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どうぶつ弁護団の活動について 「優しい社会に変わっていく、その歯車になりたい」

 動物たちを虐待から守るために、2022年に立ち上がったNPO法人どうぶつ弁護団(Animal Defense Team)。当連載では、どうぶつ弁護団に所属する弁護士・獣医師メンバーからの便りを紹介します。

 第4回は、どうぶつ弁護団がどのような事業をしていて、どのように活動しているのかという枠組みについてお伝えします。

声なき動物を代弁して護りたい

 どうぶつ弁護団は、兵庫県弁護士会所属の弁護士や神戸市獣医師会所属の獣医師が中心となって令和4年9月に発足したNPO法人です。

 動物は言葉を話すことができないので、傷つけられても被害を訴えることはできません。

 特に、屋外で暮らす所有者のいない動物や飼い主から虐待されている動物については、動物虐待かもしれない事態を目にした第三者が動物の代弁者として声をあげなければ、警察や行政もこれを認識できず、動物虐待は発覚しないままになってしまうことが想定されます。もしくは、動物虐待が発覚しても、すでに動物が亡くなってしまっている、多くの動物が被害に遭っているといった重大な結果が生じていることも想定されます。

 私たちは、このような声なき動物の声を伝え、動物虐待を防止する活動をしたいと考えて、どうぶつ弁護団を設立しました。

どうぶつ弁護団ホームページより(どうぶつ弁護団提供)

 議論の末に「どうぶつ弁護団」という法人名をつけましたが、この法人名は弁護士の集団を指すものではなく、動物虐待を見過ごさない、声なき「動物」を「代弁」して「護」りたいという思いが込められています。この点から、英語表記は「Animal Defense Team」としています。(設立の経緯は、当法人の理事長でもある細川敦史弁護士の連載記事に紹介されています)

どうぶつ弁護団の活動について

 どうぶつ弁護団は、刑事告発などの手続を通じて動物虐待について適切な処分がなされるよう求める活動や、普及啓発活動などをしています。

 特に「適切な処分がなされるよう求める活動」について説明しますと、どうぶつ弁護団ではホームページ上に「虐待情報提供窓口」を設けており、動物の殺傷、虐待、遺棄かもしれない事態を目にした市民の方が、誰でも簡単に情報を提供できるようになっています。

 どうぶつ弁護団は兵庫県内に所在していますが、情報提供の対象地域に限定はなく、日本全国どこで発生している事案であっても情報提供いただくことができます。

 情報提供窓口を設置した令和4年12月から令和6年3月末までの間に、この窓口には300件を超える情報が寄せられました。

ワイヤー様の針金が猫の腹部に巻き付き、木につながれていたマルちゃん。治療終了後の写真

 どうぶつ弁護団では、弁護士でもある理事や正会員が中心になって窓口に寄せられた情報に目を通し、場合によっては情報提供者の方から資料を送付いただくなどして、全件の内容を検討しています(なお、検討状況や検討結果については、情報提供者の方にお伝えしませんのでご了承ください)。

 そして、必要であると考える場合には、どうぶつ弁護団が主体となって「刑事告発」(※1)をして被疑者の処罰を求めています。また、事業者の法令違反が疑われる場合には、行政指導や行政処分をするよう「処分等の求め」(※2)をすることもあります。

 法人の設立から令和6年3月末までに、どうぶつ弁護団では、窓口に寄せられた情報などをきっかけとして、7件の刑事告発と1件の処分等の求めをしました。

 刑事告発7件というと少なく聞こえてしまうかもしれませんが、どうぶつ弁護団内部では、常に複数の事案について告発やその他の手続に向けて動いているという印象です。

 特に対象を限定しているわけではないのですが、屋外で生活する所有者のいない猫が被害に遭って告発した事案が多く、猫の顔面に複数回釣り針が刺さっていた事案や、ワイヤー様の針金が猫の腹部に巻き付いた状態で、木につながれていた事案もありました。(なお、どちらの猫もその後に新しい飼い主さんが見つかったと聞いています)

※1)刑事告発…捜査機関に対して、犯罪と思われる事実を申告して刑事処罰を求める手続です。
※2)処分等の求め…行政手続法36条の3等に基づき、法令に違反する事実についてこれを是正するような処分・指導がされていないと思われる場合に、行政機関に対して、これをするよう求める手続です。

費用はご負担いただきません

 一般的に、刑事告発をして被疑者が特定され、処罰をされても告発人には経済的なメリットはありません。むしろ、例えば動物虐待を目撃した市民の方が自ら告発をしようとする場合、告発自体に費用はかかりませんが、多くの場合弁護士へ相談・依頼するでしょうから、その費用がかかってしまうことが想定されます。

 この点、どうぶつ弁護団では、どうぶつ弁護団自身が主体となって刑事告発等の手続を行うため、情報提供者の方が告発人になるわけではありません。

 実際に刑事告発をする場合、弁護士に告発状の作成を依頼し、必要に応じて警察署に出向いて告発状を提出するなどしており、法人運営自体には費用が発生しています。もっとも、どうぶつ弁護団が自らの判断で告発手続を行っているのですから、これを情報提供者の方に負担いただくことは一切していません。当法人の活動目的にご賛同いただける方は賛助会員としてご入会いただいていますが、情報提供に際しての条件でも何でもありません。

 情報提供者の方に費用のご負担がないことによって、情報提供のハードルが低くなり、従来であれば発覚しなかった事案が表面化するきっかけになるのではないかと考えています。

優しい社会に変わっていく、その歯車になりたい

 このように、どうぶつ弁護団は動物虐待について適切な処分を求めることを事業の柱としています。

 この点、みなさまにご注意いただきたいのは、どうぶつ弁護団自体はNPO法人であって、弁護士や弁護士法人、獣医師や動物病院ではないという点です。

 個別の事案についてどのように対応すればよいのかという点を含めて、法律相談や助言、弁護士紹介のご依頼をいただくことがとても多いのですが、これらにご対応することはできません。また、獣医療行為や獣医師紹介のご依頼にもご対応できません。

 どうぶつ弁護団の運営メンバーの多くは弁護士や獣医師であることから、なかなかご理解いただきにくいと思いますが、この点についてご了承いただきますようお願いいたします。

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 どうぶつ弁護団の仕組みを考えるなかで、動物に関係する分野だけではなく、それ以外のさまざまな分野においても、先人たちが時間と労力をかけて、社会をより良いものにしようと新しい法制度や組織をつくり、これが運用されてきたことを実感するようになりました。

 そして、実際に活動する上でも、動物の保護活動に尽力される方、動物の保護活動を行う人々を支援しようと活動する団体など、目の前の問題を解決すべく活動する多数の人や団体の姿を目にしています。

 このような人々の姿、取り組みが本当にはげみになって、私たちは日々活動をしています。

 どうぶつ弁護団も、人と動物が共生し、命を大切にする優しい社会に変わっていく、その歯車に、うねりの一助になっていきたいと考えています。

(次回は8月21公開予定です)

【前の回】「卑怯で反社会的、典型的な弱い者いじめです」 動物虐待に向き合う弁護士の思い

NPO法人どうぶつ弁護団
2022年に設立した、理事長の細川敦史弁護士を筆頭に弁護士と獣医師で構成された、動物虐待事件について捜査機関に対する刑事告発などを行うNPO法人(英語表記:Animal Defense Team)。警察へ被害届を提出することも、動物病院へ行くこともできない声なき動物を護るため、専門家と連携して動物目線で動物の声を伝え、人と動物が共生する優しい社会の実現を目指している。https://animal-dt.org/

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この連載について
どうぶつ弁護団からの便り
どうぶつ弁護団
動物たちを虐待から守るために、2022年に立ち上がったどうぶつ弁護団(Animal Defense Team)は、動物を愛する弁護士たちが中心となって活動しています。当連載では、動物虐待に関する情報や、どうぶつ弁護団への思い、ときにはかかわった事件の話など、どうぶつ弁護団に所属する20名以上の弁護士・獣医師メンバーからの便りを紹介します。
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