遺贈とは、遺言にのっとり、法定相続人以外に財産の一部またはすべてを譲ること(getty images)
遺贈とは、遺言にのっとり、法定相続人以外に財産の一部またはすべてを譲ること(getty images)

動物のための遺贈のススメ 終活のひとつの大事な作業として正式な遺言を残そう

 ペット関連の法律に詳しい細川敦史弁護士が、飼い主の暮らしにとって身近な話題を法律の視点から解説します。今回は「動物のための遺贈」についての話です。

遺言の大切さを実感

 今年に入ってから、公正証書遺言の作成に関わった依頼者(その中には、先に自分が亡くなった場合のペットの取り扱いについて定めた遺言書もありました)が立て続けに亡くなり、預貯金・有価証券の解約や不動産の移転登記など、遺言執行者の事務をやる機会が結構あります。

 遺言書の作成支援や遺言執行者の業務をしながら、遺言の大切さをあらためて実感しましたので、今回は「動物のための遺贈」について書いていこうと思います。

財産の分配を遺言に残しておく

 一般的に、将来の相続に備えて遺言を作成しておくことの必要性については、本やセミナーなどさまざまな機会で紹介されており、ここであらためて詳しく説明するまでもないと思います。

 超高齢社会(65歳以上の高齢者の割合が人口の21%を超えた社会)や価値観が多様化する社会の中、いろいろな家族形態があると思います。お子さんがいないご夫婦、単身者、配偶者に先立たれた方、あるいはパートナーと事実婚をされている方についても、遺言書が有効に機能する場面が多くあります。特に、遺留分を主張できる相続人がいない場合は、遺言を作成しておけば思いどおりの内容が実現できます。

終活の一環として遺言を作成しておくことが勧められる(getty images)

 また、法定相続人がいない方については、遺言を作成しておかなければ、財産は国庫に帰属することになりますし、それ以前に、誰も手続をしなければ、銀行の休眠預金になってしまう可能性もあります。

 終活のひとつの大事な作業として、ご自身の財産の分配について考え、正式な遺言として残しておくことをお勧めします。

動物愛護団体への遺贈

 ちょっとタイミングを逸しましたが、9月13日は「国際遺贈寄付の日(International Legacy Giving Day)」です。国内でも、一般社団法人全国レガシーギフト協会が主催する「遺贈寄付ウイーク」と名付けたキャンペーンが展開されています。

 最近は、人の慈善団体と同様に、多くの動物愛護団体が、積極的に遺贈を受ける意向を表明しています。

 一方で、ご自身の大事な財産について、おかしな使い方をされないか、もっと言えば遺産を騙し取られないかと心配になり、踏み出せないこともあるかもしれません。

どの団体に財産を託すか

 自分ではどこの団体がよいかわからない、選べないという場合は、動物専門の寄付サイトを運営する公益社団法人「アニマル・ドネーション」にゆだねる方法もあります。アニマル・ドネーションは、支援を受けたお金を、独自の基準で審査された認定団体に分配するなどの仕組みで、代表の西平衣里さんはsippoでも連載しています。

 アニマル・ドネーションの認定団体や、人から勧められた団体であっても、ご自身の目で確かめておきたいという場合は、近所で活動しているところを探し、事前に問い合わせをして、関係者の話を聞いたり、施設を持っている場合は訪問してみたりしてもよいかもしれません。

残る財産を動物たちのために(getty images)

 また、適切な遺言を作成するには、税理士や弁護士などの専門家に相談することも大切なことです。私は、弁護士として法律の観点からのアドバイスをしますが、20年近く全国の動物愛護団体をはじめ、動物に関わっている方々との関わりがありますので、一定の情報提供をすることも可能です。

 日々忙しくしていると、先の人生のことを考えられないものですが、連休、お盆休み、年末年始など時間ができたときに、考えてみてもよいかと思います。

【前の回】酷暑が続く夏休み 小学校で飼育されるウサギについて考える

細川敦史
2001年弁護士登録(兵庫県弁護士会)。民事・家事事件全般を取り扱いながら、ペットに関する事件や動物虐待事件を手がける。動物愛護管理法に関する講演やセミナー講師も多数。動物に対する虐待をなくすためのNPO法人どうぶつ弁護団理事長、動物の法と政策研究会会長、ペット法学会会員。
この連載について
おしえて、ペットの弁護士さん
細川敦史弁護士が、ペットの飼い主のくらしにとって身近な話題を、法律の視点からひもときます。
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