「今夜は家に帰れない!」 そんな時、愛犬の世話は誰に頼む?
「お正月休みに旅行の予定を立てている」「急用で帰省することになった」など、なんらかの理由で家族全員が家を空けなければならないことがあります。そんな時、犬を飼っている人はどうするのでしょうか。ペットホテルやペットシッターは、そんな犬と飼い主のためのサービスです。(ライター 福田優美)
1匹の犬が、健康で充実した一生をおくるためには、どのくらいの費用がかかるのか?シーンごとに犬の飼育にかかわる費用について解説するこのシリーズの第5回は、「ペットホテル、ペットシッター」についてです。
犬を飼い始めると、それまでのように気ままに動くことは難しくなります。旅行や出張、その他どんな理由でも、誰もいない家に犬を置いたまま留守をすることはできません。そこで世話になるのが、ペットホテルやペットシッターです。どんなサービスなのか。価格はいくらくらいなのか。詳しく見てみましょう。
①ペットホテル
なんらかの理由で家を留守にする場合、誰かに飼い犬の世話をお願いする必要があります。
家族の誰かが面倒を見てくれるという時は大丈夫ですが、問題は家族全員で出かける時、それも海外旅行など犬を連れていけないような場合はどうすればいいのでしょうか。ましてや、一人暮らしで犬を飼っている人はもっと大変です。外泊の度に愛犬を預けられる人を探さなければならないからです。
そこで飼い主にとって大きな助けとなるのが「ペットホテル」です。ペットホテルとは、その名の通り、犬や猫が滞在するためのホテルです。
ペットホテルはたいてい、一時預かりと宿泊の二つのパターンで料金設定しています。一時預かりは、買い物や美容室に行く間や、何かしらの行事に参加する間の数時間だけ預けたい場合などに利用します。1時間ごとの料金設定もあれば、営業時間内なら何時間でも当日預かり、というかたちで預かってくれるホテルもあります。
宿泊は1泊2日での料金を基本とし、連泊すると割安になるところが多いようです。
ペットホテルの部屋には、主に二つのタイプがあります。室内にケージを並べてその中に1頭ずつ滞在させる「ケージ型」と、1室に1頭が滞在する「個室型」です。多頭飼育の場合は、同室に2頭以上を一緒に預けることができるホテルもあります。2頭以上でも、1頭分の価格にプラス1000円程度で預けられるところから、きっちり2頭分を請求されるところまであり、ホテルにより価格差は大きいと言えるでしょう。
ペットが家族の一員となった今、ペットホテルは単純に寝床を提供するためだけの場所ではありません。多くのペットホテルでは、趣向を凝らしたサービスを提供しています。たとえば、滞在中の朝夕の散歩、プレールームでほかの犬たちと遊ばせるなどは一般的なサービスになりつつあります。
ほかにも、滞在中の犬がどんな様子だったかを細かく記した「写真付き日記」、飼い主が離れたところから24時間愛犬を見守ることができるWebカメラ、夜間眠っているあいだもスタッフが犬のそばに常駐するといったサービスなどがあります。また、トリミングサロンやしつけ教室と併設しているホテルも多く、滞在中に愛犬をきれいに、しつけてもらう、というところもあります。
このように便利なペットホテルですが、どんな犬でも預けられるわけではありません。ほとんどのペットホテルでは、ワクチン接種をしていない犬は受け付けていません。初めて利用するホテルでは、狂犬病予防注射と混合ワクチンの接種証明書の提出を求められることが多いでしょう。万が一の事故防止のため、4カ月以下の子犬や10歳以上のシニア犬、それに体の弱い犬はお断り、というホテルも多いようです。
肝心の価格についてですが、広くてサービスの行き届いたホテルが高いのは、人間も犬もまったく同じ。お正月やお盆、大型連休などは通常よりさらに価格が上がることも珍しくありません。ハイシーズンに旅行をするとなると、ご自分の旅費以外にペットホテル代を予算に組み込む必要が出てきます。そういった時期は、ペットホテルにも予約が殺到するのは言うまでもありません。
ちなみに、今回調査したペットホテル50件のうち、最高価格は1万9440円(小型犬)、最低価格は1900円(小型犬)と10倍以上の差がありました。動物病院やトリミングサロン同様、定期的に通うことになるかもしれないペットホテル。愛犬が落ち着き、かつ、ご予算に見合う一軒を知っておくのは、飼い主にとっても安心につながるでしょう。
②ペットシッター
「ペットシッター」は、飼い主の留守中、犬の世話をしに自宅に来てくれるサービス(人)のことです。
欧米でよく利用されている、自宅に子守に来てもらうベビーシッターのペット版と考えれば、わかりやすいですね。不慣れな環境のペットホテルではストレスを抱えがちな犬や、ホテルまで預けに行くより自宅まで来てもらうほうが便利という飼い主には、こちらが向いていると言えるでしょう。
ペットシッターが具体的に行うサービスは、業者やメニューによって異なります。実際に犬の世話を頼む前に、飼い主は犬の性格やクセなどをペットシッターに伝えるとともに、依頼したい内容を打ち合わせます。基本的なメニューは、留守中の朝夕2度のエサやりと30分程度の散歩といったものが多いですが、ほかにも、犬のトイレ掃除やブラッシングまで頼める業者や、簡単な家事(配達物の受け取りなど)まで請け負うところもあります。
多忙な飼い主の中には、外泊の予定がなくても、平日日中の散歩をペットシッターに依頼する人も増えているようです。
「ペットシッター」は国家資格ではありません。一定の基準をクリアし環境省が定める動物取扱業者として登録申請をした人なら、誰でもなることができます。民間のペットシッター養成スクールの中には、カリキュラム終了時に動物取扱業者として申請できる認定証を発行する学校もあります。
日本ペットシッター協会が認定する「ペットシッター士」資格はその一つです。同協会の関川幸春さんによると、
「ペットシッターを利用する飼い主様には、ペットホテルを利用した際に犬猫の食欲が落ちた、体調を崩したなど、ペットがストレスを抱えたという経験をお持ちの方が多いです。ペットとシッターの相性を不安視する飼い主様も多いかもしれませんが、事前にしっかり話し合い、ご希望であれば前もって散歩に同行するなどして、シッターが犬の扱いに慣れているかどうかなどもご覧いただけます」
とは言え、最大の不安はやはり留守中に他人を家に上げること、という方も多いはず。トラブルは起きないのでしょうか。
「まずは信頼していただくことが必要になりますが、実際これまで大きなトラブルはありません。鍵を預ける、というのが最大の気がかりだとは思うのですが、そこをクリアされた方は、サービスにご満足していただいています」(関川)
不安な人はペットシッターの身元証明や、万が一トラブルがあった時の保険についてなど、気になることを事前に確認しておきましょう。信頼できるペットシッターを探すのは、犬のためだけでなく、飼い主のためにも重要です。
仕事でも旅行でも、家を空けることは誰にだって起こりえます。その時、「帰れなくても一晩くらい問題ない」「一食くらい抜いても大丈夫だろう」という考えでは、生き物を飼う責任を果たしているとは言えません。
犬は社会的な動物であり、ストレスを感じやすい生き物です。単純にエサや散歩が抜けるという理由からではなく、誰もいない家に長時間放置することは残酷です。
ペットホテルやペットシッターは、あくまでも飼い主の代理であり、犬にとって心から落ち着く場所や人ではありません。外泊をしない、または、旅行に行くなら犬も泊まれるホテルを選ぶというのが理想ですが、それが難しい場合は、少しでも犬と相性がいいホテルやシッターに世話を頼みたいところです。頻繁に利用する場所や人であればあるほど、愛犬の居心地の良さを考えてあげましょう。
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