【雑種犬図鑑.3】モジャ毛のおとぼけ顔と、控えめな性格がキュートな「ビスコッティ」
個性豊かな雑種犬の魅力を犬種図鑑のパロディで紹介する連載企画。第3回は、モジャモジャの白い毛と困り顔がかわいい「ビスコッティ」。空気を読む控えめな性格ながら、他の犬との遊びやアウトドアなど好きなことをきっかけに目下成長中です。
【基礎データ】和犬ベースにハウンド系が混じった中型の雑種犬
- DATA
- 《名前》ビスコッティ Biscotti
《年齢/性別》推定4歳・オス
《役割》存在が癒やし犬
《サイズ》体高55cm・体⻑62cm・体重18kg
《特性》
癒やし度・・・・・★★★
恥ずかしがりや度・★★★
社会性・・・・・・★★☆
【チャームポイント】テリア系の犬種と間違われることも多い、独特のビジュアル
アイリッシュ・ウルフハウンドのようなスレンダーな体形に、穏やかで優しい顔をしたビスコッティ。特に女性から「かわいいお顔ですね」と言われたり、子どもが「かわいい〜」と近づいてきたりすることが多いそうです。
洋犬を思わせる見た目ですが、DNA検査をしてみたところ、70%が柴犬や秋田犬などの和犬系、ビーグルやグレーハウンドなどのハウンド系が25%という意外な結果でした。
哀愁漂うオジサン顔
ヒゲっぽい毛のせいか、おとぼけ顔のオジサン風に見えるビスコッティ。
「出会ったときは、成犬ながら幼いというか純粋そうな顔だったんですが、この1年弱でなぜかどんどんオジサン顔になってきました(笑)」と、飼い主の大沼由希子さん。
ユニークなモジャモジャの被毛。アホ毛多め
「テリアですか?」とよく聞かれるという、モジャ毛。被毛はダブルコートで、夏は白くて細いふわふわの毛が少なくなり、冬より色が濃く見えるそう。
ベルベットの手触りの耳
迎えたときからいちばん大きく変わったのは、耳。茶色っぽい短毛だけだったのが、栄養状態が改善したからか、今では長い飾り毛が生えそろっています。
A4サイズに収まるコンパクトなオスワリ
体は大きめ、脚も長めなのに、4本の脚をきゅっと近づけてコンパクトにオスワリします。まるで三つ指をついているかのような上品さ。
洋風の見た目のビスコッティですが、性格はどちらかというと日本人っぽいようで……。
【性格】「調和」を重んじる日本人気質
自分から動かない、おとなしく控えめな性格。他の犬と遊ぶのは好きですが、打ち解けるのに少し時間が必要なよう。周囲をじっと観察していて、他の犬が誘ってくれれば一緒に遊びます。
「他の犬のようすを観察してうまく接するので、預かりボランティアさんのところにいたときは『調和』を意味する『シンフォニー』という名前が付けられていました」と大沼さん。
小型犬好き! 自分より大きな犬はちょっと苦手
ただし、遊ぶのは自分より小さい小型犬限定。小型犬相手ならワンプロをしてはしゃぐこともあります。自分と同じかそれ以上のサイズの中・大型犬は、少し怖いようです。
身軽で忍び足上手
足音を立てずひたひたと移動するようすは、忍者のよう。ビスコッティを保護してくれていた預かりボランティアさんからは、「60cmぐらいの高さの柵は飛び越えてしまうし、足音をさせず気がつくと柵を越えてしまっているから、気をつけて」と言われたそう。
上品な雰囲気のビスコッティですが、実はもともと半年以上放浪していた野良犬でした。
【生い立ち】千葉の野良犬から世田谷の家庭犬へ
千葉県で放浪生活をしていたところを動物愛護センターに捕獲され、「おとなしいから一般家庭になじめるのでは」と保護団体に引き出されたビスコッティ。
飼い主募集サイトをいろいろ見ていた大沼さんは、写真でビスコッティの目を見たとき、ビビッときたと言います。
「今までにいろんな保護犬と接してきた中で、好きな目の印象があって、そういう子とはだいたい相性がよかったんです。ビスコッティはまさにそんな目で、この子とはうまくやっていけるんじゃないかって」
預かりボランティアさんのブログにも飼い主募集の告知が掲載されていたビスコッティは、応募数も多く、お見合いをした人は他にも何組かいたそう。その中で、最終的に大沼さん夫婦が「波長、テンションが合っているから」と譲渡先に選ばれました。
ドッグトレーナーをしている大沼さんは、トレーナーという職業ではなく、ビスコッティとの相性を見てくれたことが嬉しかったと言います。
トライアル期間としてビスコッティを家に迎えてからは、ビスコッティを酒の肴に、「かわいい、かわいい」と言いながら夫婦で飲んでいたそう。
「1カ月間のトライアルの後に無事正式譲渡が決まったときは、すごく嬉しかったですね!正式譲渡になると、預かりボランティアさんのブログに家族写真が掲載されるんですが、トライアル中からそれを撮る練習をしていました。夫婦とビスコッティで円陣を組んで、2人の手の上にビスコッティが前脚をのせるっていう(笑)」
こうして新しい家族としての生活が始まりましたが、最初から順調にはいかなかったようです。
【暮らし】成犬になってもトレーニングを継続することの大切さを教わった
動物愛護センターや預かりボランティアさんの家にいたころは、お散歩ボランティアの方々に喜んで散歩に連れていってもらっていたビスコッティでしたが、2人と1匹の生活が始まってすぐに、その経験がどんどんしぼんでいくのを感じたと大沼さん。
そこで大沼さんが考えたのは、一緒に40分歩いて仕事先に連れていくこと。
「私はドッグトレーナーとして、保護犬のいるカフェ『犬猫食堂 紫陽花』で週1〜2回ほどトレーニングを担当しているんですが、そこまで歩いていくことをトレーニングにしようと思って。紫陽花に行けば他の犬とも遊べるし、他のトレーナーさんやお客様からおやつももらえるので、それがごほうびになります。特に車も人も多い国道を越えるのが大変で、何度も練習して、たどり着けるようになるまでに1カ月かかりました」
推定3歳で保護され、預かりボランティアさん宅で一度は社会化が進んできていたものの、いろんな人と接する機会が減ってまた逆戻りしそうになっていたビスコッティ。このトレーニングを始めたことで、また人や車、自転車など外の世界に慣れてきたそうです。
「さまざまな事情で保護された犬や、成犬であっても、すごいのびしろを持っている。その子にあったトレーニングと正しい接し方でコミュニケーションを続ければ、必ず成長します。ただ、その成長はずっと右肩上がりではなくて、上がったと思ったらまた少し下がって、また上がるというように波があることに気づきました」
また、大沼さんの先代犬は他の犬が苦手だったのに対して、他の犬と遊ぶことが好きなビスコッティが来たおかげで、散歩仲間や犬友達も増えました。犬についての情報交換をしたり、ノーズワークのレッスンを受け始めたり、好きではなかったキャンプを始めたりと、大沼さんの世界も広がりつつあります。
「ビスコッティは自然が好きなので、キャンプ好きの夫と一緒に、去年の秋にデイキャンプから始めてみました。ただ、慣れない場所だったのでマットの上から動かず、まだ楽しんではいなかったようです(笑)。今後は他の犬連れの人たちとキャンプしたり、ドッグランを借り切って遊んだりしてみたいですね」
さらに、川や滝など自然の中を散策すると楽しそうにしているので、今後は山にも行ってみたいとのこと。そのためには、細い山道で他の人とすれ違う練習など、まだまだ一緒に挑戦していく課題がありそうです。
「あきらめず、無理をさせず、犬の目線に立って継続して練習することが大切なんだと、ビスコッティから学びました」と話す大沼さん。夫婦と1匹の、今後の成長も楽しみです。
(次回は3月24日公開予定です)
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