飼育放棄されたシニアの中型犬「ラブ」 雑種犬の魅力を改めて教えてくれる存在に
個性豊かな雑種犬の魅力を紹介する連載企画。最終回である第27回は、筆者の私が3カ月前に一緒に暮らし始めた、沖縄県から来た13歳の大きめ雑種犬「ラブ」を紹介します。譲渡困難、殺処分確定と言われた問題児の状態から、いまや我が家ではベタベタの甘えん坊に。近所では「ハンサムねえ」とほめられ、改めて雑種犬の持つ魅力を私たちに教えてくれています。
【基礎データ】沖縄出身、茶色いブチの中型雑種犬

- DATA
- 《名前》ラブ
《年齢/性別》推定13歳/オス
《役割》新たな雑種犬の魅力を教えてくれるメッセンジャー
《サイズ》体高52cm・体⻑65cm・体重23kg
《チャームポイント》セクシーな流し目、長い脚、世界地図のような茶色の模様
《特性》
人慣れ度★★☆
犬好き度★☆☆
食いしん坊度★★☆
運動量★★☆
トレーニングしやすさ★★☆
ケアのしやすさ★★★
引き取り手の少ない中型シニアの雑種犬
「体重20kgくらい、シニアの雑種犬を預かれないか」と、近所に住む保護活動をしている方から相談されたのは、昨年10月ごろのこと。飼い主さんが病気になり、お子さんの受験とも重なって世話をするのが難しい状態なので、緊急で世話してくれる人を探している、と聞きました。
我が家では昨年8月に、愛犬1匹を看取(みと)ったばかり。相談を受けたときは5歳になる中型雑種犬の「ロッシ」1匹と人間2人での生活で、散歩のときに1人手が空くとさみしさを感じることがありました。
相談されたその子はシニアというのもあり、飼い主さんとしては、いい人がいればそのまま引き取ってほしいとのこと。私はもともと保護犬の預かりボランティアに興味がありました。とはいえすぐに正式に引き取るかどうかは決められず、緊急ということでひとまず一時的に預かることに。そうしてやってきたのが「ラブ」です。
もともとは沖縄県うるま市で飼われていたものの、2022年5月24日に動物愛護管理センターに持ち込まれたらしい、ラブ。当時推定11歳で、収容時に口輪を付けられていたため、ほえる、噛むといった理由で持ち込まれた可能性も考えられるとのこと。保護活動をしている人によってセンターから引き出され、静岡県にある、譲渡困難で殺処分確定とされた犬を中心に保護・管理している保護団体に預けられました。
そのころ、私の前の飼い主さんは犬の保護活動をしており、活動の一環で訪れた静岡の保護施設でラブと出会いました。ご飯のとき以外は室内と外を自由に出入りできる環境に30匹ほどの犬が生活している中で、集団になじめず脚を噛まれてしまい、室内で萎縮してしまっていたラブ。保護団体から「引き取ってもらえないか」との相談を受けて、看取る覚悟で引き取ったそうです。
声をたくさんかけて意思疎通できるように
ラブはリードをつけてまともに散歩をした経験があるかもわからない状態だったため、まずハーネスとリードをつけて散歩をする練習から始めたそうです。排泄(はいせつ)もしたい放題だったことから、1日に4回ほど外に連れ出して、そのときにするように練習していったとのこと。
また、人への甘え方も知らなかったため、例えば脚を拭くときにも声をかけて同じ順番で拭くなど、とにかくたくさん言葉をかけて同じことを繰り返して慣らしていきました。すると自分から脚を上げるようになるなど、飼い主さんの言うことを理解するようになっていったといいます。
しかし、献身的にラブと向き合っていたものの、持病の影響で入院し、退院後も病気と付き合っていかなければいけなくなった飼い主さんにとって、パワフルで歩くのも速いラブとの散歩は厳しいものでした。お子さんの受験も重なり、今後もラブと一緒に生活していくことはラブにも負担をかけるからと、ラブの新しい幸せを探すことにしたというのが、ラブが我が家にやって来るまでの経緯でした。
迎えて数日でベタベタの甘えん坊に!
私たちはとりあえずラブを預かることに決め、昨年11月29日にラブは我が家にやってきました。「体重20kgくらい」と聞いていましたが、いざ来てみると、大型犬であるラブラドール・レトリーバーに近いサイズ。また介助が必要なほどの年齢を想像していましたが、実際は12歳、そして年齢を感じさせないパワフルで元気な子でした。
前の家ではサークルの中で過ごしていたとのことだったので、そのままサークルを借りてリビングに設置し、まずはできるだけ環境を変えないようにして共同生活をスタート。初日は「あ〜あ〜」と深いため息のような声でずっと鳴いていました。
前の飼い主さんから「甘えん坊でマッサージが大好き」と聞いており、たしかにサークル越しになでるとうれしそうなようすを見せました。とはいえ、サークルを隔てていては触れ合えないので、私が中に入ってようすを見てみることに。しかし、初日はお互いに緊張感があり、ラブも自分から近づいてはきませんでした。
それが、なんと1週間もしないうちにベタベタと体をくっつけてきて甘えてくるように!できるだけサークルに入ってなでる時間を作るようにしていると、ラブは驚くほど人が大好きで、甘えん坊であることがわかってきました。
ラブと初めて散歩に出たときは、体が大きくパワーがあって、引っ張られたら体ごと持っていかれるので、身の危険も感じました。けれども、何日か散歩しているうちに、そこまで無理に引っ張る子ではなく、ちゃんとリードを持っている人間のほうを気遣ってくれていることが判明。田舎だからこそですが、1カ月後には、体重23kgのラブと16kgのロッシの2頭引きができるところまで慣れていました。
また、迎えて約1カ月後に年末を迎え、実家に帰る用事があったので、やむを得ず2匹を車に乗せてサークルを積んで実家へ連れていくことに。どうなることやらと心配しましたが、サークルから出しても人にくっついていれば安心して寝られる子だとわかりました。その後、車で一緒にお出かけして犬と泊まれる宿に泊まっても、ほとんど問題なく過ごせています。
今は普段も少しずつサークルから出して、家の中でフリーで生活できるよう模索中。問題は、赤ちゃん返りしているのか「かまって」攻撃が激しく、人の気を引きたいのか目についたものをくわえて破壊し、こちらが取ろうとすると本気でうなります。最近は、ラブが物を取れないように部屋を整理し、コングなどの知育オモチャで疲れさせるようにしていて、家の中では落ち着いて過ごすことに慣れてほしいと思っています。
「ハンサムねえ」と言われる人気者
ラブを迎えてすぐに、私が犬に関するメディアの仕事を長くしていることもあり、SNSを見た友人から「かわいい」とシニアモデルの話が舞い込みました。とんとん拍子で話が進み、カメラマンが我が家に撮影に来て、なんと雑誌に大きく掲載されることに!
また、ラブと家の近くを散歩していると、近所の人たちから「かっこいい犬だねえ」「相変わらずハンサムねえ」「おとなしくて賢いねえ」とよく声をかけられます。たしかにラブは、足が長くて体つきがガッシリしておりスタイルがよく、特に振り向いたときの流し目がセクシーなイケメン。そのくせ、笑った顔は優しくてかわいいのです。過去がわからないだけに、私たちは「沖縄の米軍基地出身のミックスルーツの子で、イタリアでモデル活動をしていたジェントルマン」といった設定を妄想して楽しんでいます。
純血種も雑種も、子犬も成犬も老犬も、どの子もみんな価値は同じ。そう言いながらも、正直なところ私自身、ラブを預かったとき「行き場のないかわいそうな犬」という感覚を無意識に持っていました。
しかし、ラブが3カ月前に出会ったばかりの私たちに純粋で一途な愛を向けてくれること、そして周りの人からラブをベタぼめされることで、改めて犬をスペックで価値づけることの無意味さに気付かされました。
ラブと一緒に暮らしていると、もちろん大変な面もあるけれど、それでも「犬って本当に人に寄り添って生きる、かわいい生き物なのだなあ」と感じます。
残された時間はそれほど長くはないだろうけれど、ラブが元気でいる限り、「人と犬がともに暮らすことの楽しさ」を一緒に味わっていきたいと思っています。

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