アニドネに遺贈の相談をされる方は元気で年齢的に若い方も多い。おそらく、自分の人生を真摯に生きる方は動物への向き合い方にも真面目さや優しさがあるのであろう
アニドネに遺贈の相談をされる方は元気で年齢的に若い方も多い。おそらく、自分の人生を真摯に生きる方は動物への向き合い方にも真面目さや優しさがあるのであろう

自分の財産を未来の動物たちのために役立てる 「遺贈寄付」という選択

 公益社団法人「アニマル・ドネーション(アニドネ)」代表理事の西平衣里です。約11年前アニドネを設立した際に、いつか当たり前にしたいと思っていたのが「遺贈寄付」です。遺贈寄付とは、遺言書を作成し法律上の相続人以外に、財産の全部もしくは一部を無償で寄付すること。

 私の人生の望みは、生きている間は精一杯動物福祉のために尽くす、そして愛犬や愛猫の待つ天国に行く時には、自身の財産を未来の動物たちのために役立てたい、ということ。動物への遺贈寄付を日本の文化にしたくて「アニドネレガシーギフト」を作りました。

人生を彩ってくれた犬猫たちに感謝をしたい

 いくばくかの財産を残すとして、子どもは自活していけるし、そう育ってほしくもあるので、大した額は必要ないと思っています。私は犬猫好きが高じてアニドネを創りました。人生をとても豊かにしてくれた動物たちの未来をより良くするために、財産を有効利用したいと思っています。

遺言書の方式は主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があり、それぞれにメリット・デメリットが。アニドネでは専門家が相談に応じる

 実は、日本では2021年に全国で作成された遺言公正証書は、10万6028件(*出典:日本公証人連合会)、そして2020年の死亡数は137万2755人(*出典:厚生労働省 人口動態統計)。自筆証書遺言を加えたとしても、亡くなるときに遺言を用意している人は1割にも満たないということなります。

 また、休眠預金(最終異動日等から10年を経過した預金等)は毎年600億円以上となっています。つまり、日本では遺された財産は身内で良きように、という文化がメインであり、自身の財産を計画的に未来に残すことはまだまだ少数派の考えなのです。

1県に最低1か所は急場をしのげる保護施設が必要

 なぜ、動物への遺贈寄付が必要だと考えるか。常日頃、アニドネは動物福祉の現場の問題や課題を扱っています。現状は想いのあるボランティアの方々がなんとか動物たちの状況を良くするために必死で踏ん張っています。しかし誰かの頑張りに頼るのでなく、サスティナブルで安定した事業構造にすべきでしょう。

 日本は、地方自治体が運営する「動物愛護センター」という施設があります。主に犬や猫の保護譲渡や動物愛護の啓発事業を行っています。しかしながら、税金で運営されている業務ですからイレギュラー対応には限りがあります。ですので、ある程度の規模感のある民間の保護団体が活躍してほしいのです。

 現在、多くのNPO法人は施設を持つことは資金的に厳しく、有償スタッフも少ないのが現状です。がんばってシェルターを作ったとしても維持費に多くの資金が必要となっていきます。

 できればアクセスが良い場所で、いつでもだれでも訪問することが可能で、専門スタッフも働いており、対応も早い、というような施設を実現するには、やはり寄付が必要なのです。

遺贈を書き終えた方との語らいは楽しい!?

 アニドネレガシーギフトを通じて遺贈を検討されている方とお話する機会があります。実は遺贈寄付の執行はその方が亡くなるときのこと。アニドネレガシーギフトをスタートする前は「死」を前提に考えることなので、とてもコミュニケーションが難しいのでは、と心配をしていました。しかしこれは杞憂でした。実はとても前向きで温かい場です。

 アニドネでは、遺贈を考えている方に、なるべく具体的な寄付使途を伺うようにしています。そのために遺言確認書というドキュメントを用意し、その方に「なぜ遺贈を検討しているか、何に使ってほしいのかを聞かせていただけませんか」とお願いをします。

 例えば、大型犬がお好きな方からは、なるべく大型犬を保護している団体へ寄付をしてほしいという希望をお聞きしました。子どものころから犬猫と暮らしてきた方からは、殺処分の問題に向き合う活動を支援したいと伺っています。つまり、寄付者との語らいは、一緒に問題を解決するための作戦会議のようなものなのです。

 みなさん、使い道が決まるととても安心するらしく「これから元気に長生きします。だから遺贈金額は少なくなっちゃうかも!」と、笑いながら話をすることもあります。

遺されるペットたちのために自分の遺贈を使う

 現在は相談の数は多くはありませんが、万が一自分先に旅立ってしまったときに遺されたペットが路頭に迷わないために遺贈を使いたいという希望もお聞きしています。お互い長生きをして、同じタイミングで天国に行けるのがベストでしょう。しかし、それが叶わない場合、アニドネを相談窓口として、保護譲渡をしている保護団体と連携し、新しい飼い主さんを探す提案をしています。

実は、シニアの方が入院するから等の理由で高齢ペットが殺処分の憂き目にあうことはとても多い。飼い始める年齢もきちんと見極めるのが飼い主の責任

 保護団体さんは、常に里親になりたい方々をつながっています。私個人としては、犬も猫もペットホテルのような場所で終生暮らすのはいいカタチではないと思っています。もしうちのコが残されてしまったら、できれば私と同等、もしくは私よりも愛してくれる新しい飼い主さんのもとで暮らすことができれば、安心して旅立てると思います。

 アニドネでは、相続遺贈専門の専用WEBサイト「アニドネレガシーサイト」に詳しい情報を載せています。また、パンフレットを作成しました。もし、欲しい方がいればアニドネレガシーインフォからお問い合わせをください。

アニドネレガシーギフトの専用パンフレット。無料で差し上げています。

 最後にお知らせです。6月30日に「士業向け 遺贈オンラインセミナー」(無料)が行われます。一般社団法人JELF (日本環境法律家連盟)と、環境保全や動物保護に取り組む14の非営利団体(アニドネも参加)が合同で行います。実は、寄付者が動物や自然へ寄付をしたいと思っていても、遺言を作成する弁護士さんや司法書士さんなど士業の方々がどこに寄付をしていいかわからず遺言に書くことを止めたというケースもよくあるため、まずは理解をしてもらうためのセミナーです。内容は、士業の方でなくても十分に役立ちます。

 遺贈は人生で一度だけ、当然みなよくわかりません。しかし、いつか旅立つとき、私が生きてきた証が後世に役立つなら、遺言という最後の意思表明を残すべきだと思います。尊い動物たちのためのギフトです。

(次回は7月5日公開予定です)

【前の回】一人ひとりがペットを愛し大切にすること 老いた愛犬を前に、動物福祉について考える

西平衣里
(株)リクルートの結婚情報誌「ゼクシィ」の創刊メンバー、クリエイティブディレクターとして携わる。14年の勤務後、ヘアサロン経営を経て、アニマル・ドネーションを設立。寄付サイト運営を自身の生きた証としての社会貢献と位置づけ、日本が動物にとって真に優しい国になるよう活動中。「犬と」ワタシの生活がもっと楽しくなるセレクトショップ「INUTO」プロデユーサー。アニマル・ドネーション:http://www.animaldonation.org。INUTO:http://inuto.jp

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この連載について
犬や猫のために出来ること
動物福祉の団体を支援する寄付サイト「アニマル・ドネーション」の代表・西平衣里さんが、犬や猫の保護活動について紹介します。
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