脱走した老犬が3km先まで行く? 捜索したら意外な場所にいた
保護犬の預かりボランティアをする、インテリアデザイナーの小林マナです。犬や猫と暮らしやすい住空間をつくり、いまは保護猫1匹と、預かり犬1匹と生活をともにしています。第34回は「老犬ニハチの大脱走からの保護」をお伝えしていきます。
捜索ポスターをつくる
預かり中の老犬ニハチと泊まりがけで友人宅へ行ったところ、リビングにいたはずのニハチが脱走したと書いた前回の続きです。
ニハチがいなくなった日の夕方、私はニハチを保護した動物愛護団体の代表に連絡を取りました。詳細を説明したところ「老犬といっても歩き出すとアドレナリンが出てきて止まれなくなってしまうので、結構遠くに行ってしまう可能性があります」とのこと。
ニハチが遠くへ……? とてもそんな距離を歩けるとは思えません。
そして「すぐにポスターをつくって配る準備をしてください。2万枚くらいあれば十分です。半径3kmにポスティングしてください。今から明日現地へ行けるボランティアを募ります」と言う代表。
そう指示があったので、ポスターを作り、友人宅のコピー機を借りました。その場にある紙だけでもコピー用紙は500枚。どんなに頑張っても、2万枚なんて枚数を刷れません。
ひとまず、夜間に開いているお店やコンビニにポスターを貼らせてもらいました。
半径3kmは相当な距離でしたが、友人宅のまわりにニハチがいないとなると、もう本当に歩き出して止まれないのかもしれません。とにかくやるしかありませんでした。
老犬の歩行速度って?
一夜明けて、朝明るくなってきたころに、再度、友人の営む元ハーブ園と門を出たところにある野球グラウンドの端っこの草むらを探し回りました。
ニハチは老犬で耳が悪いし、元々ほとんどほえなかったのですが、きっと私の声ならわかってくれるはずだと「ニハチー!」と大きな声で呼び続けました。
日が昇ってきたころに、他のメンバーも参加して探してくれたのですが、なしつぶてでした。
そもそもニハチは、よく見えない目で3kmも離れた場所へ行けるのか、私はまだ疑心を抱いていました。道に沿って歩いて行けるのか、真っ直ぐ歩いてぶつかって転んでしまわないのか、起き上がってまた歩き続けられるのか、どこかで倒れていないか……と。
でも思えばニハチの歩行速度は、私の歩幅でゆっくり歩く程度です。そうすると、1kmを約15分くらいで歩けます。よく考えると3kmなんてすぐ。一晩あれば、もっと遠くへ行けてしまうという計算が、私はまったくできていませんでした。
そして、友人はあるだけの紙でポスターを刷ってくれていました。
助っ人登場!
そうこうしている間に、続々と動物愛護団体の代表や仲のいいボランティアたちが総勢5人集まってきてくれました。東京から車で3時間くらいかけてやってきてくれたのです。
ところが捜索を始めて30分もしないで、代表に電話がかかってきました。
「えー? いたー? 早いー! わーよかったー!!!」
電話を切るとニコニコした代表が「いたって。元気みたい! すぐ近くみたいだよ。もう戻るって!」。
なんということでしょう。ニハチを見つけたボランティアさんいわく、自分の犬が逃走した時にのどが渇いて水のあるところにいたという経験から、真っ先にそんな場所を見に行ってくれたそうなんです。それは家から150mくらいのところでした。
再会したニハチは水に入ったばかりだったのか脚先しかぬれておらず、一晩中、動かずにそこにいたのかは不明ですが、とても元気そうでした。
ニハチは2食分、食べていなかったので、その後ガツガツとフードをたいらげたのでした。
は~。本当に見つかって良かった。そして、駆けつけてくれたボラさんたちに感謝してもしきれない思いでした。こういう時に、同じ思いの仲間がいて、本当に良かったと思った大事件でした。
そうそう、ポスターをひたすら刷ってくれていた友人は、今でもニハチのポスターを裏紙として使っているそうです。
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