大型犬なら一生に100万円かかることも 犬のえさ代

 犬を飼い始めれば、一生つきまとうのが、えさ代。いつ、どんなえさを与えればいいのか――。その選択は犬にとっても飼い主にとっても、大きな意味を持つ。トータルすればかなりの金額になる、犬のえさ代を検討してみよう。(ライター 福田優美)



 一匹の犬が、健康で充実した一生をおくるためには、どのくらいの費用がかかるのか?シーンごとに犬の飼育にかかわる費用について解説するこのシリーズ、第2回は「えさ代」についてです。

 えさ代は、犬が健康で動物病院とはあまり縁がない生涯をおくった場合、絶対にかかる費用の中で最も大きな出費になる可能性があります。一口にえさ代と言っても、与えるドッグフードの種類やランク、小型犬なのか大型犬なのか……などの条件次第で、かなりの差が生じます。また、室内飼いか外飼いか、散歩の頻度や距離、不妊手術を実施したかどうかなど、飼育環境や運動量の違いによっても、与えるべき食事と量は異なってきます。

 なにより、犬は生き物なので個体差が大きいもの。体質、好き嫌い、小食か大食かなどの理由で、食費は大きく変動します。市販のドッグフードについて少し勉強しながら、犬の一生のえさ代がいくらくらいかかるのか、考えてみましょう。

①種類

 かつては、犬に残飯を与える人がたくさんいましたが、今では犬のえさといえば、ドッグフードが主流です。封を開けるとそのまますぐにあげられるという利便性から、これほど普及したのでしょう。ペットフード協会によると、ドッグフードは大きく「ドライ」「ソフトドライ(及びセミモイスト)」「ウェット」の三つにわけられるそうです。

 三種類それぞれの長所と短所を比べてみましょう。

 まずはドライ。ドライは、水分含有率が10%程度以下の小さな粒状のもの。人によっては、「カリカリ」などと呼ぶものです。

 経済的で栄養価が高く、長期保存が可能なことから、ペットフード協会の2014年の調査によると、7割以上の飼い主がこれを与えています。

 次にソフトドライ。通称「半なま」。ちょうど、ドライとウェットの中間にあたるものです。原料や形状はドライと似ていますが、こちらの方が食感が柔らかく、犬が好む香りや味が付いているので、食欲がない時や固いものを食べられない時に使うことができます。

 ただし、カビが生えやすいという理由から、防腐剤や湿潤調整剤を使用していることが多いので、与えすぎは禁物。セミモイストは製造工程が少し違いますが、内容は似ていると考えていいでしょう。どちらも水分含有率は25~35%程度です。

 最後にウェットですが、これは原料が家畜肉なので、犬が最もおいしく感じるものです。水分含有率はおよそ75%程度以上で、缶やパウチに詰められていることが多いです。

 価格が高い、栄養価が偏る、開封後は日持ちしないなどいくつか難点はありますが、犬にとってはごちそう。食欲がない時や、特別な日に与えるのもいいかもしれません。

 なお、それぞれのペットフードの製造法は『ペットフードの開発』(シーエムシー出版)が詳しく解説しています。

 さて、ではそれぞれの費用はどうなのか――。一般的にドライフードが最も安く、ソフトドライ(セミモイスト)、ウェットの順に高くなります。しかし、これはあくまでも一般的な相場。中には、ウェットの相場よりも圧倒的に高額なドライフードもあります。

※3種とも、それぞれ同品種内シェア1位の商品で算出。ドライ:日本ヒルズ・コルゲート(27・7%)、セミモイスト:ユニ・チャーム(55・3%)、ウェット:マース ジャパン(48・9%)。シェアは『ペットビジネスハンドブック2015』(産経メディックス)を参照
※セミモイストは子犬用が販売されていないため、子犬時から成犬用の体重を参照にした
※ウェットは、他のものと混ぜず、これだけを与えると仮定し計算した

②ランク

 市販のドッグフードは、スタンダード(レギュラー、エコノミーと呼ばれることも)とプレミアムの二つのランクに分けることができます。ペットフード業界では両者を明確に区別しているわけではありませんが、『ペットフード・ペットビジネスの動向』(シーエムシー出版)では、市場でのプレミアムフードの定義は①高価格、②良質な原料を使用、③健康志向を訴求、④ライフステージごとの商品ラインナップを有するもの、であるとしています。

 同書では、大手ドッグフードメーカー数社の価格差を調べ、スタンダードとプレミアムの価格差を1・6~4倍と指摘していますが、出版から8年が経った現在では、スタンダードの価格が1キロあたり100~数百円なのに対して、プレミアムが1キロあたり1000~1500円前後と、その差は広がっています。

 つぎに原料について見てみましょう。スタンダードは、主にトウモロコシや小麦粉などの穀類を多く使用しています。対してプレミアムは、チキンやラムなどの肉類を多く含んでいます。スタンダードにも肉は入っていますが、プレミアムに比べると、質量ともに劣ります。そのほか、プレミアムは「無添加」「無着色」など、健康志向をうたうのが特徴的です。

 前出の『ペットフードの開発』では、スタンダードがスーパーやホームセンター、コンビニなどで販売されているのに対し、プレミアムは動物病院や専門店など販路が限られていると指摘しています。しかし、需要の高まりとともに、プレミアムを販売する小売店は増加傾向にあります。ペットショップの店頭などをよく見てみると、スタンダードとの違いをきわ立たせるため、プレミアムは「付加価値がある商品」であると強調して売られていることに気づくと思います。

 最近ではペットの健康に関心が高まっていることから、人間が食べられるというレベルの食材を使い、酸化防止剤などを使用せず、手間をかけた製造法で作られたフードも出ています。こうした商品の中には、1キロあたり3000円以上するものもあります。『ペットフードで健康になる』(光人社)では、このようなフードを「スーパー・フード」と呼び、具体的な原料や製造法について紹介しています。

A社:愛犬元気(ユニ・チャーム社)
B社:アイムス(マース ジャパン社)
C社:ヒルズサイエンス・ダイエット(日本ヒルズ・コルゲート)
D社:ロイヤルカナン(ロイヤルカナン ジャポン)

③ライフステージ

 ドッグフードメーカーの中には、ライフステージごとに異なる商品をラインナップする企業があります。人間と同じように犬にも、授乳期、子犬期、成犬期、高齢期といったライフステージがあり、それぞれの時期に必要な栄養素とカロリーが違うからです。

 授乳期は母乳で育てるのが最善ですが、なんらかの理由でそれがかなわない場合、犬用のミルクを与えます。ただし、家庭で子犬を迎える場合、ほとんどは授乳期を終えているはずなので、子犬用のドッグフードから与えることになるでしょう。

 子犬は成犬と比べ、約2倍のカロリーを必要とします。しかし、子犬の胃腸は成犬の2倍の量を食べるには小さすぎる。というわけで市販の子犬用フードは、成犬用に比べてあらかじめ高カロリーになっています。『愛犬の食事百科』(誠文堂新光社)では、子犬の成長に必要なカロリーや栄養素、えさやり方法などが掲載されているので、参考にしてみましょう。

 成犬期になると、流通するフードの種類が多くなります。成犬期はライフステージの中で最も長いものです。『ペットフードの開発』によれば、この時期は肥満になることが多いので、カロリーを抑えたフードもたくさん出ているようです。肥満は、なった後に体重を戻すよりも、なる前に予防するほうが楽だということは、犬も人間も同じです。この時期に十分気をつけましょう。

 老犬になると、次第に必要なカロリーと消化能力が落ちるため、各メーカーはかみ砕きやすい形や、ふやかしやすいフードを出しています。

 ライフステージごとのフードの価格差メーカーによって異なりますが、一般的にカロリー調整をしている子犬用と老犬用は、成犬用に比べ少し高く設定していることが多いようです。この期間のフードは、小分けにされて販売されていることも、価格高の要因といえるでしょう。ただし、成長中の犬はほかの期間よりも食べる量が多いので、その分エサ代がかかるケースもあります。

 また、全てのメーカーがライフステージごとの製品を設けているわけではありません。給餌量でカロリー調整をし、同じフードをずっと与え続ける飼い主もいます。愛犬が健康で食事を楽しんでいるようなら、無理にフードを変える必要はないでしょう。大切なのは、愛犬が喜んで食べるものを適量与えることです。

A社:愛犬元気(ユニ・チャーム社)
B社:アイムス(マース ジャパン社)
C社:ヒルズサイエンス・ダイエット(日本ヒルズ・コルゲート)
D社:ロイヤルカナン(ロイヤルカナン ジャポン)

④間食

 人間の場合、おなかがすいているわけではないけれど、何か口さびしいことってありますよね。そんな時はおやつ!という人も多いのではないでしょうか。勉強中や仕事中のおやつは、息抜きにもなります。犬にとっても、おやつタイムはうれしい一時です。

 犬のおやつ(スナック、トリーツ)の種類は豊富です。ビーフジャーキー、鶏ササミや豚耳などを乾燥させたもの、ビスケットやクッキー、牛皮を乾燥させた骨型ガム……などなど、本当にたくさんの種類があります。

 おやつは主食のドッグフードとは別に与えるものです。しつけやご褒美に与えることが多いのですが、食べすぎると肥満につながるので注意が必要です。ペットフード協会では、限度量は1日の必要カロリーの20%以内としています。

【1カ月の平均的なおやつ代】
1000円
※ペットフード協会による「平成26年 全国犬猫飼育実態調査」の中央値

⑤その他の目的食(特別療法食、栄養補完食、サプリメントなど)

 医食同源という言葉は、いまや犬にもあてはまるようです。ドッグフードの中には、単なる食事ではなく、特定の病気や栄養分の不足を補うものとして、栄養バランスが計算されたものがあります。

 肥満やアレルギー、関節疾患、皮膚疾患への対策用フード、消化をよくするオリゴ糖やビフィズス菌……など、目的も種類も多岐にわたります。

『愛犬の食事百科』によると、このようなフードは、薬と同じ目的で動物病院で処方される処方食と、健康増進や病気予防として使用される健康維持食という二つのタイプがあるようです。さらに、食事の代わりとして与えるものと、食事に混ぜて与えるものに分類できるとのこと。いずれの場合も、獣医師による指示とアドバイスに従って与えるようにしましょう。飼い主さんが勝手に与えていると、かえって栄養バランスが悪くなり、犬の健康を害する可能性があります。

 特別食は一般のドッグフードと比べ、割高に設定されていることが多いようです。その差はメーカーや処方目的によります。特別食のお世話にならないためにも、事前の健康管理が大切です!

A社:ロイヤルカナン サイズヘルスニュートリション、ロイヤルカナン犬用スキンサポートドライ(ロイヤルカナン ジャポン)
B社:サイエンスダイエットライト小粒肥満傾向の成犬用、ヒルズプリスクリプションダイエット犬用d/dドライサーモン&ポテト(日本ヒルズ・コルゲート)
※3歳を想定
※ ロイヤルカナン サイズヘルスニュートリションの給餌量は、「運動しない」「運動が少ない」と想定し算出
※ ヒルズプリスクリプションダイエット犬用d/dドライサーモン&ポテトは給餌量を明示していないので、ロイヤルカナン ジャポンの犬用スキンサポートドライの給餌量を参照にした

 以上が飼い主が知っておくべき、市販のペットフードに関する知識です。高価なフード=良質というわけではありませんが、愛犬の健康を考える上で何を与えるかは重要な問題です。

 最近では、手作り食に関する本が出版されていたり、犬の食事の作り方教室などに人気が集まったりしています。手作り食となると、食費は人間並みかそれ以上と考えた方が無難かもしれません。

 いずれにせよ、犬にとって食事は最大の楽しみのひとつです。食いつきが悪かったり残したりするようでしたら、フードを変えたり、混ぜ合わたりするなど工夫してみるといいでしょう。

 飼い主にとっても、犬が元気に食事をする姿を見るのはうれしいものです。犬が食事を楽しめるように体質や好みに合ったものを、適量与えてあげましょう。最後に、犬の一生にかかるえさ代をシミュレーションしてみましたので、参考にしてみてください。

A社:愛犬元気(ユニ・チャーム社)
B社:アイムス(マースジャパン社)
C社:ヒルズサイエンスダイエット(日本ヒルズ・コルゲート)
D社:ロイヤルカナン(ロイヤルカナンジャポン)
※各社ドライフードで試算。尚おやつ代を含まない、特別食は与えないと想定
※価格は爽快ペットストア、You遊ペットライフのネット販売価格を参照

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sippo編集部が独自取材した記事など、オリジナルの記事です。

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