どうぶつ弁護団理事・立花弁護士が飼育しているリクガメ「アリア」。「我が家の大事な一員です」
どうぶつ弁護団理事・立花弁護士が飼育しているリクガメ「アリア」。「我が家の大事な一員です」

「卑怯で反社会的、典型的な弱い者いじめです」 動物虐待に向き合う弁護士の思い

 動物たちを虐待から守るために、2022年に立ち上がったNPO法人どうぶつ弁護団(Animal Defense Team)。当連載では、どうぶつ弁護団に所属する弁護士・獣医師メンバーからの便りを紹介します。第3回は、立花隆介弁護士です。

動物虐待の実態を知り…

 NPO法人どうぶつ弁護団の理事を務めています、立花隆介です。

 sippo読者の皆さんは、犬や猫を飼っておられる方が多いのではないかと思いますが、私自身は、犬や猫は飼っておらず、「リクガメ」を飼っています。小学生だった娘が「飼いたい」と言いだして飼い始め、すでに5年が経ちました。当初7~8cmだった甲長もすでに25 cmくらいにまでなり、我が家の大事な一員となっています。天気のよい日は自宅の庭に放していますが、そのほのぼのとした姿に癒やされています。リクガメのかわいさを理解いただける方は多くはない(少なくとも私の周りには……)のが非常に残念なところです……。

「実はウサギ(の置物)と仲良し」と立花弁護士

 さて、犬猫を飼っていない私ですが、どうしてどうぶつ弁護団の活動に加わることになったのかをお話ししたいと思います。

 結論から言うと、「偶然」と「巻き込まれ」と言ったところです。

 令和3年度に兵庫県弁護士会の副会長を務めたのですが、その際、偶然にも、動物愛護を活動テーマの一つとしていた公害防止・環境保全委員会を担当することとなりました。そこで、当法人理事長の細川敦史弁護士をはじめ動物愛護、動物虐待の問題に取り組む弁護士と出会い、また、「動物虐待」という問題にも弁護士として初めて出会いました。

 当時は、役職上、少し傍観者的な立場ではありましたが、シンポジウムや勉強会、書籍などを通じて動物虐待等の実態を知る中で、弁護士としてこの問題に取り組むのは「おもろいかもしれへんなあ」と感じていたところ、それを鋭く見抜いたのかどうか?細川弁護士にどうぶつ弁護団への参加の声をかけられた(=巻き込まれた??)のです。(ちなみに、ここで言う「おもろい」とは、関西弁ですが、「笑える」、「愉快」などの意味ではなく、「興味深い」、「意義がある」といった意味です。誤解なきように)

弁護士だからできること

「巻き込まれた」とはいうものの、私がどうぶつ弁護団の活動に関わろう(おもろそう)と思ったのは、次のようなことを感じたからでした。

・典型的な「弱い者いじめ」である
 犬猫などの動物を虐待することは、典型的な「弱い者いじめ」です。加害者の多くは、自らのストレスを解消するためであったり、自らの残虐指向性を満たすためであったりするのかもしれません。しかし、それら自らの欲求のために、声をあげることのできない弱い者をいじめる、虐げるというのは,非常に卑怯(ひきょう)で反社会的であって許しがたいものです。そのような「弱い者を攻撃する」ということはおよそ許されないということが認識されなければならないと思います。

・他の重大な犯罪につながりかねない
 人間が持つ「残虐さ」というのはしばしばエスカレートし、時に信じられないような結果を生むこともあります。加害者の中にはその残虐さをエスカレートさせ、動物では飽き足らず、その虐待や加害の対象を人間に向けてくるということもあります。動物虐待自体が十分に許しがたい犯罪ではありますが、さらに重大な犯罪に発展する前に適切に対処しなければなりません。

立花弁護士が自作したカメハウス!(制作中)

・弁護士としてやるべき仕事である
 私は、弁護士として(人間の)犯罪被害者の支援をよくやっています。被害に遭った方の精神的な負担は想像を絶するものですが、それでも、加害者を罰するために自ら警察に被害を訴えることもできますし、弁護士などからの支援を受けることもできます。しかし、動物は、虐待を受けても自ら被害届は出せませんし、被害に遭った状況を説明することもできません。だからと言ってそれを放置していて良いわけはありません。警察や検察庁を相手にして犯罪を告発するには、法律の専門的な知識が必須です。声をあげられない動物の声を警察や検察庁に届けることは、弁護士が担うべき重要な役割であると思います。

 すでに何件かの告発事件を主任として担当していますが、動物虐待の事案を見て、この問題を考えるにつけて、動物への虐待は、単に「動物がかわいそう」というだけではなく、健全な社会において全く必要のない害悪でしかないという気持ちを強くしています。

「多くの方の力で動物虐待をなくしたい」

 どうぶつ弁護団に加わる個人的な経緯を書いてきましたが、読者の皆さんの関心には沿わなかったかもしれません。また、「偶然」とか「巻き込まれた」と書いてしまったので、ネガティブに受け止めた方もおられるかもしれません。

 ただ、人間、偶然の出会いとかでいろいろ決まっていくものとも思います。

 偶然であっても、他人から巻き込まれたのでもよいので、少しでも多くの方に、動物虐待の問題を知ってもらい、関心を持ってもらいたい、そして多くの方の力で動物虐待をなくしたい、と思いながら活動しています。そして、究極的には、人間であれ動物であれ、平和に幸福に暮らしてもらいたい、生きてもらいたいと思っています。

 どうぶつ弁護団の活動をどうぞよろしくお願いします。

(次回は7月24日公開予定です)

【前の回】動物虐待の現場に遭遇したら まずは証拠を確保し、直ちに警察に通報を

NPO法人どうぶつ弁護団
2022年に設立した、理事長の細川敦史弁護士を筆頭に弁護士と獣医師で構成された、動物虐待事件について捜査機関に対する刑事告発などを行うNPO法人(英語表記:Animal Defense Team)。警察へ被害届を提出することも、動物病院へ行くこともできない声なき動物を護るため、専門家と連携して動物目線で動物の声を伝え、人と動物が共生する優しい社会の実現を目指している。https://animal-dt.org/

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この連載について
どうぶつ弁護団からの便り
どうぶつ弁護団
動物たちを虐待から守るために、2022年に立ち上がったどうぶつ弁護団(Animal Defense Team)は、動物を愛する弁護士たちが中心となって活動しています。当連載では、動物虐待に関する情報や、どうぶつ弁護団への思い、ときにはかかわった事件の話など、どうぶつ弁護団に所属する20名以上の弁護士・獣医師メンバーからの便りを紹介します。
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