柴犬など日本犬は自立心が強い 野生動物に近い性格

日本犬の特徴としてたびたび挙げられる「自立心の強さ」。
大きな魅力である自立心のメリットやデメリット、成長による変化、
自発的な行動の活かし方を知れば、さらに関係が強まり暮らしが豊かになる。


Text:Shio Kaneko Photos:Miharu Saitoh

 



◇パートナーのように対等な関係を築ける

 

日本犬は野生動物に近い性質を持つ犬種である

 

 日本犬は自立心が強い犬種である。野生動物が生きるために備えている性質と同じだ。本コーナー第1回でも紹介したが、獣医師の山下國廣先生に改めて詳しく解説していただこう。


「野生のほ乳類は小さい頃に親や仲間の庇護のもとで育ち、おとなになれば自立して次の世代を育てます。おとなになっても自立できなければ、食べ物を獲得したり生活環境を整えたりすることができません。外敵にやられ、ライバルにも負けてしまいます。事故に遭遇する率も高くなるでしょう。その結果、遺伝子を残せる確率が極端に下がるので、自立できないタイプは淘汰されてしまいます。日本犬を含むプリミティブグループの犬種は、野生動物の性質を残しています。成長に伴って自立して行くことが正常であり、動物本来の姿でもあります。『日本犬は人に馴れる野生動物』と言えばわかりやすいでしょうか」


 自立心の強い犬は、飼い主への依存が低くなり、自分がやりたいことを優先する傾向がある。「日本犬はしつけが難しい」といわれる所以である。


「自立心は日本犬の魅力でもあります。日本犬に合ったしつけ方や暮らし方を工夫して上手に育てれば、パートナーのように対等な関係を築けます」


 まずは自立心のメリットとデメリットを知り、日本犬の魅力を活かせる暮らし方を考えたい。

 

 

 

日本犬の性質を知っておこう
自立心のメリットとデメリット

自立心の強さは決してマイナスではないが、家庭犬としてはメリットとデメリットがある。両方の特徴を知っておき、暮らしに 立てよう。


メリット
自立しているからできることが多い

 

① 自立しているので手がかからない
② 家族も犬もそれぞれの時間を過ごせるので、「犬を飼っているから◯◯◯できない」といった悩みが少ない
③ 上手に育てれば必要な場面でかばってくれる
④ 対等のやりとりができるので相棒として楽しい

 山下先生が特にメリットとして挙げるのは、「③上手に育てれば必要な場面でかばってくれる」こと。「例えば散歩の時に飼い主さんが転んだ場合。転んだのが大人の男性であれば、犬は冷めた目で見たりふざけっこを始めたりするでしょう。小さい子供であれば、心配そうにおろおろしたり、舐めて慰めてくれることが多いと思います。私の愛犬のすぐりも、私が雪山の斜面で滑った時は上の方でシッポを振って見ているだけでしたが、妻が滑ると間髪を入れずに急斜面を駆け下りました。本気で心配したんだと思います」と山下先生。弱い者を選別してかばう、援助が必要かどうか判断して実行する、といったことは、ある程度自立していなければできない行動。その他のメリットも同様だ。

デメリット
誤った訓練で不当な評価を受けやすい

 

① 飼い主だけに意識を向けてほしい場面でも、他のことに関心を向けやすい
② トレーニングをよほどしない限り、「どんな環境でも指示を受けたらすぐ実行する」というタイプにはなりにくい

 自立している犬には一方的に命令する訓練が向いていない。いつでもどこでも何でも言うことを聞くタイプに育てるのも難しい。「日本犬の特徴や個性を考慮せず、『集中力がない』『訓練性能が悪い』『飼い主さんに魅力がない』など、不当な評価を受けやすいこともデメリットでしょう」と山下先生。

監修:山下國廣先生/軽井沢ドッグビヘイビア

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