犬がこわかった飼い主をメロメロにさせた雑種犬「タッチー」 拾い食い克服への道
個性豊かな雑種犬の魅力を紹介する連載企画。第25回は、工務店の作業場で生まれた「タッチー」。拾い食い常習犯で、今までにさまざまな事件を巻き起こしてきました。犬と暮らすのが初めての飼い主さんと一緒に拾い食い解消に取り組んできて、最近ようやく克服しつつあるといいます。
【基礎データ】ミッキーマウスのような柄の中型雑種犬
- DATA
- 《名前》タッチー
《年齢/性別》8歳/オス - 《役割》着ぐるみのモデル犬をして飼い主を喜ばせる!
《サイズ》体高45cm・体⻑42cm・体重12kg
《チャームポイント》大きな耳と、富士額
《特性》
人慣れ度★★☆
犬好き度★☆☆
食いしん坊度★★★
運動量★★☆
トレーニングしやすさ★★☆
ケアのしやすさ★★☆
白い靴下の小さな子犬
茨城県内の工務店の作業場で、4匹のきょうだいとともに生まれた「タッチー」。その会社に勤める蛭田さんは、犬を迎えたいという友人のために子犬たちの写真を撮りに行って、タッチーたちに初対面しました。
「実は私、小さいころ野良犬にスカートを引っ張られたことがあって、犬がこわくて。だから、犬を迎えるつもりはまったくなかったんです。でも、子犬たちの写真を撮っていたら、かわいいなと思ってしまって……」
と、現在のタッチーの飼い主である蛭田さんは話します。
子犬の写真を見た蛭田さんの子ども3人のうち、小学校高学年の2人も「かわいい! 自分たちが面倒を見るから飼いたい」と言い、子犬を迎えることを決意。犬と暮らしたことがなかったため、飼育書を見ながらケージやリードなど、子犬との暮らしに必要なものを準備しました。
最初に迎えたいと思った茶色の女の子はもう別の飼い主に決まっていたため、白い靴下を履いているような柄の、体の小さな男の子を迎えることに。それが、生後2カ月半ほどのタッチーでした。
流血騒動にまでなる拾い食い問題
迎えて最初の2日間ほどは、タッチーはビクビクしてケージから出てこずごはんも食べませんでしたが、時間とともに蛭田さんたちとの生活に慣れていきました。そんななかで、何より頭を悩まされ続けたのが、「拾い食い」です。
「タッチーは食に対する執着がすごくて、とにかく何でもすぐ口に入れてしまうんです。それでも、子犬のころはまだ体も小さかったし、そこまで困ってはいませんでした。ところが1歳近くなったころ、拾い食いをしたときに口から出させようとすると、うなったりして怒るようになってしまって……。体も大きくなっていたし、私がもともと犬が苦手だったのもあって、本気では噛まないとわかっていてもこわいと思うようになってしまったんです。タッチ―が1歳前後のころは、完全に育犬ノイローゼ状態でした」
生後5カ月のころからトレーナーさんについてしつけの基礎を学んでいたものの、拾い食いに関しては解決に至りませんでした。ホウ酸やタマネギの入ったゴキブリ団子を食べてしまったり、高いところにかけてあったゴミ袋をジャンプして取って台所をゴミだらけにしたり、桃の香りがするボディーソープの袋を破いてぶちまけたり……。
拾い食いは飼い主が困るだけでなく、愛犬の命にかかわることもよくあります。
「小さいボールを飲み込みそうになったときは、本当に焦りました。そういうときは、タッチーの口に手を突っ込んで、噛まれながら流血しながら必死に取り出していました」
個性を受け入れたら吹っ切れた
拾い食いに加えて、3歳ごろからタッチーが急に他の犬が苦手になり、相性の悪い犬が近づくと怒るようになってしまったことも、悩の種だったと蛭田さん。「犬の友達を作ってあげなきゃ。ドッグランに連れて行って遊ばせてあげなきゃ」と思うものの、他の犬とトラブルになって落ち込んだりすることもありました。
「それが、タッチーが6歳のころ、『悩んでばかりではつまらない。タッチーと一緒に楽しいことをしよう!』と思ったんです。そしたら急に吹っ切れました。犬の友達がいなくてもタッチーは私たちがいれば寂しがっていないし、他の犬ともある程度距離を取れれば大丈夫で、仲良くできる子もいます。犬にもそれぞれ個性があるので、タッチーに合った暮らし方ができればそれでいいと思ったんです」
タッチーはかぶりものや洋服をまったく嫌がらず何でも身に着けてくれるので、今はよく一緒に散歩をする犬友達と、愛犬に着ぐるみを着せて写真を撮り、それをインスタグラムに投稿したりして楽しんでいます。
拾い食いに関しては、今も完全に解決はしていないそう。家の中では、タッチーが口にしそうなものは届かないところに置いているつもりでも、思わぬものを狙われてしまうこともあります。
「ただ、私もタッチーとの暮らしの中で学習してきて、ここ1年ぐらいはかなり対応できるようになってきたんです。散歩中ににおい嗅ぎをしていて拾い食いしそうだなと思ったらリードを引っ張ったり、口に入れてしまったら、うなられてもひるまず下あごを持って出させたりすることもうまくできるようになってきました」
タッチーを迎えるまで犬が苦手だった蛭田さんは、今や2泊3日のトレーニングに預けただけで泣いてしまうほど、タッチーにぞっこん。仕事のお昼休みも、毎日タッチーに会うために一時帰宅しています。
「タッチーは私たちを毎日笑顔にしてくれる存在。タッチーがいなくなることなんて想像もできません」
(次回は2025年1月24日公開予定です)
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