クロネコマークの原案を発見 社員の6歳娘が描く ヤマト運輸
宅配便最大手・ヤマト運輸のトラックに描かれた「クロネコマーク」。黒い親猫が口に子猫をくわえた姿でおなじみだが、実は59年前にデザインを担当した社員の長女(当時6)の絵をヒントにして生まれたものだ。この絵の実物が、同社の倉庫でみつかった。
「突然出てきて、びっくりしました」
ヤマト運輸を傘下に持つ、ヤマトホールディングスの白鳥美紀・100周年記念事業シニアマネージャー(57)が振り返る。
同社は2019年に100周年を迎える。これを記念した社史などをつくるため、昨年2月、群馬県内の倉庫にあった古い段ボール箱を運び出した。中から見つかったのが、幼い筆致の猫の絵がクレヨンで描かれた、A4サイズの画用紙だ。
実は社内では、クロネコマークは社員の子どもが描いた絵をヒントにして生まれたという事実はすでに知られている。31年前の社内報でも「原案」として紹介されている。ただ、その絵が残っているとは思われていなかった。白鳥さんは「まさか実物が残っているなんて、聞いたことがなかった」。
段ボール箱の中身は、約30年前に社史をつくったときに集めた大量の資料。以来、倉庫にしまったままにされていた。
画用紙には、表にも裏にも猫の絵が描かれている。一方の面は、親猫の足元に2匹の子猫が寄り添ったもの。31年前の社内報で紹介された「原案」もこれだ。
反対の面には一見すると親猫だけが描かれているようにみえる。ただ、よく見てみると、親猫の口元に黄色いクレヨンで1匹の子猫がいる。クロネコマークにより近いもの。白鳥さんも「こちらの絵も参考にしたのではないかと思います」と推測する。
マークは1957年6月に生まれた。当時、業務提携した米国の運送会社のマークが元になっている。母猫が子猫をやさしくくわえて運んでいるもので、創業者が「運送業者の心構えを適切に表現している」と共感した。ただ、写実的な洋風の猫だったため、日本人が親しみやすい猫のマークをつくることにした。
当時広報担当だった清水武さんがデザインを考えたものの、なかなかいい案が浮かばない。そんなときにヒントになったのが、長女が画用紙に描いていた絵だった。清水さんは「猫の耳のとがった描き方などを参考にした」と語っていたという。
清水さんはクロネコマークが誕生した9年後、在職中に急逝した。「マークが完成した後も、清水さんはお子さんの絵を会社の机のなかに大切にしまっていた」と元同僚は振り返る。
白鳥さんは「このマークを見ればヤマトグループだと分かってもらえる、シンボルとしてかけがえのない存在です」と話す。グループでは創業100周年に向け、ゆかりの品を集めた史料館の設置を検討している。クレヨンで画用紙に描かれた猫たちも、ここに飾られるかもしれない。
(信原一貴)
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