ペットの避難・保護に備え 静岡県内でも仕組みづくり

災害時にペットと一緒に避難したり、迷子になったペットを保護したりするための仕組みづくりが静岡県内の自治体でも進んでいる。東日本大震災でペットと別れた被災者の心理的な落ち込みや、ペットの餓死や野生化を招いたことが背景にあるという。一方、トラブルを防ぐためのルールづくりなど課題も残っている。
静岡県駿東郡清水町で8月末、住民がペットと一緒に避難することを想定した防災訓練があった。
訓練は、大規模地震が発生して地元の小学校が避難所になったと想定。慣れない環境にとまどう犬をしつけインストラクターがケージに入れて落ち着かせる訓練や、獣医師による模擬検診などが行われた。猫を飼っているという主婦鍵山雅子さん(58)は「東日本大震災の映像を見て、ひとごとではないと思い、参加を決めた」。
講師を務めたしつけインストラクター志賀佳恵さん(46)は、飼い主が日頃からペットをケージに慣れさせておくことが大切だと強調。「避難所に連れて行った後もペットをケージに入れて布をかけておけば、いつもと違う環境でも安心します」と話す。
静岡県三島市は昨春、すべての避難所にペット専用の避難スペースを設けることを決めた。避難所となる小中学校の校庭に仮設トイレや浴場、物干し場などと並んで「ペット飼育スペース」を設ける。校舎や体育館など市民の避難スペースから少し離れた位置にする。避難してきたペットを登録する「ペット飼育者台帳」も用意し、名前や所有者を登録するという。
三島市は昨年10月、静岡県獣医師会田方支部と災害時のための協定を結んだ。ペット専用の救護所を作り、獣医師が避難所を巡回するなど、災害時でもペットのケアができるようになった。
富士市は、災害時に市内4カ所の空き地などを利用し、犬や猫を収容する「被災動物救護センター」を設けることを決めた。飼い主が不明になったり、自宅で飼育できなくなったりした犬などを収容する。飼い主が分かれば引き渡し、もしも飼い主が死亡するなどした場合には、第三者に譲渡できるしくみだ。
静岡県衛生課によると、ペットとの「同行避難」を防災計画に組み込んだ自治体は8月末時点で県内35市町のうち31市町に上る。このうち実際に避難所にペット用スペースを設けるのは17市町。東日本大震災では、多くの被災者がペットを残したまま避難せざるを得ず、ペットの餓死や野生化が問題になった。また、ペットといきなり離ればなれになった飼い主が心理面で落ち込む悪影響も大きかった。被災者の心のケアのためにも同行避難は広まりつつあるという。
静岡県は、飼い犬や飼い猫の体に埋め込むマイクロチップの活用もPRしている。チップには飼い主などのデータが記録され、避難の際に離ればなれになっても、飼い主が見つけやすくなるという。
沼津市在住の防災インストラクター渡辺和子さん(69)は東日本大震災の直後、ボランティア活動で被災地に入った。現場で驚いたのは、飼い主と一緒に命を落とした犬や猫の多さだったという。渡辺さんはこのときの経験から「災害時には、まず動物を放してしまうのも選択肢の一つ。動物だけでも生き残る可能性が高まるからだ」と訴え、マイクロチップの普及を呼び掛ける。
同行避難の際の細かいルールづくりはこれからだ。例えば、爬虫(はちゅう)類など特殊なペットを避難所に持ち込めるかどうか、ペットスペースの清掃は誰が担当するかなど。「避難所の情報などをいかに飼い主に周知するかも今後の課題だ」(静岡県衛生課)という。(森岡みづほ)

災害に備え、飼い主が備えておくべきもの(静岡県動物保護協会のパンフレットから
◇1週間分のえさと水、食器
災害時は人間の食べ物が優先される。長期保存できるものを用意しておくとよい。
◇療養食、薬
避難生活はペットにもストレスがかかり、免疫力が低下し病気を発症しやすくなる。
◇ケージやキャリーバッグ
避難所で他人や他のペットの迷惑にならないよう、日頃からケージに慣れさせておく。
◇飼い主とペットが写った写真、健康メモ
離ればなれになったときに役立つ。かかりつけの動物病院などの情報も役立つ。
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