飼う前に考えよう「お金の話」 初期費用で最大14万円

人間と同じように、犬の一生にも様々なお金がかかります。1匹の犬を、家族の一員として最期まで大切に飼おうとすると、いったいどのくらいの費用がかかるのか――。これから犬を飼いたいと思っている人はもちろん、いままさに犬を飼っている人も改めて知っておくべき「お金の話」について考えてみましょう。(ライター 福田優美)



 犬の平気寿命は14・17歳(2014年、ペットフード協会調べ)。人間で言えば、生まれたばかりの子どもが、中学3年生になるまでの時間を犬は生きます。そしてこの時間のなかで、人間の5~7倍の早さで歳をとっていくのです。

 

 その14年前後の生涯を健康で充実したものにするためには、もろもろの費用がかかります。経済的な理由で飼育が困難になったり、十分な面倒を見られなくなったりするようなことがあれば、犬にとっても飼い主にとっても不幸です。そのようなことがないよう、前もって犬にかかる様々な費用を把握しておくことは、飼い主の責任の一つと言えます。

 今回はまず、子犬を迎えてからかかる初期費用について考えてみました。獣医療は自由診療なので費用は動物病院によって幅がありますが、アエラムック「動物病院 上手な選び方」を参考に試算しています。どういうルートで子犬を迎えるにしろ、心とお財布の準備をしておきましょう!


絶対にかかる費用は――
約6650円(東京都の場合)

①狂犬病予防注射

 はじめて子犬を迎える人は、動物病院に行く回数に驚くかもしれません。特に初年度は、病気やけがをしていなくても、予防注射などで何かと通院する機会が多いもの。その一つが「狂犬病予防注射」です。

 

 狂犬病予防注射は年に1回、毎年接種させることが義務づけられています(狂犬病予防法第5条)。初回は、犬が生後91日以上であれば飼い始めてから30日以内に、生後91日未満であれば91日目以降に受けさせます。

 狂犬病は犬だけでなく、人間を含む全ての哺乳類に感染します。人も犬も、感染し、発症すればほぼ100%が死に至る怖い病気です。日本では1956年を最後に国内感染の事例はありませんが、世界では現在も毎年数万人の死者を出しているほどです。

 東京都内の各基礎自治が行う集団注射の場合、費用は3100円。動物病院で行う場合は、注射の費用のほかに初診料や診察料がかかる場合があります。

②畜犬登録

 つぎに行うのが、畜犬登録。こちらもまた、飼い始めてから30日以内に居住地域の役所で手続きをすることが、定められています(同法第4条)。費用は東京都の場合3000円。登録の証明として「鑑札」が交付されます。登録と鑑札の交付は生涯一度きりですが、引っ越しなどで居住地が変わる場合は、転入先の役所で新しい鑑札と無料で交換してもらいましょう。

 鑑札のデザインは、シンプルなものから犬型や犬がイラストされたもの、肉球型、骨の形など色々あるので、見比べるのも楽しいものです。

 登録のとき、狂犬病予防注射を行った証明書を提出すると、「狂犬病予防注射接種済票」が交付されます。こちらの費用は550円。注射と同じで、証明書の提出も毎年行うことが義務づけられています。犬が生後91日未満でまだ注射を受けさせられない場合は、畜犬登録を先に行い、注射後、改めて狂犬病予防注射接種済票をもらいに行きましょう。

「鑑札」と「狂犬病予防注射接種済票」の二つは、狂犬病予防注射接種の証明になるので、必ず犬の首輪につけておくこと。違反すれば「罰金20万円以下」の対象になるので、要注意(同法第27条)。

かけたほうがいい費用は――
小型犬:約6万4000円、中型犬:約9万1000円、大型犬:約11万6000円

③混合ワクチン

 ここまでは法律にのっとったもので、出費もそれほど大きくありません。問題はここから。犬への愛情が日に日に増す一方、お金はどんどん出ていく……。お金以上に世話やしつけが大変だということに気がつくのもこの頃です。

 犬を飼いはじめた人が最初に悩むのが、混合ワクチンの問題です。ペットショップやブリーダーから入手した場合、すでに1度目のワクチンは接種済みということも少なくありません。しかし、万全を期すためには3回の接種を推奨する獣医師がほとんどです。

 いずれにせよ、そもそもワクチンを接種させるかどうか、また、何種のワクチンをいつ受けさせるかなど、全て飼い主が決めなければいけません。

 日本にはワクチンに関するガイドラインはなく、回数や時期、種類、費用などは獣医師によって判断がわかれます。たとえば、『もっともくわしい動物の薬の本』(学習研究所)では、初回の接種時期は生後6~10週齢ごろ、その後は1カ月おきに数回、それ以降は年1回接種するという方法が紹介されています。

 また、千葉県佐倉市にあるしらい動物病院の白井顕治獣医師は、
「初回はアレルギー反応が出る可能性があるため、6種混合ワクチンをすすめます。これは犬が健康に生きるために必須なコアワクチンと呼ばれるものです。2回目以降は子犬が12週齢未満であれば引き続き6種を、12週齢以上であれば6種か9種かで選べますが、当院では地理的・風土的な理由から9種をすすめています」と、話します。

 北里大学獣医学部教授の有原圭三氏が監修する『ペットフード・ペット用医薬品の最新動向』(シーエムシー出版)によると、市場に流通しているワクチンは2~11種。そのうち、アニコム損害保険が2009年に発表した「犬猫の混合ワクチンに関する調査」によれば、最多の40・6%は8種ワクチンです。温暖で河川や山林が近い地域ほど病原体が生息しやすいので、摂取するワクチンの数は増える傾向にあります。

 病気予防に関心の高い飼い主の間では、ワクチン接種率が高いと考えられます。犬と一緒に泊まれる宿泊施設やドッグランなどによっては、ワクチンを接種していなければ利用できないところもあります。ただ、あくまで任意医療なので、狂犬病予防注射と比べると費用は高めに設定されています。それに、病院ごとの差が大きいのも特徴です。接種させると決めたら回数や種類は、居住地域や環境、犬種、健康状態を考慮し、獣医師と相談しながら決めましょう。

④フィラリア予防

 ここまで済むと、ようやく愛犬と散歩に出ることができます。しかし、愛犬の健康のために飼い主が果たすべきことはまだまだあります。

 春から夏にかけて、多くの飼い主が検討するのが、フィラリア予防です。フィラリアは蚊が媒介する感染症。本州では、蚊が活動的になる5月から11月までを中心に7~9カ月間、毎月予防を行います。『ペットフード・ペット用医薬品の最新動向』によれば、フィラリア予防薬には経口薬(錠剤または顆粒)、チュアブル(おやつのように犬にとって嗜好性が高い)、スポット剤(首の後ろに滴下する)、注射の4種類があります。

 また前出のしらい動物病院では、「錠剤は経済的かつアレルギーの心配がないけど嫌がる犬がいる、チュアブルは食べさせやすいけどアレルギーの心配がある、という点があります。注射は年に1度の接種で同等の効果を得られるという点では便利ですが、体重変化が激しい子犬には適さないので、当院では初年度は注射を使用しません」(白井顕治獣医師)

 また同院での取り扱いはありませんが、スポットタイプには手軽だが費用が高いという点があげられます。選択肢の多さに加え、体重に比例して費用が上昇することもあり、フィラリア予防は初期にかかる医療費の中で最も費用の差が大きいといえるでしょう。

⑤ノミ・ダニ駆除

 フィラリア予防と同時期に行うのが、ノミ・ダニの駆除です。ノミ・ダニが増える4~12月の間は毎月1回、温暖な地域や一定の温度が保たれた室内飼いの場合は、通年行うことが推奨されています。

 フィラリア予防薬と同じく、ノミ・ダニ駆除薬も体重と費用が比例します。経口薬、シャンプー、スプレー、スポットなど、こちらもタイプが豊富。前出の『もっともくわしい動物の薬の本』には、わかりやすい図で駆除薬の種類と特徴が紹介されています。動物病院で行う以外にも、ペットショップやホームセンターで市販されている駆除薬を使う人も多いようです。使用する薬は、飼い犬に適したタイプ、あるいは、駆除・予防したい虫から選びましょう。

⑥不妊手術

 犬は人間の何倍ものスピードで成長します。半年も経てば、早くも子犬ならではの愛くるしさにかわり、成犬の賢さやたくましさが目立つようになります。その成長に従い、飼い主は不妊手術について考え始めなければなりません。

 手術はかわいそう、と感じる人もいるでしょう。でも、不用意な繁殖は「不幸な命」を増やすだけです。それに不妊手術はオス、メスともに生殖器系の病気のリスクを下げるというメリットがあります。しっかり考えた上で、犬と飼い主の両方にとって最善の選択をしたいところです。

 不妊手術は体重に関係なく、生後6~7カ月ごろが適切だといわれています。獣医学博士で小暮動物病院院長の小暮規夫氏が監修した『犬の病気がよくわかる本』(実業之日本社)によると、オスの手術では精巣を摘出し、メスの手術には卵巣だけを摘出する方法と、卵巣と子宮の両方を摘出する方法があります。いずれの場合も開腹が必要なため、オスよりもメスのほうが手術費は高いのが一般的。そのほか手術の方法や術前検査、入院の有無などにより費用は異なります。不妊手術も、体重に比例して費用が高くなる場合があります。

 動物愛護法では、犬の不妊手術は義務づけられていません。しかし、過剰な繁殖を防ぐために、環境省は「原則としてその家庭動物等について去勢手術、不妊手術、雌雄の分別飼育等その繁殖を制限するための措置を講じること」(家庭動物等の飼養及び保管に関する基準)としています。子犬が産まれたら自分の手でちゃんと育てられるのか。よく考えて、結論を出しましょう。

飼い主さんの判断次第でかかる費用は――
1万7000円以上

⑦グッズの購入

 ここまで主に初期費用として発生する医療費をみてきましたが、次に、子犬を家に迎える前に、あらかじめそろえておくべきものについてみてみましょう。必要最低限なものだけでも結構な数です。

 まず、犬にとって「自分の部屋」となる犬小屋やサークル、ケージは必ず準備しておきたいもの。さらに、犬用トイレ、餌やり用のフードボウルと水ボウルをそろえて、落ち着く場所を確保してあげたいですね。また、散歩の時に使うリードと首輪、犬の移動時に使用するクレートも当然必要になります。ほかにも、地域や気候に適した冷暖房器具などもそろえてあげてください。

 これらのグッズは種類や費用帯が幅広いので、飼い主の好みや生活スタイルに合うものを選べば良いでしょう。何を購入すればいいのかわからない場合は、獣医師などに相談してみてください。

 また、インターネットなどでは、必要最低限のものをまとめた「スターターセット」といったものも販売されていますので、まずはそれを購入し、必要に応じて追加していくのも手です。

⑧マイクロチップ

 最後に、マイクロチップについても触れておきます。マイクロチップとは、動物の個体を識別するために体内に埋め込む直径2ミリ、長さ12ミリ程度のICチップのこと。個体識別は、トレーサビリティーや健康管理、感染症対策、遺棄対策などに役立つほか、迷子や盗難などで動物と離れ離れになった場合に飼い主を特定しやすいことから、一部のペットショップなどが推奨しています。

 チップには15桁の番号が記録されており、飼い主は個人情報をAIPO(Animal ID Promotion Organization、動物ID普及推進会議)に登録することで照合できるようになっています。チップの埋め込みは獣医療行為にあたるため、必ず獣医師が行ってください。費用は動物病院によって異なりますが、登録料は一律1000円。マイクロチップは繁殖業者やペットショップなどへの義務化が検討されていますが、現状では任意です。

犬を飼うための初期費用の総額は――
小型犬:約8万8000円、中型犬:約11万5000円、大型犬:約14万0000円

 以上が犬を飼い始めた時に必要となる初期費用です。想像以上にお金がかかる、と思った人も多いのではないでしょうか。特に大型犬ともなると、初期費用だけでも15万円近く、小型犬の約1、6倍にも上ります。

 ただし、これらはあくまでも、犬を迎えるにあたって必要となる最低限の出費です。子犬に持病があったり急病やケガをしたりした場合、出費が増える可能性はおおいにあります。多少の余裕を持って備えておかなければ、いざという時、しわ寄せは犬にいってしまいます。

 犬と暮らし始めると、「飼い主責任」という言葉に、これから何度も接することになるはずです。その最初の「飼い主責任」を果たすために、計画的に子犬を迎えてあげましょう。

sippo
sippo編集部が独自取材した記事など、オリジナルの記事です。
この特集について
犬を飼うと、何にいくらかかる?
家に迎え入れてから、供養まで、犬を飼うのにはどのだけお金がかかるか、ライフステージごとに解説した特集です。
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