あなたが進学する学校に解剖実習がありますか? JAVAが解剖実習に反対する理由

多くのカエルやラットが解剖実習の犠牲になってきた

 今年も受験シーズンが到来。進学を希望する学校の授業内容が気になっている人は少なくないのではないでしょうか。

 JAVAは、生徒・学生の方たちからの「授業で動物の解剖をやらされてつらかった」「今度、解剖実習があるけれどやりたくない」「学校に廃止を働きかけてほしい」といった多くの相談を受けてきました。他にも「入学説明書に動物を殺す実習があるとの説明がなかった。あるなら入学しなかった」といった声も届いています。

 動物愛護意識の高まりもあって解剖実習を行う学校は減ってきていると感じますが、それでも今なお、生きたカエルやラット、魚やイカの死体、ブタの眼球や心臓などの解剖をやらせているところがあります。中には子ブタの死体を解剖させている学校もあるのです

 JAVAがどういった理由で解剖実習に反対し、学校に廃止を求めているか、今回は生きた動物の解剖に絞ってお伝えします。

多くの生徒・学生が解剖体験で傷つき、苦しんでいる

 現在、学校に対して解剖実習の実施は義務付けられていませんが、禁止もされていないことから、学校や担当教師の考え一つで実施できてしまうのが実情です。

「かわいそう」「気持ち悪い」などの理由から解剖実習を嫌がる生徒・学生は多数いますが、やりたくないと思っても、「成績に影響したら困る」「先生に嫌われたら学校に行けなくなる」といった不安から、解剖実習が嫌でも言い出せない場合がほとんどです。嫌な気持ちを押し殺して参加し、深く傷ついているのです。

解剖は生徒・学生の精神に悪影響を与える

 時として、生き物の解剖を体験させる目的に命の大切さを知ってもらうことを挙げる教育者がいます。その論理だと殺人などの凶悪犯罪をおこした者たちは皆、命の尊さを知った心優しき人物ということになってしまいます。生き物を切り刻んで殺して命の大切さを知ることができるなんて、そんな馬鹿げた話はありません。

 動物虐待と青少年犯罪の深い関連性が指摘され、また、教育の名の下で生き物を殺したり、その死体を粗末に扱ったりすることが青少年の精神面にいかに大きなダメージと悪影響を与えるかが明らかになってきています。例えば、「Journal of Contemporary Ethnography」には、「解剖を行わせることが、生徒たちに動物や自然に対して何も感じない冷淡な感覚を育ててしまう危険性がある。解剖のショックから、科学の道に進もうという意欲をそぐことにもなりかねない」という論文が掲載されています。

動物実験のない教育が広まってきている

 ドイツ、イタリア、ベルギー、デンマーク、フランス、イギリス、オランダ、スイスなどでは、初等中等教育における生体解剖を禁止するなどの規制を設けています。

 そして、従来動物実験が必要不可欠と考えられていた大学の獣医学部や医学部でさえも、多くの学生たちが「動物を殺す非人道的な教育を拒否する権利」を主張し始めました。その結果、動物実験を廃止して、代替法を用いる学校が増えてきたのです。

 英国では国内にある8校すべての獣医学校において動物を犠牲にする授業がなく、米国でも代替法を選択して卒業できる獣医学校が多数あります。また、米国とカナダにある211の医学校すべてにおいて、生きた動物を用いる授業がなくなりました。

解剖実習は動物の命を奪うだけでなく、生徒や学生の心を傷つけるという問題もある

 一方、日本でも、JAVAではこれまでいくつもの学校に対して、解剖の廃止を求めてきたところ、それらの学校はJAVAが指摘した問題点を理解し、廃止しています。

 公立大学の医学部に関しては、JAVAが2019年1月1日~2020年8月31日までの期間における解剖実習に関する行政文書開示請求を行った際、名古屋市立大学と大阪市立大学は、同期間内に動物の生体解剖実習はカリキュラムにないと回答してきました。また、奈良県立医科大学はJAVAの指摘を受けて、医学生のカリキュラムで行っていたすべての動物の解剖実習を廃止しました。

知識を身に付けさせるなら代替法で行うべきである

 動物の体の仕組みや解剖学などを学ぶ方法には、動物を用いる以外にも、コンピューターシミュレーション、動画、精巧な3Dの模型など様々あります。そのような代替法を使用すれば、解剖の過程を何回でも繰り返すことができ、また生徒・学生一人一人が自分のペースで行うことができるなど、多くのメリットがあります。

 生き物を用いて解剖を行った生徒・学生と代替法で学んだ生徒・学生では、その知識に差はない、もしくは、代替法で学んだ生徒・学生の方が優秀であったことが数多くの研究で証明され、「The American Biology Teacher」や「Advances in Physiology Education」「Journal of Biological Education」などに論文が発表されています。

 こういった動物を用いない方法での学習は、生き物に対して「命を尊び大切にしなければならない存在」ということも生徒・学生たちに学ばせることができます。つまり、知識を身に付けさせるとともに、生命を尊重する態度も養わせたいならば、代替法を用いるべきなのです。

 教育において、「観察する」「仕組みを調べる」ことの大切さを否定するつもりはありませんが、それは、痛みを伴わない方法であるのはもちろんのこと、命の尊厳を踏みにじることのない方法でのみ許される行為です。動物たちを人間の好奇心を満たすための道具として、まるで機械の構造でも調べるかのように切り刻み、内臓を見るといった行いは、残酷極まりなく行うべきではありません。

 さらに詳しくは「JAVAが動物の解剖実習に反対する理由」をご覧ください。

(次回は3月13日公開予定です)
【前の回】毛皮のために苦しむ動物をなくすため 実態を知り、買わないという選択を

JAVA
NPO法人動物実験の廃止を求める会(JAVA)。1986年設立。動物実験の廃止を求める活動を中心に動物の権利擁護を訴え、世界各国の動物保護団体と連携しながら活動している市民団体。
この連載について
from 動物愛護団体
提携した動物愛護団体(JAVA、PEACE、日本動物福祉協会、ALIVE)からの寄稿を紹介する連載です。
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