国産は品質が高いという迷信 生きたまま熱湯に入れられ、あげく捨てられる鶏たち
国際獣疫事務局(OIE)はアニマルウェルフェアの基準を作っているが、その中に、強く禁止をしている事項がある。それは、生きたままの鶏を熱湯処理タンクに入れないことだ。どういうことかというと、鶏の屠畜(とちく)をする際、首を切ることに失敗して失血死させられず、次の工程である62度の熱湯に生きたまま入れてゆで殺してしまうという悲惨な事故が度々起きており、OIEはこれをあらゆる努力をして防げと言っているのだ。
しかし、実際には、この事故は日本ではしょっちゅう起きるものだ。
日本では、実に年間55万8181羽の鶏が、生きたまま熱湯に入れられ、熱傷で皮膚が真っ赤になり、もがき苦しんで死亡した(2021年)。皮膚が真っ赤になってしまうため、その鶏の死体は廃棄される。
著しく低い日本の精度
アニマルウェルフェアが進んだ国ではこの事故の発生はゼロに近い。英国で発生した場合は、不必要な苦痛を与えたとし、食鳥処理場(鶏の屠畜場)の経営者は有罪判決を受けている。このときの報道によれば、鶏たちは2分間わたり熱湯の中で苦しんで死亡したという調査結果が出ているという。
米国でも同様の事故は発生しているが、件数を大幅に減少させてきた。今では、事故発生の割合は0.00093%だ。日本はその72倍も失敗していて、もはや比較にならない精度の差がある。
国産は品質が高いなんて言う迷信は、いますぐ捨てたほうがいい。
品質の差の理由はなんであるか
米国は、電気でスタニングしてから首を切る方法からガスで意識を失わせてから逆さ吊りにして首を切る空気制御スタニングシステムへの切り替えを食鳥処理場が進めていることと、政府が食鳥処理場での人道的な取り扱いに関するレビューを実施し始めたことによって、事故発生の割合を10年前から10分の1に減少させた。
一方、日本の食鳥処理場の多くは、スタニングという電気ショックやガスで意識を失わせることなく、首、すなわち頸動脈(けいどうみゃく)を切るところが多く残っている。この方法は多くの国で違法で、OIEでも想定していない方法だ。意識を失わせていないため、鶏はもがいてバタつき、首を切るのに失敗する確率が高くなるのだ。だからこそ、日本では生きたままゆで殺す割合が高い。
さらに意識も低い。このような鶏への残酷な扱いは、経営者がアニマルウェルフェアを正しく認識して、従業員への教育を行い、課題を共有することで、一定数改善ができる。しかし、それすらもできていないのだ。
どのような苦しみなのか
2021年度、熱湯でゆで殺された鶏55万8181羽はどのような苦しみを味わったのだろう。
鶏は逆さ吊りに懸鳥され、そのままオートキラーと呼ばれる機械式のナイフで首を切られるか、人の手によってナイフで首を切られる。
意識があるためバタバタと羽を動かし、首を必死でもたげたりしてしまうと、ナイフの刃から外れ、浅く首を切られる、または首を切られないことになる。ゆで殺された死体は、多くが浅く首を切られていた。放血時間は2~3分だが、その間逆さ吊りのまま意識を保ち、首を少し切られた痛みに耐えることになる。
その後、拘束状態のまま約62度の熱湯に入れられ、熱さと痛みの中で、熱傷または溺れて死亡する。熱湯に入れられた際、拘束されている足をバタバタと動かす様子が観察されている。また、米国タイソン・フーズの食鳥処理場で9年間働いた元従業員は「鶏は叫び、蹴り、その眼球が頭から飛び出す」と語っている。
あまりに悲惨なため、写真を掲載することができないが、頭から足まですべて真っ赤にやけどした状態になるのだ。自身が同じ目にあったら、または自分と一緒に暮らすペットが同じ目にあったなら、改善がなされない現在の社会を許せるだろうか。
世界で進むケージフリーなどのアニマルウェルフェアの話とは異なり、動物を拷問しないというレベルの話だ。
日本もあらゆる努力を今すぐに
改善策はすでにわかっている。以下の3つを確実に行うことだ。
- 現場の意識改革を行う
- 首を切った後に失敗していないか確認する専門の監視員をつける
- ガスで気絶させる空気制御スタニングシステムを導入する
OIEはこう規定している。
「血管切開後は、少なくとも30秒間、又はいかなる場合であっても全脳幹反射が停止するまで、動物に対し熱湯処理又は加工処理を行わないこと。」「意識がある又は生きた鳥が、熱湯処理タンクに入ることがないよう、あらゆる努力がなされること。」
あらゆる努力を日本は今すぐに講じなくてはならない。
(次回は4月10日公開予定です)
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