地雷探知犬を育てる ―ボスニア・ヘルツェゴビナから

©大塚敦子
©大塚敦子

 写真家の大塚敦子さんは、国内外で、人間を支え、ともに生きる犬猫たちの取材を続けています。盲導犬や災害救助犬のような働く犬だけでなく、病院で高齢者や子どもを癒やすセラピーアニマルなども写してきました。そうした人を助ける犬猫たちを、これから1年にわたり、大塚さんに毎月、紹介してもらいます。

 

(文末にフォトギャラリーがあります)

 

 盲導犬、介助犬、災害救助犬、麻薬探知犬など、私たちの社会には、人間のために働いてくれる犬がたくさん活躍している。そのなかでも、とくに大変な仕事をしてくれるのが「地雷探知犬」。地下に埋められ、人間の目ではなかなか見つけることのできない地雷を鋭い嗅覚(きゅうかく)で探し出してくれる犬たちだ。彼らが懸命に働く姿を見ていると、地雷を埋めるという人間の行為の愚かさが、ひしひしと胸に迫ってくる。

 

 私が初めて実際に地雷探知犬が働くところを見たのは、2005年。ボスニア・へルツェゴビナの平和構築を取材していたときのことだ。90年代に大きな戦争があったボスニアでは、地雷は戦後復興の大きな妨げとなっている。いまも国中で地雷除去作業がおこなわれているが、その現場のあちこちで地雷探知犬が活躍していた。

 

 ボスニアには、ノルウェーの国際援助団体ノーウェジアン・ピープルズ・エイドが運営する地雷探知犬の訓練センターがある。ここで訓練されている犬種は主にマリノア(ベルジアン・シェパード)。日本でもおなじみのジャーマン・シェパードよりひとまわり小さく、毛も短い。訓練センターでは、地雷探知犬候補の子犬たちを繁殖し、幼いころからていねいに育てる。

 

 子犬たちは、パピートレーナーたちからたくさんの愛情を受け、人との絆を育んでいく。また、タオルを嚙んで引っぱったり、振りまわしたりなど、もともと持っている狩猟本能を刺激するための遊びをとおして、獲物の匂いを嗅いで追う、という狩猟行動を強化していく。

 

人との絆を育む ©大塚敦子
人との絆を育む ©大塚敦子

 地雷探知犬になるのは、何よりも、その仕事が好きで、それに向いている犬でなければならない。匂いを嗅いでものを探すのが得意なマリノアのような犬にとって、地雷探知は楽しいゲームのようなもの。仕事を選ぶ際に適性が大事なのは、犬も人間も同じだ。

 

 犬によっても違うが、訓練センターで過ごすのはだいたい1年半ぐらい。訓練を終えると、カンボジア、エチオピア、コンゴ、ヨルダンなど、地雷の被害に苦しんでいる国に送られ、2カ月ほど現地で仕上げの訓練を受けた後、地雷原に出ていくことになる。

 

 そして現場で活躍するのだが--この様子については、また来月。

 

◇この連載は、毎月末に掲載予定です。

 

 

関連書籍、大塚さんのHPはこちら

大塚敦子
フォトジャーナリスト、写真絵本・ノンフィクション作家。 上智大学文学部英文学学科卒業。紛争地取材を経て、死と向きあう人びとの生き方、人がよりよく生きることを助ける動物たちについて執筆。近著に「〈刑務所〉で盲導犬を育てる」「犬が来る病院 命に向き合う子どもたちが教えてくれたこと」「いつか帰りたい ぼくのふるさと 福島第一原発20キロ圏内から来たねこ」「ギヴ・ミー・ア・チャンス 犬と少年の再出発」など。

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この特集について
人と生きる動物たち
セラピーアニマルや動物介在教育の現場などを取材するフォトジャーナリスト・大塚敦子さんが、人と生きる犬や猫の姿を描きます。
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