小学校で飼育されるウサギは幸せか(gettyimages)
小学校で飼育されるウサギは幸せか(gettyimages)

酷暑が続く夏休み 小学校で飼育されるウサギについて考える

 ペット関連の法律に詳しい細川敦史弁護士が、飼い主の暮らしにとって身近な話題を法律の視点から解説します。今回は「学校で飼育される動物」についての話です。

小学校の動物の飼育は法律上の根拠に基づいている

 学校は夏休みになりました。暑い日が続きますが、今回は、小学校の飼育小屋にいるウサギをはじめとする動物について、法的な視点で考えてみたいと思います。

 小学校での動物の飼育ですが、実は、法律上の根拠に基づいています。

 まず、「学校教育法」において、小学校の教育課程に関する事項は、文部科学大臣が定めるとされています。

 これを受けて、文部科学大臣が「学校教育法施行規則」を定めています。この規則では、小学校の教育課程は、国語、社会、算数、理科、生活、音楽、図画工作、家庭、体育及び外国語などとするなど総論的な内容を定め、その上で、詳細については「小学校学習指導要領」によるとの定めが置かれています。

小学校学習指導要領で定められた動物飼育の意図

 そして、小学校学習指導要領の「生活」(1992年度から1、2年生に導入された教科)を見ると、「第2-(7)」の項目で、「動物を飼ったり植物を育てたりする活動を通して,それらの育つ場所,変化や成長の様子に関心をもって働きかけることができ,それらは生命をもっていることや成長していることに気付くとともに,生き物への親しみをもち,大切にしようとする。」とあり、「継続的な飼育、栽培」を行うよう配慮することとされています。

小学校学習指導要領において、継続的な飼育を行うよう配慮することとされている(gettyimages)

 小学校1、2年生のときに、動物の飼育や植物の栽培を通じて生命尊重の心を育むことは大切ですよね?と言われれば、そのとおりだと思います。同時に、動物の飼育はせずに植物の栽培だけでよいのでは、という気もします。しかしながら、学習指導要領の解説文には、飼育と栽培のどちらか一方のみを行うものではなく、両方を確実に行っていくと記載されています。つまり、植物の栽培だけでは不十分で、何らかの動物を飼うことを教育現場に求めています。

 以上、順番に細かく見てきましたが、小学校における動物の飼育は、学校教育法から順番に下りて定められた学習指導要領という法的な根拠により、継続的に、確実に、実施すべきとされているのが現状です。

非現実的とも言える理想的な環境での飼育

 なお、学習指導要領には、「動物の飼育に当たっては,管理や繁殖,施設や環境などについて配慮する必要がある。その際,専門的な知識をもった地域の専門家や獣医師などの多くの支援者と連携して,よりよい体験を与える環境を整える必要がある。休日や長期休業中の世話なども組織的に行い,児童や教師,保護者,地域の専門家などによる連携した取組が期待される。」と、動物の飼育環境を整えるために関係者と「連携」することが強調されています。

 ただ、建前としてはそれができるに越したことはないでしょうが、実際に、小学校の教育現場において、ここで指摘されているような協力体制を整備し、理想的な環境で動物を飼育できるとするのは現実的なのでしょうか。小学校の現場から見たら、無理なことを丸投げされているように感じないだろうか、と思わざるを得ません。

学校で理想的な環境で動物を飼育することは、現実には難しいと想像できる(gettyimages)

 実際、働き方改革の流れで教員の負担を減らすことや、鳥インフルエンザなどの感染症予防のため、うさぎやモルモットなどの飼育割合が減少し、一方でメダカなど魚類を飼育する学校が増えているとのデータもあるようです。

 昔から、学校で飼育されている小動物やニワトリなどが被害にあう事故が発生している中、学校飼育動物にも「動物福祉」を考える時代になってきていることも、学校現場に少なからず影響を与えているように思います。

命の大切さを学ぶ場で、動物が犠牲になってはならない

 ところで先日、朝日新聞が、学校や動物園での動物とのふれあいをテーマに、「命の大切さ、子どもたちにどう学ばせる?」というタイトルで、インターネット上のアンケートと意見募集をしていました。

 一般的に、不特定多数に募集する形式であっても、問題意識がある人の目に留まり回答されやすいことから、回答にはある程度の傾向は生じるかもしれませんが、それでも、8割前後の人がこれらの機会のふれあいについて、否定的な回答をしていました。また、自由記載のさまざまな意見について、賛成方向の意見にも理解できる部分はありつつも、個人的には、多くの反対意見がより説得的で頷けるものでした。

動物を幸せにすることと、子どもに命の大切さを学ばせることは、むしろ同じ方向性のものであるべきだろう(gettyimages)

 子どもの教育が将来の日本社会にとって重要であることは、言うまでもありません。ただそのために、動物がわかりにくいところで犠牲になってよいということはないでしょう。子どもたちに命の大切さを学ばせることと、過酷な気候条件や管理不十分により学校動物を無駄に死なせないことは、両立できることであり、むしろ同じ方向性のものといえます。

 学校現場の言いにくい声を丁寧に拾い、実体験に基づいた市民の意見も反映するならば、学校ではあえて動物を飼育しない選択もできる方向で、学習指導要領の見直しを検討すべき時代になっているように思います。 

【前の回】11人の怒れる検察審査員!? 不起訴だった猫の虐待事件に「起訴相当」の議決

細川敦史
2001年弁護士登録(兵庫県弁護士会)。民事・家事事件全般を取り扱いながら、ペットに関する事件や動物虐待事件を手がける。動物愛護管理法に関する講演やセミナー講師も多数。動物の法と政策研究会会長、ペット法学会会員。
この連載について
おしえて、ペットの弁護士さん
細川敦史弁護士が、ペットの飼い主のくらしにとって身近な話題を、法律の視点からひもときます。
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