猫が前脚でする「ふみふみ」 エスカレートするときは脳の機能障害や病気の可能性も
猫と幸せに暮らすヒントや困りごとの解決法を、獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が教えてくれます。今回は猫がする「ふみふみ行動」について、入交先生が答えます。
進化学における「適応」の表れ
日中はまだ暑いですが、朝夕の風に秋の気配を感じるようになりました。食欲の秋到来です。私たち人も含め、動物はなぜ秋になると食欲が増すかご存じですか? 冬の寒い時期は、体を暖かく保つために脂肪を身にまとう必要もあるし、熱を発生させないといけないので夏よりエネルギーも使うため、寒い季節になってくると食欲が増すのです。
さて今回は、『なぜ猫は「ふみふみ」をするのか』というご質問をいただきました。
ふみふみは何の行動か、ですが、子猫の時にママのおっぱいをもむ行動と考えてよいかと思います。おそらく、一連の行動が一定の順序で連鎖的に行われる「固定的動作パターン(Fixed Action Pattern)」の1つだろうと考えます。
ママ猫のおっぱいに吸いつきおっぱいを飲む際、子猫たちはママのおっぱいの周囲で、吸っている乳首の周りをふみふみしていきます。乳腺を刺激することでより多くの母乳が出るのでしょう。ちなみに犬も、おっぱいを飲みながら母犬のおっぱいを押すような行動をします。
ふみふみができた子猫がより多くのお乳を飲むことができ、この行動をする遺伝子がより残ってきて今日に至るのかなと考えます。そのことを進化学の中の「適応」といいます。
成猫になってもするのはなぜ
では、成猫になっても、おっぱいを吸っていなくてももみもみするのは何かというと、何らかの気持ちの表れとなります。例えば飼っている猫が布団などをふみふみしているときは、眠かったり、なんとなく寝る前に気持ちを整えていたりする行動だと思います。
甘えているときや眠い時など、人の小さい子供がおっぱいの代わりに指を吸う行動と同じようなものと考えてよいでしょう。少しふみふみしたら寝てしまうはずなので、おうちの猫がふみふみしているときは、見守っていればよいと思います。
問題行動に発展するときは
ここから先は、ふみふみしながら布団に食らいついて布団をしゃりしゃり食べようとしたり、布団でもタオルでも布製品を次々と食べてしまったりするような場合の話をします。
ふみふみするだけの行動を通り越して布団を食べるようになったら、脳の機能障害や脳の病気の可能性もあるので、動物病院で相談いただくとよいでしょう。
安全対策としては、ふみふみを通り越して過度な、異常な行動がある場合は、猫が食べてしまいそうな布団や布製品は猫の届く場所に置いておかないようにします。そのうえで、動物病院の先生の指示に従って治療を受けていただくことになると思います。
ふみふみ行動がどんなときに表れて、どれくらいのレベルのふみふみなのかで、そのときの猫の気持ちや理由は違ってきます。今回は一般的なお話、ということで猫の「ふみふみ」行動のお話をしました。
ちなみに英語では、ふみふみは「パンをこねている」ような行動に見えることから、「こねこね行動(kneading)」と言われています。英語になってもかわいい表現ですね。
(次回は10月13日公開予定です)
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