「私の師匠でベストパートニャー」 21歳で旅立った愛猫が見せた生き様とは?
いつか来るペットとのお別れの日――。経験された飼い主さんたちはどのような心境だったのでしょうか。
2000年生まれのペルシャ猫の「にゃんちー」ちゃんは、2021年3月に21歳2カ月で虹の橋を渡りました。飼い主の中尾亜希さんに、にゃんちーちゃんの長生きの秘訣(ひけつ)と、にゃんちーちゃんの生き様についてお話を伺いしました。
長生きの秘訣は「強い意志」と「旺盛な食欲」
――愛猫ちゃんが21歳2カ月で亡くなったとのことですが、長生きの秘訣は何だったと思いますか?
にゃんちーは、「私はこういうふうにしたい」という芯の強い子でした。触られたくない、この人嫌い、おやつが食べたい、というように意思がはっきりしていたのと、おなかを壊すほど食欲旺盛でよく食べる子でした。それが長生きした理由だと思います。
亡くなったときは正直少しほっとした…
――にゃんちーちゃんは、なぜ亡くなったのでしょうか?
慢性腎臓病と甲状腺機能亢進(こうしん)症で亡くなりました。腎臓は15歳くらいから数値が悪くなりはじめ、19歳から2年間は自宅で朝晩、皮下輸液をしていました。
また、療法食治療も行っていました。食欲があるので食べ物に寄って来るのですが、食べると吐いたり下痢をしたりするので、にゃんちーが食べられるものを探すのが大変でした。最期3カ月くらいは療法食と腎臓病用のリキッドを飲ませていて、亡くなる前1カ月はほとんどリキッドだけでした。栄養点滴などはしませんでした。
――甲状腺機能亢進症になったのはいつくらいからですか?
腎不全より少し前くらいで、気が付いたのは18歳頃です。歳(とし)をとったのにキャピキャピしていて、昼間なのに瞳孔が大きいまま、食べるのに痩せていく、という症状がありました。亡くなるまで腎臓病と甲状腺機能亢進症の2つの病気の治療を並行して行っていました。
――亡くなるまでの2年間、にゃんちーちゃんは本当に頑張りましたね。
腎不全もそうとう悪化していましたが、獣医師もびっくりするほど意外に持ちこたえました。
「そんな頑張り過ぎなくていいよ」と言っていたのですが、なにせ、にゃんちーが「私は頑張る」と言うので、「あなたが頑張りたいなら私も頑張るよ」と、お互いに頑張りました。亡くなる前は増血剤や利尿剤なども使い、やれることはすべてやったと思います。寂しいし、悲しいけれど、やりきった感が満載だったのでペットロスにはなりませんでした。
また同時に、亡くなったときは正直ほっとしたんです。「これでこの子はもう苦しまなくて済むんだ」と。腎不全による尿毒症で吐き気があったり、全身にかゆみがあったり、食べたいのに食べられなかったり、見ていて苦しそうで私もつらかったんです。そんな状態なのに、亡くなる2カ月前まで、毎朝1階から階段をのぼって2階で寝ている私を起こしに来てくれていました……。
愛猫の死に向き合うとは「生き様を受け継ぐこと」
――中尾さんにとってペットの死に向き合うとは、どういうことでしょうか?
にゃんちーの強い生き様を受け継いで、私がしっかり生きていくということでしょうか。
「死ぬ」という事で、いったんは終わるけれど、私の中では生きているんです。終わったけど終わってない、永遠のもの。にゃんちーの生き様を見せてもらって、「自分は自分、頑張るときは頑張る」ということを学びました。そのまま、その生き方を私も受け継がせてもらいました。バトンタッチです。私はにゃんちーを「師匠」と呼んでいます。私の人生の師匠です。生きていたときからそう思っていたのですが、亡くなってからも師匠ですね。一生のベストパートニャーです。
――「ベストパートニャー」、いい言葉ですね。
実は、にゃんちーが亡くなるちょっと前に、自分の病気が見つかり、手術をすることになったのです。でも私が入院したら日々の輸液はどうしようか、などと思っていたら、にゃんちーが先に逝ってしまいました。気を効かせてくれたのだと思いました。「ちゃんと病気を治すんだよ」と言われた気がしました。
最期の2年間。お金も時間も気力も体力も使い、お互いにベストを尽くしたので、その後は私がちゃんと手術を受けて生きていくことを、にゃんちーが望んでくれていたのだと感じました。師匠から学んだ事を忘れずに、しっかり生きていきます。
にゃんちーちゃんから命のバトンタッチをされた中尾さん、手術を無事終え、すっかりお元気になられたそうです。取材ではとても明るくにゃんちーちゃんのことを語ってくださり、前を向いて生きている中尾さんの強い生命力を感じました。
中尾さんは、現在「ねこ」をキーワードに写真を撮り、展示会などを行っていらっしゃいます。中尾さんのご活動はこちらからご覧いただけます。HPはこちら
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