作詞家・湯川れい子が語る(1)「猫おばさん」になったわけ 

実はずっと犬派だった。きっかけは2匹の子猫(写真/ 前田昌宏)
実はずっと犬派だった。きっかけは2匹の子猫(写真/ 前田昌宏)
脱走事件を起こしたジャッケル(写真提供/湯川れい子)
脱走事件を起こしたジャッケル(写真提供/湯川れい子)

 我が家にはいま3匹の猫がいます。意識したことはありませんでしたが、考えてみたらみんな「保護猫」と呼ばれる子たちなんですね。

 実はずっと犬派で、もともと猫は苦手でした。子どものころ、祖母の家に猫がいたのですが、どうも私はその猫に疎(うと)まれていたみたい。いつも座布団に座っている典型的な「ざぶた猫」でしたが、私が近づくと、ジトッとした目で私をにらんで、すすっとどこかへ行ってしまう。そんな経験から、猫があんまり好きになれなかったんです。

 

 転機になったのは、もう20年以上も前の出来事です。当時飼っていたシェットランド・シープドッグのプリンスを散歩させていて、上智大学のそばの外堀土手の下にさしかかったとき、2匹の子猫が捨てられているのを見つけてしまったんです。百貨店の紙袋に入れられていて、まだ目も開いていませんでした。

 

 なんとかしないと、と思って家に連れて帰り、世話をし始めました。2時間おきに猫用ミルクをあげ、おしっこやうんちをさせるのに綿棒でこすってあげ、仕事の時は段ボールに入れて車でスタジオに連れて行き……そのまま家の子になりました。2匹ともオスで、名前はジャッケルとヘッケルと付けました。それからですね、「猫おばさん」になったのは(笑)。

 

 兄弟なのに性格はまったく違いました。ジャッケルはおとなしい子。私の感情の変化をすごくよく見ていて、私が泣いていたりするとすっと寄ってくる。そして、手でほおをなでてくれるんです。ヘッケルは活発な子。人なつこくって、誰からも好かれる人気者でした。だから私が引っ越しをするのを機に、近所の方に見初められて、もらわれていきました。

 

 ジャッケルとの再会 個性際立つ猫たち その引っ越しの時、ジャッケルには「事件」が起きました。引っ越し作業がたいへんなので、一時的に友人に預けていたら、そこから逃げてしまったんです。週刊誌の広告で見つけた「猫探偵」を雇って、1週間後くらいにようやく保護できました。私もジャッケルも泣きながらの再会。その日は一晩中、ジャッケルは私の胸の上をフミフミしてくれて。ジャッケルはそれから5、6年生きて、14歳で亡くなりました。

 

 犬は愛情表現がはっきりしていて、お散歩などを一緒に楽しむことができる。猫はそれぞれに個性が際立っていて、ふとした時に寄り添ってきたりする。どちらも人間にとって、本当に大切なパートナーです。次回は、これまで一緒に暮らしてきた猫たちをご紹介したいと思います。(続く)

 

(朝日新聞タブロイド「sippo」(2014年12月発行)掲載)

 

 

湯川れい子(ゆかわ・れいこ)

1936年東京生まれ。音楽評論家、作詞家。60年、ジャズ専門誌「スウィング・ジャーナル」への投稿が認められ、ジャズ評論家としてデビュー。作詞家としての代表作に「センチメンタル・ジャーニー」「六本木心中」「恋におちて」など多数。近年は平和、健康、教育、音楽療法などをテーマにボランティア活動に取り組んでいる。エンジン01文化戦略会議動物愛護委員長、TOKYO ZEROキャンペーン呼びかけ人

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