【雑種犬図鑑.4】飼育放棄された母犬、世界を巡る旅犬に! 飾り毛が素敵な「なな」
個性豊かな雑種犬の魅力を犬種図鑑のパロディで紹介する連載企画。第4回は、シッポと耳に長い飾り毛のある和犬系雑種の「なな」。どこでもリラックスできる落ち着いた性格を生かして、旅好きの飼い主さんと一緒に、なんと海外旅行も楽しんでいます!
【基礎データ】オオカミっぽさの残る、被毛長めの中型雑種犬
- DATA
- 《名前》なな
《年齢/性別》推定8歳/メス
《役割》旅犬
《サイズ》体高35cm・体⻑50cm・体重9.2kg
《特性》
落ち着き度・★★★
飼いやすさ・★★★
存在感・・・★☆☆
意外性・・・★★★
【チャームポイント】なぜそうなった?パーツごとの毛の色や長さが個性的
オーバーコートは焦茶色系、アンダーコートはベージュ色系の長毛に、オオカミっぽさも感じる顔つきの、なな。犬種の想像がつきにくい独特の見た目をしていますが、遺伝子検査をしたところ、柴犬と秋田犬で40%強、あとはゴールデン・レトリーバー、ビーグル、シベリアン・ハスキーなどが入っているという結果でした。
人間のようなまゆ毛
目の周りはベージュ色で、目の上にまるでまゆ毛のように見える黒い毛があります。年齢や季節によって見え方が変わり、数日ごとに違って見えることもあるそう。
すすきのようにふわふわのシッポ
長く豊かな飾り毛のあるシッポも自慢です。これも季節や年齢によって毛の長さや量、見え方が変わり、噴水のように見えたり、すすきのように見えたり。
体に対して短めの脚
この脚の短さのおかげで、キャリーバッグにすっぽり収まって電車にも乗れます。「胴長短足なのでコーギーの血が入っているのかなと思っていましたが、遺伝子検査をしたらまったく入っていませんでした」と飼い主さん。
唯一無二のビジュアルのなな。その性格はというと……。
【性格】「あれ、いたの?」と言われるほど静か
おとなしく落ち着いた性格で、もめ事とは無縁。しつけに困ったことは特にないそうで、「初めて迎えた犬がこんなに手がかからないなんて、本当にラッキーだと思います。飼育放棄された前の飼い主さんはもったいないことしましたよね(笑)」と飼い主さんは話します。
お出かけ先でもすぐにリラックス
もともとのキャパシティが大きいのか、特別に教えたわけでもないのに、どこへ行っても周りのことを気にせずリラックスできる性格。だから、カフェでも旅行でもどこでも一緒に出かけられます。
雪山では大興奮
一方で、散歩に出る前や、ボールやぬいぐるみで遊ぶときなど、テンションが上がる瞬間もちゃんとあります。「特に雪遊びは大好きで、雪山に行くと犬が変わったようになります」と飼い主さん。
ベランダに出たいときは鈴でお知らせ
ななの特技はいろいろありますが、一つは、ベランダに出たいときに、窓際に下げてある熊鈴をチリンと鳴らして知らせてくれること。これは、離れた場所にいてもななの意思がわかるようにと、飼い主さん自身が教えた方法です。
いつでもどこでもアゴのせ
チンレスト(アゴのせ)もお得意のポーズ。「朝起きたときにふと見ると、私の布団がななちゃんのアゴの形にへこんでいて、ここにチンレストして起こそうとしてたんだなと思うときがあります(笑)」
そんなななは、実は3匹の子どもを出産したことのある、母犬という過去がありました。
【生い立ち】田舎での外飼いからの飼育放棄、そして出産
3匹の子犬を妊娠した状態で、茨城県の動物指導センターに持ち込まれたらしい、なな。センターで出産後、動物保護団体に親子まとめて引き出され、子育てがひと段落したところで新しい飼い主の募集が始められました。
「ずっと犬と暮らしたいと思っていたんですが、7年前にようやく環境が整って。初めて犬と暮らすのに子犬は大変だろうということと、雑種犬っていいよねということで、保護団体のサイトを見ていました。体重10kg以下の成犬で探していたところ、ななちゃんの飼い主募集記事に行きついて。オオカミっぽくもあり、なんだか人面犬っぽくもある見た目にひかれて応募しました」と飼い主さん。
トレーニング理論を学び、ななに合わせて実践
田舎で外飼いされていたらしく、多くの野良犬や野犬のように人や物音などを怖がることはないけれど、問題は外でしか排泄(はいせつ)しないこと。ななを迎えて、「ちゃんとした飼い主にならなきゃ」と熱心にトレーニングを勉強した飼い主さんは、室内でのトイレやシャンプー、爪切りなどの練習を開始しました。
「でも、室内トイレに関してはいろいろやってもダメで、結果、特に困っていないから外トイレだけでいいや、と。シャンプーも別にしなくても臭くならないし、爪切りも散歩できている間は歩くと爪が削れて切る必要がないので、できないことを無理してやらせなくてもいいと考えるようになりました」
かといってトレーニングをやめたわけではなく、今は保護犬のスペシャリストのトレーナーさんについて、ドッグパルクールなどを練習中。もともと人間にあまり興味のなかったななですが、トレーニングを続けることで関係性ができてきて、いわゆる“犬らしさ”が見られるようになってきたと言います。
そんな日常に加えて、ななとの関係を大きく変えたのが、ななとの旅でした。
【暮らし】ななと行く、毎年の海外旅行が楽しみ
体が丈夫で、環境変化に強く、アレルギーもなく、どこへでも一緒に連れて行けるなな。そこで、もともと旅行好きの飼い主さんは、ななとの遠出を考え始めます。電車で出かける練習をしたり、飛行機に乗る練習も兼ねて沖縄旅行をしたりした後、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路を歩く旅へ!
「スペインの巡礼旅では、5〜6日間かけて全114km、主に里山を歩くのですが、ななちゃんと一緒に歩きながら旅をするのは本当に楽しかったです。ななちゃんも絶好調で、山の中にいるとイキイキしていましたね! 緑のリュックを背負わせていたので、『犬がモチーラ(スペイン語でリュック)を背負ってる!』とよく言われました」
2017年のスペイン巡礼旅で味をしめて、2018年はカナダ、2019年はイタリアへ行き、コロナ禍が明けた今年はクロアチアへ行こうと計画しています。「コロナ禍で海外に行けない間、日本でもななちゃんと旅をしようと思ったんですが、犬と一緒に入れる場所や宿を探すのが大変で……。犬と人が自然に一緒にいることを許容してくれる場所に行きたいと思うと、やっぱり海外になりますね」
できるだけななの意思を聞いてみたい
今後飼い主さんがななと挑戦してみたいことは、『フルーエントペット』というボタンを使って会話すること。フルーエントペットは、ボタンを押すと、あらかじめ録音しておいた「散歩」や「ごはん」といった音声が流れるというもの。犬がボタンを使って自分の意思を示せるので、今後はこの使い方をななに教えてみたいそうです。
「夢としては、ななちゃんに『今日のごはんはお肉がいい? お魚がいい?』と聞いたら、ボタンで答えてくれること(笑)。ななちゃんにいろんな選択肢を教えてあげたいんです」
普段はおとなしく控えめで、自分から主張してくることの少ない、なな。だからこそ、人間に伝わりやすい形で意思表示する方法を教えることで、もっとななの気持ちを知りたい。コミュニケーションをとりたい。そんな飼い主さんの思いが伝わってきました。
(次回は4月28日公開予定です)
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