動物実験の結果で「人に有効」と誤認させるのは不当表示に該当

 食品や、いわゆる健康食品の宣伝の中で動物実験のデータを使うこと自体は法律に抵触しません。しかし、動物実験の結果はあくまで動物での結果です。人間で効果があるかどうかは、人間のデータで立証されている必要があります。


 そのことを消費者に認識させず、動物でのデータが、まるで「人間で効果あり」という結論に結びついているかのように誤認させるような表記が使われている場合は、景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)上の不当表示に該当する可能性があります(不実証広告規制:同法第7条2第2項)。


 このことの背景になる考え方は、平成15年に公正取引委員会が出した「不当景品類及び不当表示防止法第7条第二項の運用指針 ―不実証広告規制に関する指針―」の中で示されており、問題のある事例については通報することも可能です。

 

 

■新たに不当表示事例として政府文書の中で明言!

 また、平成25年にも消費者庁から「いわゆる健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」という文書が出ており、このことの根拠となる基本的な考え方は示されていました。


 しかしこれまで、人間で効果があるとうたっているのに事業者が動物実験のデータしか持っていなければ合理的根拠があるとは言えず、国からの措置命令の対象となるということについて、実例としては明文化されていませんでした。


 今年、上記留意事項は改訂される予定で、5月20日までパブリックコメントが行われている新文書「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」の中には、具体的にこのことが書き込まれています。


 パブリックコメント終了後、早ければ6月中にもこの文書が公式に発出されますので、動物実験のデータしかないのに人間で効果ありと断定的にうたうことは問題だということが、今後より一層明確になります。

 

 

■問題事例を見つけたらぜひ通報を

 消費者庁のウェブサイトに、「申出・問合せ窓口」のページがあり、その中の「景品表示法に関する情報提供」とある連絡先が、不当表示に関する通報窓口になります。メールで送信することができます。


 ただし、通報をしても、不当表示に該当するかどうかは個別具体的に行政機関が判断しますから、必ず措置命令が出るというわけではありません。


 しかし、動物実験はもっともらしい広告を打つためにも行われており、消費者が「動物のデータだけでは信用しない」という態度を示すことは、無駄な実験を阻止するためにもとても重要なことだと思います。


 できればメーカーにもそのような意見を送ってください。


 今回、消費者庁がこの見解を明文化してくれたことは、とてもありがたいことだと感じています。多くの消費者が「マウスやラットで○○であった」と言われれば、人間でも同じだと思いこんでいるのが実情ではないかと感じるからです。


 動物とヒトの間には実は「種差」があり、人間での効果をうたうには人間での知見が必要だということが、もっと広く知られるようになってほしいと願っています。

この連載について
from 動物愛護団体
提携した動物愛護団体(JAVA、PEACE、日本動物福祉協会、ALIVE)からの寄稿を紹介する連載です。
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