砂の感触を楽しみ、海でのお散歩を満喫した
砂の感触を楽しみ、海でのお散歩を満喫した

介護をしてきた愛犬の死 悲しくて心は痛いけれど全力で生きる素晴らしさに気づいた

 sippoに何度か登場していた愛犬のモカが、7月末にお空へお引っ越ししました。17歳と1カ月とちょっと、思いっきり生きました。約2年の介護を経て、愛犬の死にどう向き合ったか、お別れのあとに気づいたことなどお話ししようと思います。

「死」に真剣に向き合った

 毎日ごはんをガツガツ食べ、おやつやケーキに食らいついていたモカが、7月に入り突然、食欲が落ちました。落ちたというより、ごはんもお水も“体が受け付けない”という雰囲気。脱水症状があったため獣医さんに点滴をしてもらいつつ、リキッド状のごはんに変えたり、食べやすそうなヨーグルトや、はたまたおいしそうな食べ物をあげたりしていましたが、今までとはどうも様子が違う。

 さらに、夜は今まで以上に何度も起きるためほぼ寝ていない状態、日中の興奮度合いも上がっている。あきらかな変化を前に「このまま点滴を続けて、強制給餌(きゅうじ)をしていくことがモカにとっていいことなんだろうか?」と疑問を感じ、獣医さんに尋ねました。

 そこで知ったのが「平穏死」という言葉。これは、医師の石飛幸三さんの著書で解説されているのですが、人には安らかに命を閉じる力があり、食べられなくなったら無理に食べさせようとしたり延命処置をしたりせず、自然のままにすることで、苦痛を感じることなく自然死を迎えることができるのだそうです。

 モカでいうなら、点滴をやめて、食べられるときや飲めるときに欲しい分をあげて、いらないと言うなら自然のままにする……。つまり、モカを尊重するということです。ちなみに、平穏死を選ぶか延命を選ぶか、どちらかが正しいということではありません。

歩行器を使って満足げに歩いていたモカ

 まだできることがあるのに “しない”を選択するのは、とても心苦しいもの。そこには罪悪感と、「行かないで」という別れに対する恐怖がありました。でも私はモカの飼い主であり、相棒であり、17年をともに過ごした家族です。介護でできることはすべてやってきたし、この先もできることは何でもしてあげたい。けれど、私は「モカにとっていちばんラクな方法」を選びたい……。

 そうして、獣医さんに相談のうえ、「点滴をしたかったらする」という安心材料を持ちつつ、おなかにぐっと力を入れて、モカのタイミングで死を迎えさせてあげようと決めました。

気分転換に窓際へ

 4日後、「モカの最期は一緒にいてね」とお願いしていた親友のYちゃんが仕事終わりにかけつけてくれた日の晩、モカは旅立ちました。

 私たちが夕飯をすませて笑い合っていたなか、モカの息づかいが変わり、そのあとはとても自然に、ふっと火が消えるように。

 なぜか私は、最期の瞬間は泣き叫ぶようなシーンを想像していたのですが、実際はまったくそんなことなく、そこにはいつもと変わらない会話のやりとりがあって、泣いたり、笑ったり。仕事からすぐに帰宅した夫もそばにいてくれました。ずっとモカとの別れを怖がっていましたが、「この先も大丈夫」と思わせてくれる最期を迎えられました。

晩年、すっかりビーチガールになったモカ

全力で「生きる」

 さて、モカが認知症になってから、たびたび私は「モカは何のために生きているんだろう」と考えていました。私にできることはあるかな?と模索するなか、モカは一日中ぐるぐると歩きたがり、時には絶叫をし、夜も何度も起きる、この犬は一体なんなんだ?と(笑)。

 食べ物やお水を受け付けなくなってからもなお、モカの歩きたい欲は健在、介護用ハーネスを使って少しですがお散歩へも行っていました。もう体力がないであろう、おそらくぼーっとしている様子もありましたが、なんというか「やる気」みたいなものはずっとあったんです。

 おいしいごはんを食べるため? お散歩を楽しむため? 飼い主と一緒にいたいからがんばってる? あれこれと当てはめながらモカを観察して出た私の答えは、もっともっとシンプル。モカは、純粋に「生きる」ことを、力強く“している”のではないか、ということでした。

 例えば、命の期限みたいなものがあったとして、だから使い切る、命を燃やすとか、何か目的を持っているからということでもなく、ただただ「生きる」。今を全力で生きるとでも言いましょうか。そのサポートをしてあげればいいんだと気づきました。

「生きる」って、本当に素晴らしい! かっこいい! 

 これがモカと17年過ごしてきて出た答えです。

しつこく触られるのが嫌いなモカ。朝だけはなでなでOKでした

「悲しみ」とともに

 モカの旅立ちから3カ月が経ち、最近ようやく心も体も回復してきている気がします。

 眠れない夜に「モカはどこにいるの~!!」と突然泣きじゃくったこともありました。「モカがいないなら生きる意味がわからないっ!」なんてことも(生きてることが素晴らしいって気づいたばかりなのに……)。いやいや自分でもわかってるんですよ、モカがここにいないのは。でもなぜか本音が隠れてしまい、ねじれた言葉で出てくることってありませんか? 

 で、本音はこうですね。「私は寂しいんだ!寂しくて、寂しくてたまらないんだー!うぉーー!」。

 愛犬を亡くすって、もう本当に、うぉーーーーって叫びたいくらい寂しくて、悲しいんです。心が痛いんです。

 でも、ある日ふと「悲しみは悪者ではない。感情として大事なもので、そこにあっていいのかも」と思える日が訪れたんです。心がふっと軽くなりました。「いいんだ、これで」って。そこに気づいてからは、時折やってくる「悲しみちゃん」に苦しまされることがなくなり、むしろていねいに扱えるようになった気がします。

モカと夫と私。どうしてもビーチに行きたくて、夜だけどお散歩へ。モカはすぐに寝てしまったけど、これが最後のお散歩になった

心配しなくて大丈夫

 こうやって記事を書かせていただいているので、今、介護中の飼い主さんに役に立つことをお伝えしたいなぁと思うのですが。やはり、愛犬さん、愛猫さんと飼い主さんとの間にはふたりにしかわからない絆や愛がありますよね。それをいつまでも大事に、やさしく守ってあげて欲しいなと思います。

 モカを看取(みと)った今、かつて介護中にもがいていた私に言うとしたら、「心配しなくて大丈夫。全部、大丈夫だよ」。こんな言葉をかけてあげたいです。

「だいじょうぶ、だいじょうぶ」。いつも笑っていたモカ

 モカの記事を読んで編集部におたよりをくださった方や、インスタをはじめてみたという方もいらっしゃいました。インスタへのメッセージやコメントにとっても励まされました。私、涙もろいので、コメントを読んではしょっちゅう泣いていました。この場を借りて心からお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

 そして私のかわいいかわいいモカ。一緒に生きたね。ありがとね。また会おうね!いつでも遊びに来てねー!

またね~

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小見山友子
2020年4月~sippo編集部に所属。 ファッション業界に従事後、オウンドメディアの編集長をする傍ら、2014年にWEBマガジン「INUTONEKOTO」を主宰。2015年にフリーライター・編集者として独立。ペット、ファッション、旅、サーフィン関連の執筆、編集をしている。instagram @tomokokomiyama

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