柴犬ともっと仲良くなるには「飼い主が犬になる」 気持ちがわかれば共感を得られる
柴犬ともっと仲良くなる方法は、犬とポジティブな感情を共有すること。楽しく遊ぶだけでなく、怖いものを一緒に克服することでも犬の共感を得られます。人間が趣味の合う人と親しくなりやすいように、柴犬ともコミュニケーションがとりやすくなります。
さらに柴犬の行動をまねすることも有効だとか。「家庭や社会では犬に人間のように振る舞うことを知らずしらずのうちに強要しがち。飼い主さんが犬のように振る舞うことも試してみてください」と獣医師の山下國廣先生。「犬になる」コツを紹介しましょう。
犬は「人間になる」ことを押しつけられている
家庭で飼われている動物の中で「信頼関係を結ぼう」「しつけをしよう」と言われるのは犬だけではないでしょうか? たとえば、猫やウサギに困った行動があっても、「信頼関係が崩れている」「わがままで言うことを聞かない」という発想にはならないものです。動物ならではの習性や行動があることを前提として飼われるからでしょう。
一方、犬の場合、人間とはまったく別種の動物という大前提がなぜか吹っ飛んでしまい、生まれながら人間に従う存在、もしくは子どものような存在として扱われがち。極論を言えば、犬は犬らしく生きるよりも、人間らしく振る舞うことが正常とされるわけです。
犬は猫やウサギよりも飼い主さんとの関係が強く、散歩や旅行などで社会と接点をもつ動物なので、家庭はもちろん人間社会のルールに合わせた行動を教えることは大切です。ただし、人間と同じ生活ができて当たり前と思わず、犬に我慢させていると知っておいてください。
柴犬の表情や全身から気持ちを読み取る
柴犬と仲良くなるには、犬らしく振る舞える状況をつくり、飼い主さんも犬のように振る舞って一緒に楽しみを共有すること。飼い主さんが犬になってみることなのです。私たち人間も自分の気持ちをわかってくれる相手とは仲良くなりたいと思いますよね。柴犬が親近感や信頼感を持ってくれるようになり、よりよい関係づくりに役立ちます。
柴犬は感情や愛情の表現が控えめですが、犬の気持ちを想像していれば、楽しんでいる、リラックスしている、緊張して怖がっている、遊びたくてうずうずしている、面倒で何もやりたくない……といったことがわかってくるはずです。そのときの表情や全身を観察しておけば、ちょっとした表現でも気持ちがわかるようになるはずです。
柴犬の楽しみや達成感を飼い主も共有する
柴犬と仲良くなるポイントは、犬のポジティブな感情を飼い主さんが共有すること。ここでは感情を共有するシチュエーションの例を紹介します。
(1)犬が興味を持つものに飼い主も興味を持つ
柴犬が何かに興味を持ったとき、不都合がある場合(拾い食いなど)は叱り、不都合ではない場合(枝や松ぼっくりなど)は放っておくことが多いのではないかと思います。ところがこれでは犬が「飼い主は自分の楽しみを邪魔する存在」と思ってしまいます。
犬が興味を持つ不都合ではないものを頭の中にリストアップしておき、犬が見つけたら「すごい!」「やったね!」と声をかけてください。犬と一緒に探して飼い主さんが先に見つけたら「いいでしょ?」と自慢したり、「ここにあるよ!」と指をさして教えたりしましょう。
柴犬は飼い主さんの言葉からニュアンスを感じ取るのが得意で、このような話し言葉での交流もできる犬種です。人間の友人と同じように、楽しい時間を共有するほど仲間や家族と思ってくれるようになります。
(2)犬が怖がるものを一緒に怖がってから克服する
慎重な柴犬は苦手なものや怖がるものが案外多いはずです。たとえば自宅の掃除機や、散歩中に見かけるバイクのカバーなどを警戒する柴犬の話をよく聞きます。これらを飼い主さんが怖がるふりをしてから、一緒に克服することも犬の共感を得るポイント。
犬が怖がるものを飼い主さんも怖がっているふりをし、おそるおそる近づいてみたり触ったりして、安全を確かめる演技をしてください。犬がにおいを嗅いでチェックしたら、「な~んだ、大丈夫だったね」声をかけ、恐怖の対象を克服する過程を共有しましょう。
(3)犬が得意げになっているときに本心からほめる
柴犬がジャンプして段差を超えたり高いところによじ登ったりして得意顔で振り向いたら、本心から「すごい!」「さすが!」とほめてください。犬は心のこもっていない声かけを察します。おざなりにほめられてもうれしくないのは、犬も同じなのです。
飼い主さんの指示に従って何かを達成したときにほめるのはもちろんですが、自主的な行動の成功をほめることは達成感を共有するために何倍も効果的です。
柴犬が楽しそうにしていることをまねする
犬と同じような行動をすることで共感を得やすくなると考えています。私たちが趣味の合う人と友達になりやすいのと同じですね。ただし、柴犬と仲良くなるためには、犬の行動を何でもまねすればいいわけではありません。ポジティブな行動に限ってまねしましょう。
(1)犬とにおい嗅ぎや穴掘りにチャレンジ
柴犬はにおいを嗅いだり穴を掘ったりするのが好きですよね。犬が楽しそうにしていることを飼い主さんもまねしてみてください。しゃがんで犬と一緒に調べてもよし、枝やスコップで一緒に穴を掘るのもよし。室内や屋外で四つんばいになったり腹ばいになったりして、犬の視線の高さで過ごしてみると、世界の見え方が変わっておもしろいと思います。
(2)勝ち負けを演出しながら犬とプロレスごっこ
若い柴犬であれば、犬同士がじゃれ合うような遊びを取り入れましょう。飼い主さんが犬のプレイバウのポーズ(相撲の立ち合いのような体勢)から犬に軽く体当たりをして、プロレスごっこを誘ってみてください。もちろん犬の誘いを受けてもOKです(人に対するマウンティングは遊びの誘いであることが多い)。
押さえ込んだり押さえ込まれたり、追いかけたり追いかけられたり、勝ったり負けたり、一方的にならない展開を演出しながら遊びましょう。ボールやおもちゃで遊ぶよりもスリリングなので犬は喜びます。
柴犬は何もしなければ1~2歳でこのようなじゃれ合いを卒業しますが、相手をしていれば10歳をすぎても楽しく遊べます。
「柴犬がなついてくれない」という誤解
柴犬の飼い主さんからよく聞くのが「うちの犬は家族にしっぽを振らない」という悩み。犬がしっぽを振る=うれしい、という誤解からこのようなお悩みを持つ人もいます。
犬がしっぽを振るときは必ずしもうれしいとは限らず、攻撃の前兆のときもあります(振る力の入れ具合が異なる)。とくにしっぽの巻き方が強い柴犬は、振り方の違いが目立ちにくいので、しっぽの動きだけでは感情の判断ができません。柴犬のトレードマークの巻き尾よりも表情や全身を見て判断しましょう。柴犬はよく見れば繊細な表現でさまざまな気持ちを伝えてくれていることがわかるはずです。
【前の回】柴犬に長文で話しかけないほうがいい理由は? 短い話し言葉がシニア対策になる
- 監修:山下國廣(やました・くにひろ)
- 獣医師、軽井沢ドッグビヘイビア主宰。科学的なアプローチと犬の立場に立った発想で人と犬のコミュニケーションをサポート。家庭犬の問題行動治療、しつけ方指導、トレーニング指導のほか、里守り犬(モンキードッグ)など野生動物対策犬の育成指導も行う。愛犬のすぐり(甲斐犬)を日本犬初の救助犬に育てて多くの現場に出動した。
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