が子犬4匹の写真を上げているのを見て、すぐに電話で問い合わせました」と、あのママさんは話します。

動物保護団体に問い合わせるきっかけになった写真。右上があの(あのママさん提供)

 そのとき写真に写っていたのは、黒い子が2匹、クリーム色の子が1匹、そして焦茶色の子が1匹の、計4匹。オス2匹、メス2匹がいるとのことで、「男の子がいい」という希望だけ伝えていました。その後、コロナ禍の影響で飛行機が遅れていて熊本からなかなか輸送されてこないなどのトラブルを経て、再び保護団体から「家族全員で会いに来てください」と連絡がきたそう。

家に連れて帰った日。好奇心旺盛な子犬そのものだった(あのママさん提供)

「とにかく早く会いたかったので、平日に会社の休みを取って、すぐに家族で会いに行きました。『この子です』と連れてこられたのが、生後2カ月のあの。実は最初に4匹の写真を見たとき、あののことは全然眼中になかったんです(笑)。でも、実際に会ったら、小さくて可愛くて……。『ぜひよろしくお願いします』ということで、面談後、連れて帰りました」

 あのママさん夫妻にとって、念願の子犬。すぐにインスタグラムのアカウントを開設し、成長記録として、迎えた日から毎日1投稿を始めました

 洋犬の血が入っているのか、あのが手のかからない育てやすい子だったことに加えて、あのママさんが育犬に慣れていたこともあり、あのと一緒に暮らし始めて困ったことはほとんどないと言います。動物保護団体のほうでトイレトレーニングもしてくれていて、生後2カ月にして、家に迎えたときにはトイレシートでの排泄(はいせつ)もできていました。

子犬時代。抱っこされたままオネム(あのママさん提供)

「いきなり母犬やきょうだいと離れて暮らすことになるので、最初は夜鳴きするだろうなと思っていたんですが、3日ぐらいで治まって、思ったより早かったなと。唯一困ったのは、甘噛みがひどかったことと、賃貸住宅なのに壁紙や巾木(はばき)をガリガリかじっちゃったことぐらいですかね」

 それどころか、家に迎えて1週間後にはオスワリを覚え始めるという天才ぶり。特にドッグトレーナーなどプロに習ったこともないそうですが、現在はオスワリやフセ、オテといった基本的なものから、バーン、チュー、ハグなどレベル高めのものまで、合わせて15〜16種類の一芸ができます。インスタグラムに投稿された、あのに一芸を教える動画からは、あのママさん夫妻もあのも、コミュニケーションとして楽しんでいることが伝わります。

いろんな芸を次々覚える、頭のいいあの(あのママさん提供)

「『ハグ』という芸を覚えたばかりのときに、夫が『ハグして』と言っているのに、あのが一生懸命『チュー』を何回もしていたことがあって(笑)。その動画をインスタグラムに投稿したら、たくさんの方に見ていただいたみたいで、フォロワーさんが一気に何百人も増えてビックリしました」

 インスタグラムに1日1投稿を続けているのは、成長日記として残すことに加えて、もう一つ目的がありました。あのが家に来て2カ月後、生後4カ月のときに海外へ行ってしまった犬好きの弟さんに、あのの成長する姿を見てもらうことです。

2年ぶりに再会した弟さんと(あのママさん提供)

「弟は2年後に帰国しました。あのと会っていたのって最初の2カ月間だけで、それも毎日じゃなかったので、絶対覚えてないよなと思いつつ、試してみようという話になって。家で再会すると状況でわかってしまうかもしれないから、わざと道端ですれ違ったんです。そうしたら、あのが『え、この人知ってる?』みたいな感じで弟に寄って行って、ちゃんと覚えてたんです。そのとき、犬の記憶力って本当にすごいなと思いました。でも弟は、すごく大きくなったあのが不審そうに近づいてきたから、噛まれたらどうしようと怖くてビクビクしてたみたいです(笑)」

あどけない笑顔が印象的(あのママさん提供)

 あのを迎えた日から始めたインスタグラムの1日1投稿も、もう3年半以上継続。投稿数は1350を超えました。できるだけその日に撮った写真を上げることにしているそうで、見返すとあのの日々の成長や変化がよくわかります。

「もはややめどきがわからなくなっちゃって、半分意地みたいになって続けています(笑)。ネタがなくて何を投稿しようかと頭を悩ませたり、夜になってただあのの寝顔を急いでアップするだけの日もあったり……。それでも、あのが年をとったときに投稿を見返す日のことを想像しながら、それをモチベーションに続けていこうかなと思っています」

(次回は3月22日公開予定です)

【前の回】段ボールで捨てられていた雑種犬「Danbow」 いまや歩く保護活動啓発犬に!

山賀沙耶
フリーランス編集ライター。北海道大学文学部卒業後、編集プロダクション、出版社勤務を経て、独立。現在は雑誌や書籍、ウェブメディアを中心に、犬やアウトドアなど幅広い分野で活動中。犬メディアとのかかわりは、約20年前の編集プロダクション時代から。プライベートでは、2頭の雑種犬と外遊びを楽しむのが至福の時。

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この連載について
雑種犬図鑑
見た目も性格も個性豊かな雑種犬の魅力を、犬種図鑑のパロディで紹介。毎回1匹の雑種犬にフォーカスし、チャームポイントから生い立ち、暮らしのエピソードまで情報や魅力をふんだんに伝えていきます。
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